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106 :ひゅうが:2012/02/02(木) 22:10:05 銀河憂鬱伝説ネタ――本編「必殺(徹夜的な意味で)仕事人」 ――皇紀4249(宇宙暦789)年3月 銀河系白鳥腕 日本帝国    帝都宙京 帝国議会 「賛成の諸君はご起立願います。」 徳川家武 帝国議会衆上院(旧称貴族院)議長の朗々とした声が議場に響く。 徳川宗家から出仕して長いこの議長は眠そうな目をしていながら、声は驚くほど張りがあるバリトンを出すことで知られていた。 「賛成多数と認めます。よって本議案は可決、成立いたしました。」 議場の議員たちや、電脳の一部を割いて傍聴していた人々が発する拍手がスピーカーから鳴り響いた。 今回――来年度国会を前倒しして開催するという前代未聞の提案が承認され開催されていた帝国議会でも、最も重要であると考えられている法案は議論の末に可決成立した。 秘密会に参加する専門議員や有識者と無作為に抽出された国民多数の討議を経て、軍事参事官や宇宙軍統合軍令本部の苦労は報われたのである。 その名を「外洋機動艦隊計画」。 銀河連邦時代以来の外征可能な軍事力の整備計画である。 かつての計画は銀河連邦から変わった銀河帝国からの脱出計画の隠れ蓑であったが、今回はまったく違う。 可能であれば遠く銀河系辺境部にまで前線を押し上げることすら考慮されているのだ。 それは、既に皇紀4220年代よりテストが繰り返されていた「攻勢型遠洋艦隊」の建造にゴーサインが出たことを意味していた。 「お疲れ様でした。統合軍令本部次長。」 「いえ。今までの苦労を思えばこれはそれほどでも。」 議場から出てくる内閣の面々に嶋田はねぎらいの言葉をかけられた。 長かった――と嶋田は泣きそうになるのをこらえながら握手に応じる。 旧宇宙軍兵学校卒業後、嶋田はとりあえず使えるヤツは使っておけとばかりに前線と赤レンガ(兵部省本省)を往復する日々を送っていた。 当時、日本帝国は防衛態勢の構築終了を受けてペルセウス腕(白鳥腕よりも銀河中心側)の新規開拓と過密気味だった交通路の整理統合を行っていたころだった。 ちょうど企業体も設備の更新時期にきていたために何度目かの開発ラッシュに沸いており、軍人は珍しい存在となっていた。 そのため、嶋田が軍装でリニアレールに乗っているとちらちらと珍獣を見るような目で見られたものだった。 (これは、現在宇宙軍になっている二つの軍がかつてはあまりに仲が悪くそれぞれ軍服で歩いていると出会いがしらに血気盛んな連中が喧嘩をはじめてしまったために私服通勤が定着していたことも理由だったが) そして、上と下からの軍の統合を進めつつ、同期の嫉妬深い連中からは「宮様の腰巾着」だの「宮様の妾」と陰口をたたかれながら嶋田は仕事に邁進した。 出世はしたが、この分だと大将になれるかなれないかという程度に民本派(経済最優先の主張の人々)のからは嫌われていた。 しかし、接触の危険から渋る上層部を説き伏せ嶋田が行った「調査」の結果自由惑星同盟と銀河帝国による戦争がおぼろげながらも判明し始めると扱いはがらりと変わる。 107 :ひゅうが:2012/02/02(木) 22:10:35 皇紀4230(宇宙暦770)年代には、嶋田は「どこの山本権兵衛閣下だよ」と愚痴りたくなるような激務に追われつつ新規軍備計画の責任者もつとめていた。 そして――あの「接触」。 ついに人類のほぼ全員に存在が知れ渡った日本の戦略環境は嶋田たちが立てつつあった次世代の戦略と軍備計画に一転して脚光を与えたのであった。 『たぶんまた出世させられると同時に仕事が増えるんだろうなぁ。やだなぁ・・・』 議員たちからは「現在の状況を見通していた有能な軍人」として尊敬のまなざしで見られながら、嶋田は憂鬱だった。 出世を欲する人々からすればかなり贅沢な悩みであったが。 『いや。大丈夫だ。約束の期限まであと20年・・・頑張ればすぐだ。その後は実家でのんびりする。邪魔などさせるか!』 嶋田は、宇宙軍(というか辻)にスカウトされるときにひとつの条件を出していた。 家業を継ぐから軍歴は50年までで。と。 義体化や電脳化によって寿命が格段に伸びている現在だからこそできる選択だった。 しかし、ともすれば仕事を楽しんでしまいそうになる嶋田にとってはこの約束だけが心の支えでもある。 「では、私はこれくらいで。計画始動にあたって各部署に指示を出さねばなりませんので。」 「うむ。それでは。」 嶋田は一礼し、仕事を終わらせて定時から+2時間以内での帰宅をめざし兵部省に小走りで向かっていった。 「彼女、使えるな。」 後姿を見送った内閣の面々は、歩きながら誰ともなしに嶋田について話はじめた。 「はい。あの通り性格も美人ですし、有能で、真面目です。頭も切れる。軍内では『大宰相の再来』との声も。」 近衛を見送った官房副長官に、補佐官が応じる。 「なら・・・退役前にはそれとなく打診してみるか?政界転身か、政府諮問機関への就職あたりを。」 「既に姉宮様(月詠宮裕子内親王)が動いてらっしゃいます。」 「ふむ。――ならなおさらか。姉宮様に近いうえ、『総研』の懐刀、逃す手はない。 だがあくまでも慎重にな。友好関係は築いておいていけないことはなかろう。」 わかっております。と、内閣官房副長官に補佐官は頷いた。 ――どうやら嶋田は仕事と上司に愛される体質であるらしい。

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