417 :ひゅうが:2012/04/12(木) 10:23:52




ネタ――「地質学的大異変、あるいは新島誕生」ver2.0 【新島誕生の概説】


――新島誕生の地球科学的な概説

日本列島近海に本州に匹敵する新島を誕生させる(それも可能な限り短時間で)のはかなり難しい。
そのため、現状は小松左京先生の日本沈没で使用されたガジェットを使用してみることにする。
おおざっぱにいえば、「太平洋プレートというつっかえ棒を失った日本列島が太平洋側へ向かってずり落ちる」というネタだったが、現代科学の成果によればそれはほぼありえない。
なぜなら、水の上に油が浮くように、日本列島を構成している岩盤は地下のマントルよりも軽い「大陸地殻」であり、圧力軸が変化しても2000メートル以上も沈み込むことはまったくありえない(少なくとも数年の単位では)ためだ。

そこで考察の方向を変えてみよう。
日本沈没のように太平洋プレートの動きの急速な変化というアイデア自体は問題ない。
小松先生はちょうど味噌汁を加熱していると、ちょうど対流の構造が突然変化することにヒントを得ているが、地球の内部は現状のところそれほど熱く成り続けてはいない。
(地質学的スケールでみた場合の地球中心核が発散した熱をマントルが受け取り熱均衡がとられ結果的にマントルが熱くなるということはこの際考えないことにする)

対して平成版日本沈没では、太平洋プレートが日本列島の下に沈み込み、地下でその残骸が滞留している「メガリス」が崩壊、マントル下部に落ち込んでいきそれに引きずられて日本列島が沈むというアイデアを使用しているが、前述したようにこれが起こるとしても列島の完全沈没にはほど遠い。
しかも、メガリスが崩壊し空白域となった部分には下手をすればその分マントル下部から湧出流のような高温のマグマの塊がやってくる可能性が高いのだ。
ちなみに日本列島の場合、能登半島沖から日本海中央部の「大和堆」ないしは中国山東省から華北を経て中朝国境付近に湧出が起こる可能性が高い。

このアイデアを覚えておいてほしい。


さて、今回の目的はくどいようだが「日本列島に匹敵する大島を短期間で誕生させる」ことだ。
現在の太平洋プレートを見てみると、それはかなり難しいことになる。
というのも、太平洋プレートの厚さはわずかに2キロ程度。
海底からマグマを流出させるなら文句はない厚さだが、それではまずい。
というのも、そんなことをすればインドのデカン高原や西シベリアに広がる巨大な「洪水玄武岩層」と同じレベルでのマグマ流出を考えなければならず、そうなってしまえば海水は熱せられ「第二の白亜紀」といえるくらいの海面上昇が発生してしまうためである。
島が出来上がるまで最低でも100年がかかり、その頃には海水面は200メートル以上上昇、まず間違いなく人類絶滅の危機がやってきている。

このネタは最近「華竜の宮」というSF作品で考察されているためそれを参照いただくとして、これでは困る。
地質学的に短期間での変化を求めるなら、太平洋プレートではなくそれに隣接する「フィリピン海プレート」を使用するのがいいだろう。
というのも同プレートは太平洋プレートとユーラシアプレートという巨大なプレートに挟まれ、「双方から多大な圧力を受けながらもプレートの地位を保っている」ためである。
これは、小さいながらも同プレートが太平洋プレートよりは軽いこと(海底に大陸地殻がある!?)を意味しており、なおかつフィリピン海海盆という海底の盆地を形成していることを考えてみれば「ふたつのプレートに押され、凹型にくぼんでいる」という可能性が考えられるためだ。
これを事実と考えれば、太平洋プレートの圧力が変化するかすっぽり抜ければ、フィリピン海プレートは一気に「凸」型に盛りあがってもおかしくはない。
フィリピン海プレート中北部に大陸地殻が眠っていれば話はさらに簡単になる。お風呂の中にアヒルのおもちゃを沈めていたのに手を離せば浮かび上がるのと同じようなものだ。

418 :ひゅうが:2012/04/12(木) 10:24:30
都合のいいことに、伊豆・小笠原海溝からもぐりこんだメガリスが落下すれば、南海トラフ・琉球海溝からフィリピン海プレート北部に下部マントルからのマグマ湧出が発生し得る。
湧出流に押し上げられた上、マグマ自体がフィリピン海プレートと太平洋プレートの間で潤滑剤の役割を果たすため、隆起は極めて迅速となることができる。
さらに都合がいいことに、日本列島は数百年にわたって歪をためこんでいるため、太平洋プレートの圧力が抜ければがっちり食い込んでいたフィリピン海プレートを押してさらに隆起活動を助けるかもしれない。
しかも、日本列島に太平洋プレートやフィリピン海プレートが沈み込まなくなれば日本を悩ませ続けていた東海・東南海・南海地震が発生しなくなる。
なんとも素晴らしいことである。

