星の残滓

~ミストラルシティ~
3on3大会が閉幕してしばらく,TEAM PLUNGERは本拠地であるミストラルシティに帰ってきていた。
パフェ屋「かざぐるま」にはチームのメンバーである,にろくとナルが集まっている。

そんな時、にろくの携帯が鳴り響く。
にろく「・・・」
ナル「・・・でないの?」
にろく「これは治安維持局からの専用電話だ。どうせ厄介な依頼だろう」
ナル「(そういえば、にろくは治安維持局の秘密諜報部と関わりがあるんだった)・・・ねぇ、どうせ暇だしさ、俺も一緒にやるから、どう?」

にろく「んー内容次第だな」

ガチャ
携帯電話「依頼です」
にろく「あんた…ピエロじゃないな…誰だ?」
携帯電話「誰だっていい。依頼内容は・・・」

○依頼内容○
「[[星の力]]」を発現したものの中に特殊なSPECに目覚めたものがいる。
発現したと思われる者のリストを送付する。
彼らについて調査せよ。

携帯電話「以上だ」
にろく「・・・いったい誰だ?ピエロ以外にも治安維持局専用回線を使えるものがいるってのか・・・」
ナル「どんな内容だった?」
にろく「リストの人物の素行調査だ。対象は・・・」
にろく「・・・」
にろく「ナル,今回も付き合ってくれ」
ナル「よしきた♪」
にろく「・・・」

~経済大国トロイダル~
にろく「まずはあいつが調査対象だ・・・」
ナル「(捜査って地味なんだな)」
にろく「何か感じるか?」
ナル「何かって・・・何を?」
にろく「挙動不審なところや何かを避けているような様子,かな」
ナル「なるほど♪ってでも,素人の俺には何もわからないなー」

にろく「こんなもんでいいだろう。ついでにこの国の国立図書館によってから次の対象の調査に移るぜ」

~黄金都市アムジャーラ~
にろく「あいつも特別何かなさそうだな。次だ」
ナル「(何がだ?)」

~大地国家アースン~
にろく「彼女も大丈夫だな」
ナル「(だから何が?)」

~ハートランドシティ~
にろく「最後はあいつだ。どうだ,何か感じるか?」
ナル「だから何が・・・む~?なんだか嫌な感じがする」
にろく「ほう,”当たりだな”」

にろく「そこのお前ちょっといいか」
セイジ「うむ,何用だ?」
にろく「お前の一番大事なカードを見せてくれないか?」
セイジ「初対面にして大胆!きにったぞ,わが最高の相棒を見せてくれよう!」

ナル「!!」
にろく「どうだ,ナル?」
ナル「このカード・・・怖い・・・まるで世界の全てを飲み込もうとしているようだ。いや,そんな単純なものじゃない。世界なんてどうでもいい,世界すらこいつの前では存在価値がないんだ!!」

セイジ「貴様・・・わが相棒を侮辱するか・・・けしからん,我とデュエルしろ!!」
にろく「いやデュエルは俺が受ける。いいだろう?」
セイジ「貴様も同罪だ」

にろく&セイジ「デュエル!!」

決闘★開始

-ターン01-
にろく「先行はもらう。ドロー」
にろく「(まずは様子見だ)モンスターをセットしてターンエンド」

-ターン02-
セイジ「我のターン。ドロー」
セイジ「初太刀より本意気でいかせてもらうぞ。我はフィールド魔法『デュエ・マリアの祝福』を発動。このカードには7つの効果がある」
セイジ「第一の効果「シールド展開」。お互いのプレイヤーはデッキから魔法罠カード(=シールド)を可能な限りセットする。さぁセットするぞ」

にろく「可能な限り・・・セットしたぜ」

セイジ「第二の効果「発動制限」。お互いのプレイヤーは,このカードの効果以外で魔法罠カードを発動・使用できず,セットできない

セイジ「では続ける。相手の場にのみモンスターが存在する場合,ドドドバスターをレベル4として特殊召喚する」
セイジ「さらにゴブリンドバーグを通常召喚し,HCエクストラソードを特殊召喚」
セイジ「我はレベル4の戦士モンスター3体でオーバーレイネットワークを構築!!」

