NIROKファイル

このファイルは調査員にろくによる調査結果である。

真偽のほどは保障しない。

が、すこしでも役に立てばと思いここに残す。



@Zero TELL



無機質な部屋に電話が鳴り響く。

至る所に散乱する電話機をかきわけて、うるさく鳴き続ける携帯電話を手に取る。

「おいおい、よりによってこの電話かよ」

鳴り止むことを知らない携帯を手に彼はため息をつく。

この携帯は〈治安維持局〉専用の受信機。

「やばい仕事じゃなきゃいいが」

ピ・・・

「私です」

耳を突き刺すキンキン声。

彼の嫌いなもののひとつだ。

「あんたが直接連絡してくるなんて、今度はどんなヤマだ?」

「実は最近開かれた大会に乱入した・・・

彼がキンキン声に耐えている間に、彼について話しておこう。



彼の名前は“にろく(以下26)”もちろんコードネームだ。

あらゆる情報網によってさまざまな事件を解決する治安維持局の諜報部の一人。

もっともそれは維持局向けの顔であり裏ではさまざまな悪事を働いている。

治安維持局が公には動けないような事件では彼のような人間が必要となる。

〈シグナー〉についての情報を集めたのも彼である。



「というわけで、よろしく頼みますよ」

内容は簡潔であるが声のせいで長電話だったように思える。

「わかった。早速取り掛かる。」

返事もそこそこに電話は切れてしまった。

今回は尾行調査。

調査ランク5をつける危険任務らしい。



「おっと、忘れちゃいけない」

最後に、彼だけの、彼にしか使えないデッキをかばんに詰めた。

「さて、いくか」









@First CONTACT



ターゲット視認。追跡開始。

その距離約500m。これほど遠くからの尾行ができるのは26だけだろう。

ターゲットの外見は“猫”に見えるが果たしてこいつが本当にあの事件の首謀者なのか。



あの事件とは第1回WDGPの開催中に起きた。

ディアブロの乱入、量産型アポリアの襲来。

どうやらこれらを算段したのがターゲットのあいつらしい。



このときはラヴァル軍の力をもってして難なく打ち破ったからいいものの。

被害が大きくならなかったのは〈決闘者〉の力であったといえよう。



〈治安維持局〉がどういった経緯であいつにたどりついたかはこの際どうでもいい。

俺の任務はあいつが何者かを突き詰めることだ。



ピクッ



あいつの耳が上を向く。

何か聞いている・・・尾行に気づいたか?ドキドキ



いや・・・違う。ドキドキ

あいつは俺とは逆方向に聞き耳を立てている。ドキ



26の可聴領域は約500m。

ターゲットの声しか聞こえない。



「おやおや、あいつらがきちゃったんだね」

「ぼくもじゅんびをすすめなきゃね」



26の耳に届く初めて聞くターゲットの声。

あいつはまた歩き出した。



ターゲットの追跡再開。ドキドキ

26は結構なびびりだったのだ



@Third PARTY



今俺はターゲットの少し後ろを歩いています。

彼の名前は“QB”というそうです。

「26。はやくしないとさきにだれかにけいやくされちゃうよ」

「は、はい。」

急ぎ足でQBの横に追いつく。

なんでこうなってしまったんだ・・・



・・・前日。

尾行開始から1週間。

ターゲットに大きな動きなし。

常に歩き回り眠りもしない。そう俺も寝ていない。

大丈夫。そこはプロだ。2週間寝なくても全力で活動でき・・・zzz

おっとあぶない。ねてなんかないんだからね。勘違いし

「ねぇ」

!!!!!!!!!

