4 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/13(月) 18:40:49 ID:sp1-75-75-170.smd03.spmode.ne.jp [2/8]
憂鬱SRW支援ネタ 青春記録世界編SS 「天童アリスの勇者修行」2
- キヴォトス ミレニアム・サイエンススクール 自治区内 東丈山 山中
俗世と切り離された山中にて、アリスは巴ナギと向き合っていた。
勇者足らんとするアリスに必要なものはメンタルの形成と方針を定めることにある、とナギは考えていた。
「なぜ」「どのような」「どうやって」勇者になるのかを定め、「何をするか」を決めなくては、迷走をしたり、目先の利益に飛びついてしまうのだ。
アリスは素直でまっすぐで好感の持てる感性の持ち主だが、そうであるがゆえにぶれやすいし、誘いに乗ってしまいやすい。
先だっての棍棒騒動だってそうだ。モモイとミドリ達ゲーム開発部の資金難解決のためというお題目ばかりに目が行き、自分の起こす結果を予想できなかった。
行動の結果を考えたうえで他の部員を諫めるか、もっと話し合うべきであったのだ。
そのため、肉体や技術を磨く修行はそこそこに、そういったメンタルや考え方の涵養を優先した。
「---ということです」
一息入れて、瓢箪に入れた水を口にするナギ。
目の前のアリスは、教授された言葉を噛みしめていた。
「勇者になる、そして、何をするのか……」
困惑している。それは無理もないことだ。
燃える情熱や憧れを抱いている子供に、理論や理屈という水を浴びせかけて強制冷却したようなものだからだ。
アリスには選択の自由があるが、その自由の結果を受け止めなくてはならない。
未だに子供であるから全てをしょい込めとは言えないが、いずれは負うことになるのだ。
ネバーランド(永遠の箱庭)にいるわけではなく、ずっと子供ではいられないのだから。
「そう。ゲームならば、目的は決まっていて、過程も手段もいくつか提示されているからわかりやすい。
けれど、現実ではそう簡単にはいかない。目的を決めて、手段を選んで---選択しないとならない」
アリス、と呼びかければ、彼女は身を震わせる。
それは恐れだ。まだ知らないところに、彼女は踏み出しているのだから当然。
けれど、そのままナギは問いかける。
「貴方は何をしたいですか?」
優しいが、同時に厳しさのある言葉を送ったのだった。
「勇者でありたい、勇敢なものでありたい。
だとしたら、それは誰のために、何をする人間なのか?
何者になりたいかは個人の自由ですが、そこから先は自ら責任を負って行動する必要があります」
「責任、ですか」
「貴方はまだ生徒、子供です。責任を負いきれないから、大人がアドバイスや手助けをしてくれて、責任の一部を背負ってくれます。
それでも、一部であろうとも貴方は責任を負わないとならないのです」
思うが儘に振舞うことが許される子供には重たく、難しい話だ。それでも彼女ならば理解してくれると、そう考えている。
「……アリスには難しいです」
「思ったことが言えるのはいいことですね」
5 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/13(月) 18:42:30 ID:sp1-75-75-170.smd03.spmode.ne.jp [3/8]
迷い、考えていたアリスの言葉に、ナギは思わず笑みを浮かべた。
こうして迷いなく自分の心情や状況を吐き出せるのは、彼女らしい。
「では、アリスの所属するミレニアムの生徒会---セミナーの仕事で考えてみましょう」
だから、ナギはわかりやすい例えの一つを出すことにした。
「ユウカが、セミナーが部活動に割り振っている予算について口を出すことができるのは、会計という仕事故です。
口を出す権利を持っていますが、同時に自分勝手に使うことはできませんし、ルールがあれば従わなくてはなりません。
もし職務上の権限を濫用すると処罰を受けることになります」
「はい、そのせいでユウカは何時も忙しそうです」
「そう、とても大変で忙しいでしょう。
けれど投げ出してはいない。彼女でなくてはできないことがある。
権利があるからこそ、果たさなければならない義務と責任がある。