セイジ「エクシーズ召喚!!ランク444 王魂狂戦士ブレイカイザー」
ナル「さっきのカードだ!!気をつけてにろく,あのカードは嫌な感じがするんだ!!」

セイジ「エクストラソードの効果で攻撃力は1000ポイントアップする」
ブレイカイザーATK1600→2600

セイジ「バトルだ。ブレイカイザーで攻撃!!」
にろく「伏せモンスターは「魔導書士バテル」。リバース効果で「月の魔導書図書館」を手札に加える」
セイジ「ブレイカイザーの効果発動!!」

セイジ「ブレイカイザーがバトルでモンスターを破壊したターン,ORUを全て取り除いて手札を全て捨てて発動する」
セイジ「デッキからカードをドローし除外する。モンスターカードを引いた回数分,このモンスターは追加攻撃できる。
セイジ「我のデッキには魔法カードは1枚,罠カードは5枚。魔法・罠カードは全てシールドとして展開済み。ゆえに無限の攻撃が可能だ!!」

セイジ「ドローモンスターカード!!追加攻撃!!」
にろくLP8000→8000

ナル「?ライフが減らない?」
セイジ「『デュエ・マリアの祝福』の第三の効果「ライフ消失」。お互いのライフポイントは変動しない

にろく「ならば何のために攻撃を・・・何?」
にろくの魔法罠ゾーンに伏せられたカードが破壊される。
セイジ「『デュエ・マリアの祝福』第四の効果「シールド障壁」。直接攻撃に成功した時,相手の魔法・罠を1枚破壊する。破壊されたプレイヤーはそのカードの効果を使用してもよい

にろく「伏せカードは「ゲーテの魔導書」。発動できない」
セイジ「ならば・・・ドローモンスターカード!!追加攻撃!!」

にろく「ぐ・・・」
にろくLP8000→8000

ナル「ライフが減少していないのににろくにダメージが・・・もしかして闇のデュエルの類なのか?」
にろく「そのようだな。そして」
パリーン
にろくの魔法罠ゾーンに伏せられたカードが破壊される。
にろく「破壊されたカードは「トーラの魔導書」。発動できない」

セイジ「ドローモンスターカード!!追加攻撃!!」
にろく「ぐあぁぁぁ」
にろくLP8000→8000
パリーン
にろく「破壊されたカードは「セフェルの魔導書」。発動できない」

セイジ「ドローモンスターカード!!追加攻撃!!」
にろく「ぐあぁぁぁ」
にろくLP8000→8000
パリーン
にろく「破壊されたカードは「アルマの魔導書」。発動できない」

セイジ「ドローモンスターカード!!追加攻撃!!」
にろく「ぐあぁぁぁ」
にろくLP8000→8000
パリーン
にろく「破壊されたカードは「ネクロの魔導書」。発動できない」

セイジ「これで5枚のシールドは破壊した」
セイジ「『デュエ・マリアの祝福』第五の効果「特殊勝利条件」。シールドの無い相手に直接攻撃を成功した時,プレイヤーはデュエルに勝利する
セイジ「これで終わりだ。ドローモンスターカード!!食らえ最後の追加攻撃を・・・なんだと!!」

すべてのシールドが破壊されたと思われていたにろくの場には,どこからとも無くシールドが現れていた。

にろく「お前はこういったよな?”可能な限りセットする”と。だから”可能な限りセット”したぜ,フィールド魔法を含めて”6枚”な!!」
ナル「なるほどうまい!」
セイジ「だからなんだというのだ。追加攻撃は無限に続くのだ!!」
セイジ「まずはその邪魔なシールドを破壊する!!」
にろく「破壊されたカードは「魔導書院ラメイソン」。このカードは発動できる!!」
にろく「このカードが相手によって破壊された時,墓地の魔導書の数以下のレベルを持つ魔法使いをデッキより特殊召喚する。魔導書の数は「ラメイソン」を含めて6枚。レベル6の魔法使いを特殊召喚するぜ」

にろく「「魔導冥士ラモール」を特殊召喚。このカードは墓地の魔導書の数に応じて効果が付与され,今全ての効果が開放された!!」
にろく「攻撃力が600ポイントアップし,デッキから「星降の魔導書図書館」を手札に加え,「神聖魔導王エンディミオン」を特殊召喚するぜ」
ラモールATK2000→2600

セイジ「相打ちはしない(我のシールドは強力なものばかり。返り討ちにしてくれるわ)」
セイジ「特別教えてやろう。ブレイカイザーは戦闘以外では破壊されん。ターンエンドだ」

