シャークが地上絵のもとに到着したとき、そこには黒マントの男が立っていた。
シャークには、それが誰かすぐに分かった。
黒マント「シャーク・・・来ると思ってたぜぇ」
シャーク「・・・話は聞いている。お前を倒せばお前を元に戻すことができるんだろう。」
シャーク「・・・ディック」
黒マントの男は、頭巾を取り、シャークの顔をにらみつけた。
その眼は黒く濁り、生前のディックとは似つかぬ顔つきとなっていた。
ディック「話は聞いている・・・だと。いったい何の話を聞いたっていうんだよ?」
ディック「俺はなぁ、サテライトの隅っこで息をしてるかしてないか、それすらもわからねぇ生活をおくってたんだぜ」
ディック「いまさらお前に聞かせる話はないね」
ディック「・・・俺が死んだときの話以外はな」
数週間前、ディックは牛尾との決闘に敗れ、命を落とした。
他に襲われた者たちは、元ダークシグナーであり、命を落とすことはなかった。
ディックは"操られたダークシグナー"であったため、牛尾による"ダークシンクロ狩り"に耐えられなかったのだろう。
しかし、今のディックは、"操られたダークシグナー"ではない。
自らの境遇と、友の裏切りに強い恨みの念を募らせて蘇った真なる"ダークシグナー"なのだ。
彼の心の奥底にある、黒い塊を取り除けるのは、Noの力を制御した、それ以上に友であるシャークだけである。
シャーク「いらっとくるぜ。お前の性根叩き直してやる」
スピードワールド発動!!
シャーク&ディック「デュエル!!」
とき同じくして、ナスカでは。
遊星「アキ!どこだ!」
遊星はアキを探してナスカの地へと赴き走りまわっていた。
赤き龍の痣に導かれるように、遊星はひたすらエンジンをならす。
と、そこに黒マントが現れる。
遊星「地縛民のひとりか?」
遊星「アキを返してもらう!」
黒マント「それはできないわ」
黒マントを脱ぎ、そこにいたのは・・・
遊星「!!アキ!!」
アキ「遊星、私はあなたと戦わなくてはならない」
遊星「なぜだ?」
アキ「あなたは知っているはず。私の忌むべき力を。そしてこの力が私の人生を大きくゆがめたことを」
アキ「シグナーとして、5Dsの一員として戦ってこれたことは感謝する」
アキ「でも、それ以上にこの力が与えられたことを、私は憎んでいるの」
アキ「どうして私にだけ特別な力が・・・どうして私には普通の生活を送ることができないの・・・」
アキ「でも・・・分かったの」
アキ「それは・・・私に与えられた・・・超えるべき障害・・・」
アキ「カブチニフソ・・・なのよ」
遊星「アキ・・・」
確かに十六夜に与えられたサイコデュエリストの力は、多くの犠牲を生んだ。
はたしてこの力は、赤き龍の痣がもたらしたものなのか。
だとしたら、なぜこのような少女にそんな危険な力を与えたのか。
この時のアキには、地縛紳によって与えられた"カブチニフソ"であると受け入れることが自然に感じられたのだ。
尤もこの時点での話だが・・・
遊星「お前の中にある痛み・苦しみ・恨み」
遊星「俺が何度でも受け止めてやる」
遊星「さぁこい!!」
遊星&アキ「デュエル!!」
なんということだろうか。
シャークが、遊星が、十也が、万丈目が・・・
かつて仲間だったものたちが、熱い友情を交し合った者たちが、今、互いの命を賭けて戦っている。
そこに生まれる思いの交差、そして、歪み。
人間の感情の高ぶりははるか宇宙に眠る暗黒物質すらも超越したエントロピーをもたらした。
QB(エントロピーだ!!でも、またたくまにきゅうしゅうされていく)
QB(あそこになにがあるんだろう)
決闘者から生まれたエントロピーが集まる場所、旧モーメント、そこには・・・
ディマク「くくく。ついにこの時が来た」
ディマク「実に長かった・・・が、まさにこの戦いの終焉をもってして」
ディマク「我が生涯にわたる"カブチニフソ"は成就されるのだ!!」
エントロピーは宙をしばらくただよい、その後地面に描かれた魔法陣に吸い込まれていく。
ディマク「ルドガーはダークシグナーをうまくまとめ、レクスはシグナーをそろえた」
ディマク「二人の兄弟の想いが強く、それによりシグナーたちはより強く惹かれあった」
ディマク「しかし、それでは足りなかったのだ」
ディマク「赤き龍と地縛紳、それだけでは足りなかったのだ」
ディマク「冥界の王を呼び出すには・・・」
QB「そうはいかないよ」
ディマク「だれだ!」
QB「こんなすがただけど、これでもけっとうしゃでね」
QB「エントロピーをかけてぼくとたたかってよ」
有無を言わさず、決闘が始まった。
ディマク&QB「デュエル!!」
暗雲立ち込めるシティでは、シャークとディックの決闘が続いていた。
ディック「俺は不死武士とドッペルウォリアーをリリース!!」
ディック「人々の魂を生贄に現れよ!!地縛紳Allcatras!!」
ディック「地縛紳ダイレクトアタァァッァァァク」
シャーク「う・・・」
シャーク
