748 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/25(土) 23:09:12 ID:sp1-75-75-181.smd03.spmode.ne.jp [4/8]
大陸版日企連×86 SS「プロローグ -パルマコン-」
日企連の背後にある転生者たちの組織---
夢幻会の会合の場にあって、代表である神崎は「かの地」をこのように評した。
「これは、パルマコンだ」
即ち、薬であり毒、毒であり薬。
荒れ地に種を蒔き、必死に育てているこの世界にあって、福音にも終末のラッパともなるものだと。
今、この世界はアサルトセルに覆われ、フロンティアを失っている状態だ。それを打破する、新しい世界が開かれたと言える。
だが、それをよりにもよって自分達が半ば独占しているというのは危険が過ぎた。
得られる利益を自分たちが独占できるわけであるが、それはこの世界のどの企業も欲してやまないものである。
ともすれば日企連を他の企業が徒党を組んで叩きに来ることは明白だ。利益とフロンティアの奪い合いに投じられるエネルギーは今日の戦争経済を見ればわかる。
全世界を相手にして戦うことになった場合、果たして日企連であっても無事でいられるかどうかは全くの未知数なのだ。
この毒にも薬にもなりうるポテンシャルのある要素をどのように生かすかを決め、日企連の、ひいては世界の未来を決めなくてはならない。
これは、異世界への進出という意味でもそうだ。
一見すれば夢のある話であるが、現実はそうではない。未知の世界とは、分からないが故の恐怖と危険にあふれた世界ということ。
一歩足を踏み出すことが安全と保障されていない世界へと踏み込んでいくということなのだから。
一応、外見的には同じ人間と接触ができたという話であるから、ハビタブルゾーンにある惑星の大気圏内というのはわかる。
だからこそ、こちらの世界に存在しない病気・微生物・ウィルス・動植物あるいは未知の物質が存在しているかもしれないのだ。
それらに接触した際に果たしてこちらが無事でいられるかどうか---未知の病気の蔓延などが起こらないかが不安視される。
同様に、こちら側からあちら側にそれらを持ち込んでしまって、これまた病気の蔓延を引き起こす可能性は十二分にある。
特にコジマ粒子を持ち込んでばらまくことは危険極まりない。こちらの地球を汚した最も恐ろしい物質なのだから。
そして、人と人とが出会うということ。それもまた薬であり毒となる要素だ。
「私」と「貴方」は違う。自分と他者との境界を持つからこそ、人間は自己を認識し、相手を認識できる。
そうすることで自分を定義し、他者を定義し、初めて人から人間になることができるようになる。
それがコミュニケーションの端緒にして、互いが互いのために行動し、協力し合える。
だが、人と人とが会うということは、必ずしも良いこととは限らない。
自分と他者が違うからこそ、すれ違い、摩擦が起こり、やがては争いへとたどり着く。
どちらも始まりは同じでも、もたらされる結果は全く違うのだ。
果たして異邦人と出会ったとき、自分達とは違う「誰か」と手を取り合うことが果たしてできるのだろうか。
縄によって繋がり、良きものを引き寄せていくのだろうか。
それとも相争い、互いに悪しきものを遠ざけるために棒で殴り合うことになるのだろうか。
これらの事象に対し、明確な答えを出すには、まだあまりにも多くのことが足りていなかった。
時間も、情報も、猶予も、あるいは---覚悟や意思というものも。
どこか非現実的すぎて、誰もが理解や認識が追い付けていなかったのだ。私も含め。
そんな私---転生者にして上位陣の一人---に、財務部の辻堂氏から連絡が入り、極秘の命令を下されることをこの時は知らなかった。
まさか自分が、その最前線に飛び込んでいく羽目になろうとは思わなかったのだ。
749 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/25(土) 23:10:31 ID:sp1-75-75-181.smd03.spmode.ne.jp [5/8]
少し、過去を振り返ることにする。
国家解体戦争より20年余---企業による支配体制は繁栄と成長を続けていた。
私は国家解体戦争時には既に企業に身を置いていた。転生者だから、この後に世界がどうなるかを理解していた。
そのおかげで、私は日企連に入り、同じく転生してきた者達と知り合い、協力し合い、この世界に立ち向かい続けていた。
国家が力を失い、企業が台頭し、争いが普遍化する。なればこそ、知識と経験を活かして自己の保存を図るのは必然だった。
勝ち馬に乗ったと言ってもいい。私個人の目から見ても、国家が末期的だったのはわかり切っていた。
そこからはあっという間だ。1か月という異例なまでに短い期間で行われた国家解体戦争で既存国家は崩壊。
企業が囲い込みを行ってある種社会主義染みた新たな統治体制を作り上げ、それを地球全土に敷いた。
企業同士が協力し合ったとはいえ、所詮は競合他社。やがては、国家同士ではなく企業同士の大規模戦争に発展した。