-ターン03-
にろく「俺はラモールをリリースし,ラモールを召喚。再び効果発動!!」
にろく「攻撃力が600ポイントアップし,デッキから「太陽の魔導書図書館」を手札に加え,『神聖魔導王妃セレネ』を特殊召喚する」
にろく「エンディミオンとセレネでエクシーズ!!姿を現せ魔導法王ハイロン!!」

にろく「ハイロンの効果発動「ワールド=ブレイク」!!ORUを1つ使い,墓地の魔導書の数まで相手のカードを破壊する。その数6枚!!」
セイジ「なにぃ!!」
ナル「『デュエ・マリアの祝福』の効果で破壊されなかったから,シールドの効果は発動しないんだ。さすがだぜ,にろく!!」

セイジの伏せカードおよび『デュエ・マリアの祝福』が破壊される。

にろく「バトルだ。ハイロンでブレイカイザーに攻撃!!」
セイジLP8000→8000
ナル「ライフが変動しない・・・『デュエ・マリアの祝福』はもう無いのに・・・」

セイジ「『デュエ・マリアの祝福』第六の効果「残存」。このカードの効果は,このカードが墓地にある場合にも適用する
にろく「ならば「特殊勝利条件」によって勝たせてもらうぜ。いけラモール!!」

セイジ「無駄だ。ブレイカイザーが墓地にいる限り,お互いのプレイヤーは特殊勝利条件を満たすことはできない
にろく「何だと・・・」

にろく「『デュエ・マリアの祝福』の「残存」効果によってカードを伏せることもできない。手札調整でカードを2枚捨てターンエンド」

-ターン04-
セイジ「我のターン,ドロー」
セイジ「『デュエ・マリアの祝福』第七の効果「リミットブレイク」。除外カードが6枚以上あるならば,3枚を裏側にすることでアドバンス召喚のリリースを1体軽減できる
セイジ「ブレイカイザーの効果で6枚のカードを除外している。ゆえに我は6枚全てを裏側にし,2体のリリースを軽減し,このモンスターを召喚する」

セイジ「地に縛られし神よ。人々の魂を糧に現れよ」
セイジ「地縛神コカパクアプ!!」

カンコーン
ナル「あれは地縛神・・・どういしてあいつが持っているんだ?」
にろく「それも気になるが・・・『デュエ・マリアの祝福』の「残存」効果によって”フィールド魔法は存在”していることになっていることが厄介だ」

セイジ「地縛神でハイロンを攻撃!!」
にろくLP8000→8000
ナル「ブレイカイザーの効果で特殊勝利はできない・・・ライフも変動しない・・・あいつの狙いはまさか!!」

セイジ「コカパクアプの効果発動。破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」
にろくLP8000→8000
にろく「ぐあぁぁぁぁぁ」

ナル「あいつの狙いはデュエルに勝利することじゃない。プレイヤーの命を奪うことによって勝利を手にすることなんだ。なんてリアリストだよ・・・」

ここまでに,にろくが受けるはずだったダメージは,
ブレイカイザーの5回攻撃(2600×5=13000)に加えて,
地縛神コカパクアプによる攻撃(200+2800=3000)。

その合計値,実に16000。
通常ライフ8000の倍の数値。
それだけのダメージを受けているにろくは,もう立っていることもできないはずだ。だが・・・

にろく「俺は・・・負けられない・・・」
にろく「ほしいものがあるんだ・・・その”鍵”をやっと見つけたんだ・・・」
にろく「だから・・・絶対に・・・この壁を乗り越えて見せる!!」

-ターン05-
にろく「俺のターン,ドロー」
にろく「俺は墓地の「魔導悪魔デストロイヤー」の効果を使用」
にろく「魔導書3枚を除外して特殊召喚」

ナル「手札調整で捨てていたんだ!」

にろく「レベル6のラモールとデストロイヤーでエクシーズ。「マジマジ☆マジシャンギャル」!!」
にろく「マジシャンギャルの効果発動。ORUを1つ使い,手札を1枚除外して,お前の墓地のブレイカイザーを特殊召喚!!」
ナル「これで「特殊勝利条件」を満たせるようになった」