LP4000→1000
ディック「さらにお前の場にいるモンスター1体につき800ダメージ与えるぜ」
シャーク
LP1000→200
ディック「ターンエンドだ」
ディックの場に現れた地縛紳Allcatrasは、ナスカの地に描かれていた地上絵に封じられていた最後の神。
古代戦士の魂が集まり誕生し、勝利に飢えた貪欲な力を与える。
しかし、その代償は大きく、召喚以外の方法で場に出た時には能力が無効化されるのだが・・・
勝負は思いのほか早く決するのであった。
シャーク「俺のターン、ドロー」
シャーク「手札からハンマーシャーク召喚」
シャーク「効果によりビックジョーズ特殊召喚」
シャーク「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築」
シャーク「こい、ブラックレイランサー!!」
地縛紳Allcatrasは、ほかの地縛紳同様、地縛紳への攻撃を防ぐ効果を持っている。
そのため・・・
シャーク「レイランサーの効果、地縛紳の効果を無効!」
ディック「なにぃ!」
シャーク「さらに手札から水の精霊アクエリアを特殊召喚」
シャーク「魔法発動『浮上』によって、墓地のキラーラブカを特殊召喚」
シャーク「『スターチェンジャー』発動!ラブカのレベルを4に変更!」
シャーク「もともと場にいたシャクトパスを含めレベル4モンスター3体でオーバーレイ!!」
シャーク「最強最大の力を持つ深海の帝王!その牙ですべてのものをかみ砕け!」
シャーク「こい、海咬龍シャークドレイク!!」
シャーク「魔法発動『アクアジェット』!!対象はシャークドレイク」
シャーク「バトルフェイズ、シャークドレイクで攻撃!デプス・バイト!」
ディック
LP4000→3200
シャーク「シャークドレイクの効果。破壊したモンスターを深海から引きずり出し、再び攻撃!!」
地縛紳Allcatrasが墓地召喚されたため効果消滅。
ディック
LP3200→1400
シャーク「ブラックレイランサーで攻撃!ブラックスピア!」
ディック
LP1400→0
シャーク「ディック!!」
ディックのもとにかけよるも、彼の体は半分ほどが消えていた。
全身が消失するのも時間の問題である。
ダークシグナーは敗北ののち、何事もなかったかのように存命していた。
しかしながら、ディックの場合は一度ダークシグナーとして決闘していたため、地縛紳の召喚に精神が耐えられなかったのであろう。
ディック「シャーク・・・やっぱおめぇつえぇよ」
ディック「デュエルキング・・・なってくれよ・・・」
ディック「あぁそうだ・・・これやるよ」
その手には、テンテンテンポが握られていた。
ディック「ランク3使うだろ?へへ・・・弱っちいけどかんべんな」
シャーク「ディック!!だめだ!!いくな!!」
ディック「おいおい、シャークがそんな弱気になったらおかしいだろ?」
ディック「しっかりしろよ!シャーク・・・」
ディックを支えていたシャークの手から、ふっと、重さが消えた。
シャークはしばらくその場から動かなかった。
直観か、Noの力か、ディックがもう戻ってこないことを感じ取っていたのであろう。
ナスカにて。
遊星「ヴィクテムサンクチュアリ」
アキ「ありがとう、遊星!!」
シティの各所にて。
十也「いけーガイアナイト!!」
モブ「さすが十也さん!!」
万丈目「光闇!!」
モブモブモブ「サンダーッサンダーッ」
旧モーメントにて。
ディマク「アンデットワールドだと?アドバンス召喚ができねえ!」
QB「アレコレソレドレドヤァ」
ディマク「ぐっわわわぁぁぁ」
ディマク
LP4000→0
ディマク「2度目の地縛紳の敗北は精神の死を意味する」
ディマク「私には時間がない」
ディマク「完全ではない、が今しかない」
ディマク「ここに集うすべてのエントロピーよ」
ディマク「冥府の扉を開く糧となれ!!」
ディマク「地縛民に栄光あれぇーーーーーーーーーーーー」
ディマクの消滅と同時に、魔法陣が光りだした。
QB「これはちょっとまずいかも、ぼくはこれでしつれいするよ」
スタコラ
ピカー
赤き龍の痣が光だし、シグナーの面々と一部の決闘者たちは旧モーメントを見下ろす高台に移動した。
遊星「あれは・・・」
かつて冥界の王が、現世に現れた時、5Dsはレクスと決闘をしたのを覚えているだろうか。
レクスが勝利していれば、この世界は冥界の王に支配されていたのだが、事なきを得た。
しかし今回は・・・
アキ「あの人は・・・」
そこにいたのは、いるはずのないもの、いてはいけないもの、ある人にとっては傍にいてほしい人。
そう、ディマクを倒しても(誰も気づいていないが)、脅威は去っていないのだ。
真実はまだ闇の中にある。
その時一陣の旋風が吹いた。
全ては、そこに立つ人物の思惑通りに進んでいたのだ。
「私がこの世界を、すべてを、最高のものにしてさしあげましょう!!!!!」
最終更新:2012年05月04日 23:57