~火の国王城内~
時は少しさかのぼり,3ON3大会in火の国が開催される運びとなった,その前夜。
コスモパトロールの一員として,雑誌編集者の一人として,カーリー渚は王城内をうろついていた。
カーリー「大会の裏話とか持って帰らないと編集長に首にされちゃうんだから~」
彼女は一般人が立ち入ることを禁じられているエリアまで足を伸ばし,少しでも記事のネタになるものを探していた。
そしてたどり着いたのは,炎王の王室の前だった。
カーリー「ここに優勝候補のひとつとされる火の国の国王がいるのね...ん?誰かの声が聞こえるんだから」
???「・・・優勝は炎下一〇八部隊で決まりですね・・・」
???「当然だ。我々がその力を示さなんで誰がするというのだ・・・」
カーリー「(っどういうこと!?確かに火の国のチームの実力は確かなはず・・・だけどここまで優勝すると断言できるのなんていったい・・・)」
かすかな疑惑は翌日の大会開催を皮切りに,確かなものへと変わっていくのだった。
~3ON3大会開催中~
ジャック「どういうことだ!?俺と戦っていたときのような気合はどこへ行ったのだ!」
カーリー「ジャック・・・私は・・・」
ゴドウィン「カーリー”わかっていますよね?”」
カーリー「」ビクッ
たとえるならそれは,ネズミが巨体を誇る像の眼前でおびえるように。
カーリーは何も答えることなく会場を後にした。
このとき,コスモパトロールはトーナメント1回戦をTEAM5D'sとまみえ,激戦の末勝利をおさめていた。
それゆえ次の試合である対炎下一〇八部隊とのデュエルには多くの人が期待と興奮を高めていただけに,その結果は信じられるものではなかったのだ。
カーリー (0) VS メルト(7200)
ゴドウィン(0) VS メルト(6050)
実況「まさかこんなことがあるのかー!?炎下一〇八部隊『渦の将』の連勝によって勝負は幕を閉じたー!!」
~3ON3大会が終わり~
実況「優勝は・・・炎下一〇八部隊だァァァァァァ!!!」
まさか・・・いや,実力を見ればそれもありだろうという結果ではあるのだが。
???「異議ありぃぃその結果まったぁ!!」
会場のざわつきを断ち切るように,とある男が声を張り上げた。
結利「ちょっと十也」
十也「いや,ここははっきりさせなきゃいけない。だっておかしいだろ?2人チームが優勝するなんて。何か裏があるに違いない!!」
カレン「まぁそう思うのも仕方ないが,忘れてないか?私達チームミストラルは炎下一〇八部隊に負けていることを。十也,きみは彼と直接戦い敗れていることを」
十也「ぐぐぐ...それでも俺は認めない。俺と戦え!!」
メルト「またお前か。この挑戦は大会とは別モノだ。我々の火の国における,挑戦の意味を知っているのか?」
火の国には一〇八からなる部隊がある。
その頂点に立つのが炎王であり,数年に一度その王位が移り変わる。
王位をかけて行われるのが「『将奪戦』である。
かつて火の国が鎖国的だったころ,国外からの決闘者はまず序列第一〇八位の『将』と戦わなければならなかった。
勝てばその『将』を受け継ぎ,負ければ二度と決闘ができないように痛めつけられ,さらにデッキを奪われる。
しかしこれまでに,火の国出身者以外で『将』を獲得したものはいない。
メルト「私は序列第三位の『将』を授かりし『渦の将』なり。少年よ,この挑戦に際し,真の覚悟があるのだな」
十也「ああ。俺が負けるなんて考えられないけどな!」
カレン「君はすでに負けているのだがな」
十也「・・・」
実況「ここからはエクストラデュエルの時間だぁ!!まずは火の国の代表『渦の将』VSミストラルシティ代表天十也の試合が始まるぞぉぉぉ!!」
メルト「『将奪戦』には二つルールがある。先攻は挑戦者からだ」
十也「ってことは俺が先攻だな。もうひとつのルールって何だ?」
メルト「デュエルのリミットを決めさせてもらう。長引かせても価値が無いからな」
メルト「お前の名前にあやかって,デッキの枚数は10枚からスタートする」
メルト「デッキから30枚を墓地に送るのだ」