セイジ「だが地縛神がいる限り貴様に勝機は無いわ」

にろく「確かにそうだな。俺は墓地の「魔導悪魔デストロイヤー」の効果を再び使用し,魔導書3枚を除外して特殊召喚する」
にろく「それからお前の『デュエ・マリアの祝福』の七番目の効果,使わせてもらうぜ」
にろく「リミットブレイク!!」

にろく「リリースを1体軽減して「魔導皇士アンプール」を召喚」
にろく「こいつの効果は,手札の魔導書と場の魔法使いを除外して,相手モンスターをエンドフェイズまで「洗脳」する」
にろく「デストロイヤーを代償に,地縛神の力もらったぜ!!」

状況を確認しよう。
にろくの場には,マジシャンギャル,ブレイカイザー,アンプール,そして地縛神。
その総攻撃力はかるく8000を超える。もっとも・・・

にろく「さぁファイナルアタックだ」

シールドの無い相手に直接攻撃を成功した時,プレイヤーはデュエルに勝利する
『デュエ・マリアの祝福』の「特殊勝利条件」により,にろくの勝利!!

決闘★終了

セイジ「・・・あれ?我は何を?」
ナル「記憶無いのか・・・ってよくみたらお前.デュエリアン【戦士】じゃねーか」
セイジ「その節はどうもでござった」

ナル「にろく,どういうことだ?」
にろく「治安維持局からの依頼で.【純然たる悪意】に変わる可能性がある人物の調査をしていたんだ。今回の対象は【天帝】の力を受けず「星の力」を使用した決闘者たち」
ナル「あぁ先刻付きまとった3人は確かに見覚えがあったような」
にろく「こいつは発見が早く何とか初期段階で浄化することができた。お前のおかげだ,ナル」
ナル「ん?俺何かしたか?」
にろく「まだ気づいてないのか・・・お前のSPEC【星詠】を」

にろく「【星詠】は「星の力」の残滓,コズミックテキストを認識する力だ。コズミックスペルを発動するための力は【天帝】に回収されたが,一部の決闘者には【星詠】が残ったんだ」
にろく「おまえは特別。最初から”それ”を持っていた」
ナル「・・・正しくは”ある時期を境に”だけどな」

ナル「覚えているか?ミストラルシティで開催された3ON3大会の途中,家庭の事情ってことでチームから俺が抜けたことを」
ナル「俺が音高寺に呼び戻されたのは,ある師範代の【予見】によって近いうちに「災厄」が発生するとされたからなんだ」
ナル「我が音高一族には人より強い【星詠】が発現していて,特に俺はそれが顕著で・・・そのときの修行で俺の【星詠】は完全なるモノとなった」

にろく「【星詠】は俺にもある。俺の持つ1枚に対してだけの制限されたもの,だけどな。お前の力はその制限が無い」

にろく「【純然たる悪意】のもつ「ナイトメアナンバーズ」のコズミックテキストからは,お前が言うところの嫌な感じが詠み取れるんだろう。それはお前にしかできないことだ。初期状態を見分けるにはそれしかない」
にろく「そして同時に・・・」
にろく「お前は俺が探していた”鍵”だった」

ナル「俺が・・・”鍵”・・・?」
にろく「俺は世界に散らばった「魔導書」を集めている」
にろく「そして伝説の「世界の魔導書」を探している」

世界の魔導書
その存在は伝説とされ,実在する書物を見たものはいない。
しかしながらその”一部”とされるいくつかの魔導書が各国の図書館に保管さ
れている。
だがその真偽は明らかにされていない。
なぜなら,いずれの魔導書において,誰も詠むことができていないからだ。

にろく「魔導書の多くはコズミックテキストから派生した,現存しない古代文字で描かれているようなんだ」
にろく「俺が属していた治安維持局にも散らばった魔導書のひとつ「地縛の書」が保管されていた。これは俺には詠めなかった」
にろく「偽者の魔導書も多い。真偽を確かめ,意味を理解するにはお前の【星詠】が必要なんだ」

ナル「ほかならぬ,にろくのお願いだ。喜んで受けるよ」
にろく「感謝するよ。では早速いこうか」



~~
にろくが探している「世界の魔導書」には何が書かれているのか。
そして,発現し始めた【純然たる悪意】を見つける力を秘めていたナルのこれからは。

「星の力」が残したものは,世界を平和に導くだけではない。
新たな物語が,終わりに次して,産声を上げたのだった。
最終更新:2013年01月03日 15:38