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732 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:43:37 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その7 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時30分 上海 全景 何事にも、最悪の時期に最悪の事態が起きてしまう瞬間がある。 そしてそれは往々にして、一方と他方において一致するものであった。 このとき、上海を包囲した上海「奪還」軍は選択を迫られていた。 彼らとしては、作戦の要点である日本軍の動きを縛る避難民の足止めと日本軍への対艦攻撃を目標としたのであるが、それはことごとく裏目に出ていた。 攻撃を要請した時間にあって、欧米艦隊が予想以上の素早さで上海に展開したことがまず間違いのもとだった。 今更だが、航空機による海上艦の識別は極めて難しい。 もともと数十年かけて使い潰す勢いで使用するためにまず大きさで種別を判断するのが難しい。 となると艦上の砲塔や艦橋の形状、煙突の本数などで識別することになるのだが、航空機上からでは天候条件や機体の状態、さらにパイロットの能力に左右されしばしば艦種が誤認されるのだ。 航空機の速度が高速化の傾向を強める中で、その誤認度は加速度的に増大していく。 今回起きたことは、その最たるものだった。 中華民国空軍の洋上識別能力は、その点でよくやったともいえるだろう。 ほとんど列強の空軍のそれと変わることはなかったのだから。 裏を返せば――お粗末極まりないともいえたが。 ――こうして、戦史に残る「上海奇襲攻撃」は成立した。 上海沖合いから悲鳴のような電文が発せられはじめたとき、上海「奪還」軍司令部は快哉を叫んだという。 作戦中止命令を受けても、絶好の機会であることから独断専行したのが誰か、今となっては不明であるがこの時点でそれは司令部の共通目標となっていた。 ドイツ式兵学により訓練を受けた彼らは、作戦目標のみを後方から与えられたらあとは現地司令部の能力によって現場の作戦展開を行うという原則をよく守った。 実際、戦果自体は良好であり、間髪を入れずに突入を命じたあたり、内戦を戦い抜いた精鋭達の嗅覚は確かであったといえよう。 問題は、その現状認識がさまざまな理由――現地偵察員が排除されたり、国共合作により動員された別組織の者だったり――で狂っていたことだった。 そして、南京で指揮をとる張学良に対して、黄埔軍官学校上がりのエリート達が隔意を抱いていたことも事態をややこしくしていた。 何より、「不甲斐ない蒋介石にかわって自分が抗日戦の指揮をとる!」と宣言して軍に命令を下した張学良が今更どうして攻撃中止を命令するのか。 敵は目の前である。 列強軍が乗り出してきたらもう遅いのだ―― 彼らの認識は部分的に正しかった。 733 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:44:10 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時30分 上海総領事館前 上海特別陸戦隊の臨時司令部となっている日本総領事館前の天幕では、相変わらず情報が錯綜していた。 「上海市長は?」 「現在わが国は侵略を受けている、の一点張りです。あれは南京政府側に色々握られてますね。」 「攻撃は既定路線か。よくやる。」 「司令。米比軍のマッカーサー元帥から、上海市街地に上陸するまで持ちこたえて欲しいとの連絡が。」 「戦力は第一派で1万だったな。ありがたい。」 「香港総督が攻撃の非難声明を出しています。共同租界の領事達も連名で。」 「そんなもので止まれるとは思えないな。これだけのことをやってしまった後だ。 止まろうとしても止まれないだろうよ。なにより兵士たちがそれを許さない。」 近年の中華民国における抗日気分の盛り上がりは、アヘン戦争以来欧米列強にやられっぱなしの状況に対する鬱憤晴らしと、歴史的な北方異民族への警戒感の合体だ。 それだけに、燃え上がるときは燎原の火のように炎が燃え上がる。 そして今、これまで対抗できない力の象徴だった艦隊が炎上した。兵士の士気は天井知らずだろう。 これを押しとどめるだけの力を持った者がいれば、とうの昔に新たな王朝を開いている。 「来ますか。」 「来るな。だが幸いにも、主力艦隊があと2時間で到着する。」 大川内伝七少将は、この2時間でどこまでやれるか、と思った。 「だが120万余の上海市民の中に軍勢が乱入されると――」 「間違いなく、シナ名物の乱暴狼藉の嵐ですな。そして人間の盾の中で軍勢は身動きがとれなくなります。」 「我々はその中で防衛戦闘を戦わねばらなぬのだ。」 大川内は、無線を背負った中村軍曹を呼んだ。 可及的速やかに、租界各所に分散した欧米系居留民を一カ所に集めなければならない。 「戦車部隊は、街道上で軍勢を防ぎつつ、装甲車にわが陸戦隊を同行させてほしい。時間との闘いだ。 敵先鋒は、数十分もしないうちに市街地に乱入してくるぞ!」 734 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:45:15 【あとがき】――ちょっと追加。