十也「ってことは,お互いに回ってくるターンは5ターンずつのみか。それでもかまわない,俺は必ず勝って見せる」
十也&メルト「デュエル!!」
決闘★開始
-ターン01-
十也「俺はモンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
メルト「それがお前の覚悟か?そんな戦術じゃ・・・」
-ターン02-
メルト「勝ちは無いィィィィィ!!!」
メルト「墓地のラヴァル炎湖畔の淑女2枚を除外して,伏せカードを破壊する」
十也「くず鉄のかかしが!」
突然メルトの雰囲気が切り替わる。
メルト「・・・私は見つけたのですよ。真の名を持つカードを!!」
十也「急に何を言い出すんだ?」
ヴァルト「彼が言っているのは,トゥルースシリーズのことです」
カレン「あなたは炎下一〇八部隊の『獣の将』」
結利「・・・ねぇ。その何とかの将って呼び方どうにかならないの?名前教えてよ~名前」
ヴァルト「それはできません。我々火の民の古い教えによって,私達は真の名を隠しているのです」
結利「え~と,それには何か理由があるの?」
ヴァルト「真の名を知られたものは,呪術にかけられ最悪命を落とすといわれているのです。私達は借りの名として『将』を授かっているのです」
結利「でもさでもさ,『将』の位は108人分しかないんだよね?それ以外の人はなんて呼べばいいの?」
ヴァルト「幼名としてよく使われるのは「ボルケーノ」だな」
結利「どこかで聞いたような名前だね」
十也「トゥルースシリーズ・・・そんなカード聞いたこと無いぞ」
メルト「もうじき皆知ることになるでしょう。このカードの真の名をね」
メルト「そして私はついに集めたのです。今こそ見せましょう,端末世界で手に入れたこのトゥルースシリーズを!!」
メルト「私は”真”炎の爆発を発動する!!シンクロ召喚!!さらにダブルチューニング!!燃え滾れ,スカーレッドノヴァ!!」
メルトが示したカードを見て,
PLUNGERのナルは気づく。
ナル「あのカード・・・
コズミックテキストが刻まれている・・・なるほど,それを火の国ではトゥルースシリーズと呼ぶのか」
メルト「さらに”真”炎の爆発を発動!!シンクロ召喚!!シンクロ召喚!!アクセルシンクロ召喚!!光させ,シューティングスター!!」
ナル「2枚目の真炎の爆発・・・あれにもコズミックテキストが感じられる。一人に1枚のはずなのに・・・」
メルト「そして”真”炎の爆発を発動!!レベル2の炎樹海の妖女3体を特殊召喚」
メルト「ぐ・・・ぐわぁぁぁぁぁっぁぁぁ」
メルトの体は赤く変色し,螺旋に伸びる炎の柱が周囲を囲む。
【純然たる悪意】の発現である。
かもめ「(おかしいわ・・・私の【天帝】でInVの発現は封じ込んでいるはずなのに・・・それに様子からして彼の状態は末期。私ですら知らない端末世界とやらの力は【三天のSPEC】を超えるとでも言うの?)」
メルト【InV】「俺は3体のレベル2炎でエクシーズ」
メルト【InV】「ランク222 弐手埴輪虚フィギュラデクライ!!」
フィギュラデクライの両腕に2対のドラゴンが絡みつき,あたかももとよりあった腕のような姿となった。
メルト【InV】「バトるだぁスカーレッドグラップルで攻撃!!」
十也「伏せモンスターは荒野の女戦士。戦闘破壊されたことで効果発動。フラムナイトを特殊召喚」
十也「さらにトラップ発動自由解放。そのデカぶつの両腕をそぎ落としてやるぜ」
2対のドラゴンが消滅するや否や,フィギュラデクライは雄たけびを上げた。
メルト【InV】「フィギュラデクライの効果発動。このカードの攻撃力は相手に与えられ”なかった”ダメージの合計となる。お前の場にモンスターがいなければ,スカーレッドグラップルとシューティンググラップルで合計9800のダメージを与えることができたはずだ」*スカーレッドの攻撃力は墓地チューナー6体により3000UP
フィギュラデクライATK0→9800
メルト【InV】「フィギュラデクライで攻撃!!」