国家解体戦争から2年余りという短すぎる平和を経て、企業間の大規模戦争の幕が切って落とされたのだ。
あまりにも短い期間で、あまりにも多くの人命が失われ、資産が失われ、激戦は大地を荒れ果てさせることになった。
そのリンクス戦争を経て、世界に汚染と破壊と混乱をまき散らした企業は、その反省と教訓の元にした統治を継続していた。
戦争からの復興という特需に押され、戦争によって得られた知見と予算から新たな技術が生まれ、新たな競争になり、また経済が回る。
それでも、薄汚れた地上に半ば見切りをつけたのは自然の成り行きであったのだろう。
それだけコジマ汚染が深刻な問題であったし、旧時代から続いていた自然の荒廃や汚染問題が合わされば、もはや人の対処の限界を超えていた。
勿論、努力を全て諦めていたわけではないのは事実だ。そうでなければ、地上はとっくに人の住めない領域と化していただろうから。
だが、賢明な消費者(アルファ・コンシューマー)にして統治者たる企業は、新たな居住空間として地上に蔓延する汚染の届かない高空を選択した。
数千万人が居住可能なプラットフォーム「クレイドル」を多数浮かべ、そこに人類の過半数を住まわせたのだ。
残りの人類にしても、地上に残された汚染の少ない土地や海に居住区を作り、そこに残された資源と自然を押し込み、生きながらえさせていた。
そして、残った広大な土地は、資源の取得とそれをめぐる戦争経済の場として扱われることとなり、飽きることのない戦闘が日夜繰り広げられていた。
戦争のために経済が回り、経済を回すために戦争があり、奪い合いと殺し合いが循環の動力源となっていた。
これによって、常に消費と生産とが繰り返されるようになり、経済的な安定が生まれ、統治の安定につながっていた。
750 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/25(土) 23:11:41 ID:sp1-75-75-181.smd03.spmode.ne.jp [6/8]
しかし、統治の安定化が進んでなお、企業は常に自分たちの体制を覆しうる力---制御され得ぬ力に怯え続けていた。
国家解体戦争とリンクス戦争の反省の名の元に、突出した個人であるリンクスを企業が占有せず、共有するという形で共同利益を得る体制を作ったのもその証拠。
統括組織の名が「カラード(首輪突き)」と名付けられたのも、リンクス(ヤマネコ)に怯えていた現れと言えるだろう。
統括組織によりリンクスを管理するという名目は結局は絵空事で、リンクスが所属する企業に占有されている状況は何一つ変化しなかったのも企業らしい。
結局どの企業も自分たちの支配体制を担保するものを絶対に手放せなかったのだ。
カラードは統括組織ではなく単なる依頼仲介組織へと成り下がり、カラードの動向は政治力により左右される風見鶏でしかなくなった。
リンクス以外の軍事面においてもその傾向は見られた。
リンクスという個人に依存するのではない、多数の凡人により運用される巨大兵器AFの開発と投入が行われたのである。
ネクストという圧倒的な個の性能を押しつぶす物量とパワー。特別な才能を持つ人間を排除し、代替できる凡人に担わせる。
その巨体故にリンクスという戦力さえも、倒すことは極めて難しい。
核兵器やネクストに変わる、新たな戦略兵器であった。いつの時代も互いに突きつけ合う武器は必要だったと言える。
そもそも、企業連合という名の元に連名している企業も、その内側では国家と何一つ変わらない対立問題を抱えている状態であった。
リンクス戦争で同じ陣営に属し、勝利を勝ち取って企業連合を構成する企業が、今ではすっかり冷戦を行っているのがその証拠だ。
GA、オーメル・サイエンス、インテリオル、日企連---そのいずれもが、レイレナード陣営をある事情から結託して滅ぼしたにもかかわらず、である。
結局のところ、人の営みは何一つ変わっていない。国家は解体されたが、そう簡単に国家という仕組みそのものが死ぬことはないということか。
これらの知識のほとんどが又聞きであった。
サブカルに明るくない私が、詳しい人間から聞いた概要のようなもの。
概要としてまとめるまでに、いったいどれほどの現実の実情が切り落とされたのか、それを知らなかった。
企業の上層部に含まれるようになるまで出世して、ようやく俯瞰できるようになったほどに、情報があまりにも多かったのだから。
そして、先ほども述べたように、未知なる戦いへと私は飛び込んでいくことになったのだ。
この世界と、ゲートの向こうの世界の、二つの世界の未来をかけた戦いへと。
751 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/25(土) 23:13:50 ID:sp1-75-75-181.smd03.spmode.ne.jp [7/8]
以上、wiki転載はご自由に。
とりあえずプロローグです。
続きはまあ、ゆっくりで。
最終更新:2026年01月10日 15:00