彼女が苦労をすることで、それ以上に利益の得られる人がいるからこそです」
では、と問いかける。
「アリス、あなたはそんな彼女に何をしてあげられますか?」
「仕事の手伝いをしてあげられます!」
「そうですね。
ですが、手伝いができる範囲にも限界があります。セミナーの会計だから許されることでも、アリスでは許されないこともあります。
あるいは、アリスが仕事を手伝う中でミスをしてしまうと、アリスのミスであっても手伝いを許可したユウカが責任を負ってしまうことになります」
「あっ……」
責任が何たるかの一部を理解ができたらしい。
同時に、如何にこれまで迷惑をかけていた意味も理解できてしまった、という顔をした。
「アリスは……迷惑だったのでしょうか?」
「そう思いますか?」
「はい……棍棒のこともですが、アリスは勇者らしからぬ行動で迷惑をかけてしまいました」
うつむいている彼女は、泣きそうな子供のようである。
いや、実際子供なのだが、子供らしい表情をしているというか。
それを、ある意味ではナギはまっていた。
「アリス、それでもユウカは許してくれたのでしょう?」
「えっと……はい……モモイとミドリとユズと一緒に謝りました」
「だとしたら、それでいいのです。
ユウカに迷惑をかけたことをアリスが自覚して、次に生かそうと思えたなら、ユウカは責任を果たせたということです。
セミナーの会計としても個人としても見過ごせないからこそ責任をもって怒った。それが報われたのですから」
「そう、だったのですね……」
怒ったり、反省して誤れば満足したりと忙しかった理由を今になって理解できた。
同時になんとなくであったミレニアム・サイエンススクールの仕組みも、セミナーの仕組みも、同じように。
自分達は気が付かないうちに何度も何度も助けて貰えて、尚且つ、幾度も守られていたのだと。
6 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/13(月) 18:43:03 ID:sp1-75-75-170.smd03.spmode.ne.jp [4/8]
その言葉に良し、と頷いて、ナギは立ち上がった。
「だとしたら、今後アリスがすべきことは自ずとわかるはずです。
自分だけでなく、ゲーム開発部のみんなと共有すべきことも」
「……そうですね」
「どうしても不安ならば、ユウカに聞いてみるといいでしょう。
彼女も、自分が自分の責任を果たせたのか不安なのですよ。ゲーム開発部は何度も騒ぎを起こしていると聞きますからね」
「うぅ……耳が痛いです。師範は精神攻撃がうますぎます!」
らしい言い回しに笑みがこぼれた。
ともあれここまで気が付けたならば、次にやることは気が付けたことを骨身に染みこませることだ。
「あとは気が付いたことを皆で共有して、どうするかを考えて選択することですね。
私が全部を教えてあげることは簡単ですが、それでは意味がありませんから。
後はアリス達ゲーム開発部次第です」
「……なんだか、こうしろ!とは言わないのですね、師範は」
「私はあくまでも導くだけです。そこから何を学び、どういうふうに生かし、どんな選択をするかはあなたたち次第です。
これまでと変わらずに迷惑をかけるばかりのままか、それともより広い視点を持てるかは今後にかかっていますね」
さて、と視線を巡らせたナギは彼方の方を見やる。
そちらからこちらに向かってくる気配が2つ。波長がそっくりということは、似通っている人物だ。
「才羽姉妹が来ましたね……せっかくなので二人にも教授をしましょう。
あとは、実戦を」
「うわーん、いきなりハードルがあがりました!難易度がルナティックです!」
実戦という言葉に棍棒騒動の時に圧倒されたのを思い出したか、アリスが泣き言をいうが、ナギとしては頑張ってほしいと思う。
彼女たちはここでどのように成長していくのか、それが楽しみなのだ。
7 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/13(月) 18:49:13 ID:sp1-75-75-170.smd03.spmode.ne.jp [5/8]
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最終更新:2026年01月10日 14:43