十也「フラムナイトの効果発動。相手の攻撃を無効にする」
メルト【InV】「攻撃を”なかった”ことになどさせん。フィギュラデクライの効果発動。戦闘を行う時,モンスター1体の効果を”なかった”ことにする。また,そのモンスターの破壊は”なかった”ことになり,相手が受けるダメージも”なかった”ことにする」
十也「なんだ結局バトルは”なかった”ことになったのか」
メルト【InV】「そうだな,またダメージを与えられ”なかった”」
フィギュラデクライATK9800→18300
十也「戦闘破壊されたとした場合に俺が受けるダメージ分攻撃力を上げたか」
メルト【InV】「俺はこれでターンエンドだ」
十也「伏せカードもなくエンドとは,俺もなめられたものだなぁ」
メルト【InV】「はい,なめてますよ。あなたのことなんて記憶に”なかった”ことにしたいくらいですよ」
十也「かちーん。俺のターーン」
-ターン03-
十也「俺はフラムナイトをリリース,アドバンス召喚ドドドバスター。こいつの効果で墓地のドドドバスターを特殊召喚する」
十也「そして2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。ソードブレイカーをエクシーズ!!」
十也「オーバーレイユニットを1つ取り除き,炎族を宣言。戦闘を行う炎族モンスターを破壊する」
結利「だめだっフィギュダデクタイはバトルするモンスターの効果を”なかった”ことにするんだ」
カレン「フィギュラデクライ,ね」
十也「バトルだ。ブレイカーでフィギュラデクライに攻撃!!」
メルト【InV】「無理を承知で押し通るか。ならばフィギュラデクライの効果発動。戦闘を行うモンスター1体の効果を”なかった”ことにする」
十也「ブレイクスルースキル!!このカードは墓地から除外して発動することができる。相手モンスター1体のモンスター効果をエンドフェイズまで無効化する」
メルト【InV】「ほう只者ではないとは思ったが,なかなかやるな。だがこれでどうかな?」
メルト【InV】「フィギュラデクライの効果発動。ORUを1つ使い,魔法・罠・モンスターのいずれかを宣言する。このデュエル中,宣言したカードは”なかった”ことになる」
十也「なんだと!!」
メルト【InV】「ブレイクスルースキルは”なかった”ことになった。逆順処理で,ソードブレイカーの効果は”なかった”ことになったな」
十也「だが,破壊とダメージも”なかった”ことになってるんだよな」
メルト【InV】「確かにな。だがお前は気づいていない。お前自身へのダメージは”なかった”ことにはなっていないのだよ」
はっと気づき自分の体を確かめる十也。
いつの間にか彼の体は幾線のデュエルを終えた後のようにぼろぼろになっていた。
十也「(なぜだ・・・痛みなど何も感じていないのに・・・まさか)」
メルト【InV】「ようやく気づいたか。お前の感覚の一部を”なかった”ことにした。このデュエルが終わると同時に”なかった”ことを”なかった”ことにする。そしてようやくお前の体はダメージを受けるのだ。死すらも超えるほどのダメージをな」
メルト【InV】「そしてまた,ダメージを与えられ”なかった”」
フィギュラデクライATK18300→33900
十也「(罠が封じられた今,暴君の威圧は必要なくなった。俺に残されたのはモンスターと魔法のみ・・・ここは)」
十也「俺はソードブレイカーをオーバーレイユニットとしてネットワークを再構築。戦場を駆けろガイアドラグーン」
十也「守備表示で,出す。これでエンドだ」
メルト【InV】「・・・」
-ターン04-
メルト【InV】「ぐぎぎ・・・ガイアドラグーンに攻撃」
十也「くっ戦闘破壊されるか・・・ん?」
ガイアドラグーンは変わらずそこで,十也を守るように構えている。
メルト【InV】「また,ダメージを与えられ”なかった”」
フィギュラデクライATK33900→67800
十也「なぜだ?これ以上攻撃力を上げる必要があるっていうのか・・・それとも・・・」