732 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:43:37 神崎島ネタSS――「第二次上海事変」その7 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時30分 上海 全景 何事にも、最悪の時期に最悪の事態が起きてしまう瞬間がある。 そしてそれは往々にして、一方と他方において一致するものであった。 このとき、上海を包囲した上海「奪還」軍は選択を迫られていた。 彼らとしては、作戦の要点である日本軍の動きを縛る避難民の足止めと日本軍への対艦攻撃を目標としたのであるが、それはことごとく裏目に出ていた。 攻撃を要請した時間にあって、欧米艦隊が予想以上の素早さで上海に展開したことがまず間違いのもとだった。 今更だが、航空機による海上艦の識別は極めて難しい。 もともと数十年かけて使い潰す勢いで使用するためにまず大きさで種別を判断するのが難しい。 となると艦上の砲塔や艦橋の形状、煙突の本数などで識別することになるのだが、航空機上からでは天候条件や機体の状態、さらにパイロットの能力に左右されしばしば艦種が誤認されるのだ。 航空機の速度が高速化の傾向を強める中で、その誤認度は加速度的に増大していく。 今回起きたことは、その最たるものだった。 中華民国空軍の洋上識別能力は、その点でよくやったともいえるだろう。 ほとんど列強の空軍のそれと変わることはなかったのだから。 裏を返せば――お粗末極まりないともいえたが。 ――こうして、戦史に残る「上海奇襲攻撃」は成立した。 上海沖合いから悲鳴のような電文が発せられはじめたとき、上海「奪還」軍司令部は快哉を叫んだという。 作戦中止命令を受けても、絶好の機会であることから独断専行したのが誰か、今となっては不明であるがこの時点でそれは司令部の共通目標となっていた。 ドイツ式兵学により訓練を受けた彼らは、作戦目標のみを後方から与えられたらあとは現地司令部の能力によって現場の作戦展開を行うという原則をよく守った。 実際、戦果自体は良好であり、間髪を入れずに突入を命じたあたり、内戦を戦い抜いた精鋭達の嗅覚は確かであったといえよう。 問題は、その現状認識がさまざまな理由――現地偵察員が排除されたり、国共合作により動員された別組織の者だったり――で狂っていたことだった。 そして、南京で指揮をとる張学良に対して、黄埔軍官学校上がりのエリート達が隔意を抱いていたことも事態をややこしくしていた。 何より、「不甲斐ない蒋介石にかわって自分が抗日戦の指揮をとる!」と宣言して軍に命令を下した張学良が今更どうして攻撃中止を命令するのか。 敵は目の前である。 列強軍が乗り出してきたらもう遅いのだ―― 彼らの認識は部分的に正しかった。 733 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:44:10 ――1937(昭和12)年7月2日 午後1時30分 上海総領事館前 上海特別陸戦隊の臨時司令部となっている日本総領事館前の天幕では、相変わらず情報が錯綜していた。 「上海市長は?」 「現在わが国は侵略を受けている、の一点張りです。あれは南京政府側に色々握られてますね。」 「攻撃は既定路線か。よくやる。」 「司令。米比軍のマッカーサー元帥から、上海市街地に上陸するまで持ちこたえて欲しいとの連絡が。」 「戦力は第一派で1万だったな。ありがたい。」 「香港総督が攻撃の非難声明を出しています。共同租界の領事達も連名で。」 「そんなもので止まれるとは思えないな。これだけのことをやってしまった後だ。 止まろうとしても止まれないだろうよ。なにより兵士たちがそれを許さない。」 近年の中華民国における抗日気分の盛り上がりは、アヘン戦争以来欧米列強にやられっぱなしの状況に対する鬱憤晴らしと、歴史的な北方異民族への警戒感の合体だ。 それだけに、燃え上がるときは燎原の火のように炎が燃え上がる。 そして今、これまで対抗できない力の象徴だった艦隊が炎上した。兵士の士気は天井知らずだろう。 これを押しとどめるだけの力を持った者がいれば、とうの昔に新たな王朝を開いている。 「来ますか。」 「来るな。だが幸いにも、主力艦隊があと2時間で到着する。」 大川内伝七少将は、この2時間でどこまでやれるか、と思った。 「だが120万余の上海市民の中に軍勢が乱入されると――」 「間違いなく、シナ名物の乱暴狼藉の嵐ですな。そして人間の盾の中で軍勢は身動きがとれなくなります。」 「我々はその中で防衛戦闘を戦わねばらなぬのだ。」 大川内は、無線を背負った中村軍曹を呼んだ。 可及的速やかに、租界各所に分散した欧米系居留民を一カ所に集めなければならない。 「戦車部隊は、街道上で軍勢を防ぎつつ、装甲車にわが陸戦隊を同行させてほしい。時間との闘いだ。 敵先鋒は、数十分もしないうちに市街地に乱入してくるぞ!」 734 :ひゅうが:2016/08/23(火) 15:45:15 【あとがき】――ちょっと追加。

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