だが問題は、「どうやって太平洋プレートの圧力方向を変化させる」かである。
ここで太平洋プレートの底をみてみると、ひとつのヒントがある。
天皇海山列である。
アリューシャン海溝に発し、しばらくは南に向かって、やがて東に向かいハワイへ至る海山の列だが、これを見ると面白いことが分かる。
そもそもこの海山たちはハワイ諸島の直下にある下部マントルからの湧出流を受けて海底火山が島を構成しているものだ。
といってもホットスポットは固定されているようなものなのにプレートは動くので島はいくつも生まれ、進行方向に向かって次々に形成されているのだが。
しかしこの天皇海山列をみると、「最初は南から北に向けてプレートが動いていた」のにあるとき「東から西に向かって動きを変えた」ということがわかる。

ちなみにこの結果、日本列島付近では巨大地震が発生することになった上、沿海州のあたりを構成していた日本列島の背骨となる大陸地殻が列島として大陸から離れることになった。
なんとも複雑な話である。
しかし、なぜこんなことが起こったのだろうか?
そもそも太平洋プレートは南から北へ向かっていた。
アリューシャン列島は日本列島のようにプレート沈み込み帯に形成された弧状列島なのだ。
しかし、唐突に沈み込みは停止する。
まるで「何かがつっかえた」かのように。
そのため、太平洋プレートは西へ動きを変えたのだろう。
おそらくは、古い大陸地殻か大きな列島(天皇海山列の成れの果て?)か。沈みこむプレートの上に巨大な「瘤」があったと考えられよう。
それだけではなく、沈み込んだ巨大なプレートの残骸メガリスはそのまま滞留を続けているかもしれない。アリューシャン列島が日本列島ほど巨大化していないというのは、それだけマントル下部からの湧出流が少なかったことを意味している。
ならばその分だけ地下には巨大な古いメガリスが滞留しているはずだ。

と、いうことは、この「つっかえ棒」が取れれば?
日本列島という不自然に巨大なカウンターパートがある東アジア方面よりも、アリューシャン方面に太平洋プレートは沈み込みやすくなるはずだ。
もともと太平洋プレートはアリューシャン方面に沈み込んでいたのだから。
(あー長かった・・・)

419 :ひゅうが:2012/04/12(木) 10:25:06
さて、こうして太平洋プレートの動きの変化を考えてみたところで、想定できるシナリオを考えてみよう。



シナリオ――新島誕生

1億年以上にわたり太平洋プレートは南米大陸沖の東太平洋海嶺から生み出され、西へ、西へと動き続けてきた。
だが、そんな中にあってはるかアリューシャン海溝の地下では、それより以前に沈み込んでいた大量のプレートの残骸「メガリス」が眠り続けていた。
というのも、アリューシャン列島が乗っかっている北米プレートと太平洋プレートとはかつて存在した台湾と同じくらいの巨大な島の残骸でがっちり食い込んでおり、沈み込みへの巨大なつっかえ棒になっていたためである。
それでも1億年以上の時間はそれらにひび割れを生じさせていたし「あとひと押し」があればつっかえ棒を取り払うには十分だった。

1923年9月1日。
日本列島で発生した大規模地震は、プレートを通じてアリューシャン列島の沖にもエネルギーを伝えた。
史実では分割して発生する三陸沖から千島列島にかけてたまり続けていた歪のエネルギーはちょうどアリューシャン列島地下で集中、ついに「つっかえ棒」を破断させたのである。
一度発生した「破断」は止めようがなく、日本列島にたまっていた歪みは地殻の脆弱点に向かって一気に流れはじめた。
そしてついにアリューシャン列島地下の「メガリス」は崩壊する。

無理に東アジア方面にもぐりこみ続けていた太平洋プレートは、こうして正常な流れに戻ったのだった。
メガリスと引き換えに湧き上がってくるマントル湧出流でアラスカからカムチャッカにかけての火山活動が活発化する中、はるか南のフィリピン海プレートは急速な「再浮上」を開始する。
1億年にわたって押し込められていた「幻の島」が出現をはじめたのだ。
日本海溝から南海トラフ、琉球海溝が急速に浅く平坦になっていく中、日本列島と平行するかのように「幻の島」は浮上していく。

大東諸島を巻き込み、北端は伊豆諸島の鳥島、南端は沖の鳥島の南方510キロに達する巨大な新島「瑞穂島」は、わずか2年のうちに出現。
領有宣言をした日本帝国を大いに驚かせていた。

驚いたのは、アラスカから西海岸で不気味な地震の多発に悩まされ、ハワイ南方での同様な異変に神経をとがらせていたアメリカ合衆国も同様だった。
総面積42万平方キロに達する巨大な島は、グアムから中国大陸の間を遮るかのように出現していたのだから。

世界は「幻のムー大陸再浮上」と書きたてたが、無邪気に喜んでいるだけではいられなかった。
北米大陸で多発する大地震、噴火が相次ぐアラスカ・アリューシャン火山群。
前者は好景気に沸く北米に復興需要を提供していたが、後者は大量の火山灰を生じさせて主としてロシアから東アジアに深刻な食糧危機を生じさせており革命の混乱状態の中にある両国をさらに苦しめていたのだから。

そして、日本領「瑞穂島」において、太古に構成されたと思われる大規模鉱床が発見された時、世界はさらなる混沌に陥ることになる――

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最終更新:2012年04月15日 06:26