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198: ひゅうが :2017/03/26(日) 02:28:38 戦後夢幻会ネタSS――番外編「マツシロ・ケース」その1 ――西暦1945(昭和20)年6月5日 日本帝国 帝都東京 大柄な衛兵は、後ろに続く日本人の正体をいぶかっていた。 第一生命館と呼ばれていたこの建物は、一週間前にいちはやく進駐した先遣隊により接収され、これから「太平洋方面における連合国軍最高司令部」略してGHQの本部となっている。 半日の猶予を与えられた日本企業や官庁の手で様々な書類が運び出されるドタバタを目にしている身としてはこの日本海軍の軍人が今更何をしにきたのかという冷めた感情を抱かざるを得ない。 もちろん日本降伏時には彼とて歓喜を爆発させたし、浴びるように酒を煽ったものだった。 だが、彼はもとより合衆国は全体として戦争に倦んでいた。 すでに昨年時点で太平洋とヨーロッパの両戦線での戦死者数はあのシビル・ウォー(南北戦争)を上回っていたし、今年に入ってから判明した両戦線における最後の大攻勢は銃後の家族に数多の悲鳴をあげさせていた。 前線においては部分的にモラルハザードが起きた場所さえあったのだ。 だからこそ、降伏文書調印がなされた今、彼らの緊張は一時的な弛緩状態にあったといっていい。 実質的に日本の要所を軍政下に置いていた日本軍が極めて協力的であったこともそれを後押ししていた。 肝心な時に欧州にいっていたくせして図々しく連合国の代表面して日本に乗り込んできたダグラス・マッカーサー元帥も大きく自分の自尊心を満足させていたほどだった。 だが問題がないわけではない。 マッカーサーが期待したのとは裏腹に、日本海軍の軍港地帯の接収は海軍の担当となっていた。 海軍長官であるマーク・ミッチャー提督は、律儀に「日本軍艦艇の去就が決まるまで日本海軍が艦艇を維持すること」という第1次大戦のドイツ大洋艦隊に対するそれと同様の命令を現場に順守させており、そのかわりに「お目付け役」である米海軍士官を大型艦に常駐させるのみで許していた。 後世様々な意見が出るこの処置だが、これを受けて日本海軍もスムーズに米海軍指揮下に入り介入の機会を伺っていたマッカーサーを舌打ちさせていたのだった。 その理由として、「ヤマト・タイプをわが物にしようと英仏蘭豪、はては関係のまったくないソ連武官が乗り込んできてともに接収を宣言した」という喜劇的な光景を持ち出されてはどうしようもなかった。 そんなわけで、マッカーサー元帥は、介入の機会をうかがっていた日本海軍から重大な情報といって高級将校(あとで知ったことだったが、この日時点で特別昇進が発令されており、彼は少将へと昇進していた)がやってきたならば、とりあえず会うという選択をすることにしていたのだった。 たっぷり2時間をわざわざ薄暗い廊下で待たせて。 その間監視を命じられた衛兵にとってはいい迷惑だったが。 「失礼します。」 キングスイングリッシュをわずかに訛らせた発音だった。 マッカーサーが何か言おうとした、それを遮って鋭い視線で海軍少将 阿部俊雄は言った。 「時間がありませんので単刀直入に申し上げます。元帥閣下。マンハッタン計画に関する重大事項についてお話したく参上いたしました。 ただちに空挺部隊に出動準備を下命いただきたく。」 ――同 6月7日 アメリカ進駐軍 厚木基地 「つまりなにかね?君たちが作っていたのは…パルプ・フィクションに登場するラジウム爆弾の同類だと?」 「ラジウムではありません。我々は冥王素、そちらでは1944年に発見されたプルトニウムによる核分裂反応爆弾ですね。」 「なるほど。」 マンハッタン計画担当研究員という地位にあるエドワード・テラー博士は、興味津々という風にチュウゼンジと名乗った軍服姿の男を上から下まで舐めるように見た。 この男の悪癖として、人を自然に苛立たせる動作がある。 ハンガリーの裕福なユダヤ人家庭に生まれ、幼少期を第一位世界大戦後の共産主義革命の混乱期の中で過ごしたこの男は、控えめに言って物理学の天才である。 だが、彼を知るものは一様に、そして苦笑しながらこう評する。 「クソガキ」と。 若い癖に、いわゆる悪魔のマッドサイエンティストそのものの偏屈かつ自分勝手な言行で彼は知られていたのだった。 だが、科学者同士であるということはそうした人間的な意味での悪評をそれとして意味しない。 そして彼の職場であるマンハッタン工兵管区は、そうした科学者たちの楽園だった。 「いやはや。楽しみだな。」 彼と同行する、第11空挺師団の選抜部隊はどこか浮つきながら、一定の緊張感を持ってある場所へと向かおうとしている。 長野県 松代 もはや放棄されたといわれる地下大本営跡、そこに何があるのかを知る者は、まだ限られている―― 199: ひゅうが :2017/03/26(日) 02:29:38 【あとがき】――リハビリ作につき、少々短いですがはじめてみました。 別作品「リバティベルが鳴る日」と似たテイストを目指しています。 どうぞお楽しみに。

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