メルト【InV】「エンド」
-ターン05-
十也「俺はおろかな転送を発動。効果で・・・」
メルト【InV】「させん。フィギュラデクライの効果発動。ORUを1つ使い魔法を”なかった”ことにする」
十也「これでお前も真炎の爆発は使えない。といってもすでに3枚使ってるんだったな」
十也「(だが俺のミラクルシンクロフュージョンも封じられてしまった)」
十也「今の手札じゃ倒すことはできない(だが俺の予想通りなら・・・)」
十也「俺はこのままターンエンドだ」
結利「そんな十也まで伏せカード無しなんて無謀だよ!!」
メルト【InV】「ぐがぁぁぁぁぁ」
-ターン06-
メルト【InV】「ぐぎぎ・・・ガイアドラグーンに攻撃」
十也「(また,攻撃を・・・そして破壊されない)」
フィギュラデクライATK67800→135600
十也「(破壊しないんじゃない・・・破壊できないんだ)」
十也「読めたぞ!突破口を見つけた!!」
-ターン07-
十也「最後のドローきたぜ!!」
十也「俺は墓地の死者蘇生を除外して,マジックストライカーを特殊召喚。さらにソードマスターを召喚。集約せし大地の力、疾風となりて駆け抜けろシンクロ召喚大地の騎士ガイアナイト」
十也「ガイアドラグーンを攻撃表示に変更。そしてバトルだ」
十也「ガイアナイトでフィギュラデクライに攻撃!!大地の鋭槍ガイアズランス!!」
結利「だめだ!!圧倒的に攻撃力が足りない!!そもそもフィギュデルクメイの効果で戦闘は”なかった”ことにされちゃうよ」
カレン「そうか。私にもわかったわ,あのモンスターの攻略法を。それからフィギュラデクライね」
ガイアナイトの槍がフィギュラデクライの胴体を貫く。
結利「どうして!?攻撃が通るなんて!?」
カレン「フィギュラデクライの効果は『戦闘を行うモンスター1体の効果を無効にする』というもの。そこからわかるのは,強制効果ってことね」
結利「そうか。だから守備表示のガイアドラグーンを戦闘破壊できなかったんだ」
カレン「そして今,ガイアナイトとフィギュラデクライの戦闘が行われている」
結利「あっ私にもわかったよ。ガイアナイトは効果を持たないモンスター。つまり2体のバトルで効果が”なかった”ことにされるのは・・・」
十也「フィギュラデクライ・・・お前の効果は”なかった”ことになったな」
十也「よってダメージも受けてもらうぞ」
メルト【InV】LP4000→1400
十也「まだだ。ガイアドラグーンで攻撃!!天翔槍レイズ・キャリバー!!」
メルト【InV】LP1400→0
決闘★終了
~~
ヴァルト「メルト・・・君ってやつはあれほど端末世界を否定していたのに,どうして・・・」
メルト「ヴァルト・・・端末世界は君の夢だっただろ?俺は,先代の炎王に追放された君を,君の価値ある夢を”かなった”ことにしたかったんだ」
メルトの体はチリとなり,静かに風にのってどこへとも無く運ばれていく。
ヴァルト「メルト=スパイラル。君の魂が無事天に召されることを私は願っている・・・オンキリキリソワカ」
~~
結利「体のダメージは大丈夫なの?」
十也「あぁ。あいつの力でダメージすらも”なかった”ことになったようだ」
十也「あいつ【純然たる悪意】に支配されてたのか・・・通りで強いはずだよな」
結利「よくやった十也。私も鼻が高いよ!!そして私もデュエルがしたいよ」
十也「早速ミストラルシティに帰ってやるとするか」
結利「うん♪」
十也「あれ,カレンさんは?」
結利「先に帰っちゃったよ」
十也「・・・しかたないか。あの人いつも忙しそうだし」
~~
ナル「天十也・・・不思議なやつだ。ガイアナイトはあいつのフェイバリット,今風に言えばトゥルースシリーズのはず,なのに・・・」
ナル「コズミックテキストは刻まれていない。だけど・・・嫌な感じはしない・・・これからどうなるか見ものだね」
~~
???「メルト=スパイラル・・・君が遺したこのカード俺がもらっていくよ」
???「欲しかったんだ・・・これ」
最終更新:2013年01月06日 17:29