ターゲットが目の前に座っている。ドキ

俺に話しかけているのか。やべぇ尾行ばれたか。ドキドキ

どうしよう。なんていおう。ドキドキドキ



ドキドキの頂点でターゲットは口を動かさずにこういった。

「ねぇぼくとけいやくしてでゅえりすとになってよ」

「はい。なります。まずなにをしたらいいですか。」

瞬時に26は理解し答えた。

こいつには逆らってはいけない。

こいつは俺より数段強い。



この日から俺はQBについて回る金魚の糞一号となったのである。

どうやらQBは俺以外にも〈決闘者〉を探しているようだ。

何をするつもりなんだろうか。

今の俺には問いただす勇気すらない。

俺は金魚の糞なのだ。







@Fourth FORCE



世間は第2回WDGPで沸きあがっているころ、俺はやっぱり金魚の糞でした。

〈治安維持局〉はGP開催を渋っていたが,QBは俺が尾行していることなどから開催を了承したそうだ。

QBが大会に関与しているとは思えなかった。

こいつは〈決闘者〉集めに躍起になっている。

首謀者はこいつじゃなかったのか。

そう思い出したころ、テレビで無事に大会が終了したことを知った。



数日後。

着々とQBの〈契約決闘者〉が集まりだしていた。

かく言う俺は〈謎の衆〉の頭領を任され、何気に慕われていた。

〈謎の衆〉のやからは一癖も二癖もあるが、正直実力のほどはそれほどではなかった。

QBは他に〈マスターズ〉と銘打って決闘者を集めていた。

その中に〈チーム5D’s〉の“十六夜”がいたのには驚いた。

十六夜の素行調査をしたことがあったが、なぜQBと契約したんだろう。



戦力としてはかなりのものだろう。

チーム戦なんかあったらかなり活躍できるんだろうな、と思った矢先。



第1回TDGP開催。

しかしQBはチームでの出場を許さなかった。

「てきとうにちーむくんででてきてよ」

契約者の何人かはもともと所属していたチームから出場するみたいだ。

え?おれ?

俺は秘密工作員的なポジションだから出ないって。いやでないって・・・



26には友達がいなかった。そもそも協調性のかけらがなかった。



大会が終わるころ、QBの準備は整ったようだ。

「さてそろそろあいつらがうごきだすころかな」

なんのことかわからなかった、いや、すぐわかった。



「私の名前はグローリー。決闘者よ集まれよ!!」



@Fifth FIGHT



「こんどはみんなにたたかってもらうよ」

「ぐろーりーをたおせるのはますたーずのだれかだろうけど」

「なぞのしゅうのみんなもがんばってね」



ちょっとむかっとした。

何、俺期待されてないの?

どんな顔をしていたのかマスターズの一人が声をかけてきた。



「まぁ気にすんなって。俺たちがちょちょいと勝ってやるからさ」



完全にきれた。

QBは大会乱入の首謀者ではないようだし。

任務はこれで終了。



「おい、デュエルしろよ」

「ふん、謎の衆ごときが。俺のびりびり来るデッキで受けたたつぜ」



地下に決闘場をつくっておいてよかった。

マスターズだろうがなんだろうが、俺の決闘者のプライドを傷つけたやつはゆるさねぇ

小さいころからバカで馬鹿にされてきたけど、決闘だけは強かった。

それだけを励みにここまでやってきた。

だから負けるわけにはいかねぇ。



この決闘が終わったらだいすきなチョコパフェを食べに行くんだ、俺。



さぁ

「デュエルだ!」「デュエルだ!」















@REPORT



ターゲット:QB



対象者は、第1回WDGPの際、ディアブロ軍団を指揮し、量産型アポリアを用いて選手の妨害をしたとされていたが、そのような傾向はない。



また、危惧されていた第2回WDGPでは何の関与もなく、無事に大会は幕を閉じたことからも無関係であることが推測される。



もっとも対象者自ら複数の決闘者と接触し、チームを形成していることは気になる点である。



有名チームのメンバーをも身内に引き込むあたり、何か思惑があるように思えてならない。



栄光のグローリー”をなのる“オリジネイター”についても知っているようだった。

詳細は調査中であるが、いくつかまとめておく



  • “オリジネイター”とは、Z-ONEに〈時間を越える力〉を与えたもの。

  • 世界を「正しい方向」に導くのではなく、「常に変化させる」ことが目的。

  • 禁止制限を定めているのも彼ら・・・らしい。



以上、報告する。



治安維持局秘密調査部調査員 NIROK
最終更新:2012年01月23日 18:38