870 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/28(火) 22:47:04 ID:sp1-75-73-183.smd03.spmode.ne.jp [2/4]
大陸版日企連×86 SS「異世界間接近遭遇」
私が命じられたのは、異世界探索へ向けた予算案の作成であった。
全く未知の世界に踏み込む準備から実際に人を送り込むまで、さらにその先に至るまで必要となるであろう経費を予測して計画を立てるというものだった。
ゲートの向こうは全くの未知の世界であり、何が待ち受けているかは謎なのだ。
まさに理想郷と言えるような人間にとって素晴らしい世界なのか、一歩足を踏み入れれば途端に死ぬような地獄の如き世界なのか。
宇宙の果てに繋がっていてもおかしくないし、何のことはない近くに繋がっているかもしれないし、果てに創作によくあるような異世界なのかもしれない。
分からないことが分かっているから、とにかく実験をするように調査しなくてはならないのだ。
そして厄介なことに、この調査を行うのは昔の言い方で言えばお役所仕事。今のいい方ならば日企連本店の厳正でお堅い仕事の上で行われるのだ。
夢幻会や即応チームから意見や報告が上げられ、それをもとに計画が練られていき、必要な予算を計上し、見積もりを行い、審査を経て、ようやく承認となる。
今後の見通しや不測の事態に即応するための余裕も持たせたり、あるいは不必要に膨らんだ部分をカットしたりしなくてはならない。
だが、日企連という支配企業のキングメーカーたる夢幻会の後押しの元なので、それらはスムーズに進んだ。
ゲート発生の当日中には付近の封鎖と隔離の実施が行われていたし、翌日には探査ドローンを送り込む手筈が整っていた。
聞いた話であるが、夢幻会は昔から「あるかもしれない事態」をいくつも想定しており、その為のリソースを確保していたという。
それこそ、今回のような異世界への進出という事態も想定の内だったというわけだ。
その気持ちもわからなくもない。将来的な閉塞が約束されている世界(原作)において、何かイレギュラーが起きてほしいというのは儚くとも縋りたい希望だ。
まあ、それが本当になってしまったので、正に瓢箪から駒が出るといったところか。
とりあえず数十のドローンが送り込まれたことで、その異世界というのが、我々の認識するところのハビタブルゾーンの土地というのは判明した。
収拾された空気の構成、土壌、全方位を撮影した写真、収音、微生物、光……あらゆる情報が収集され、そのように判明した。
最も大きな証拠は、外見的にはホモ・サピエンスの特徴を備えた生物が確認されたことであろう。
同じくしてこちらの文明と同じ言語が確認され、受信できた電波から割り出された放送の内容もまた判読可能なことも後押しとなった。
総じて、夢幻会の結論は「どこか遠い宇宙に存在する地球に類似した惑星もしくは並行世界」というものだった。
そして、重要なことが一つ。
つながった先の土地が所属する勢力は「サンマグノリア共和国」というらしいことだ。
盛んに発せられている電波を傍受し、判読した結果判明したのは、我々がかつて解体した支配体制を持ち続けている世界だということ。
我々企業に属してその支配体制を維持している側からすれば、旧体制が墓場から蘇って闊歩しているのを目撃したわけであった。
いや、闊歩しているだけならばいいだろう。闊歩している旧体制がこちらの存在に気が付いたら襲い掛かってくる可能性が高い。
未だに企業の支配体制に反抗する勢力は枚挙にいとまがなく、人々だってコロニーで分断していなければ何を要求するか分かったものではない。
嘗ての体制への回帰を、と言い出す声を大きくするにはあまりにも燃え上がりやすい燃料だった。
亡霊に襲われるかもしれないという恐怖が理解できるあたり、私も企業の人間らしい。
871 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/28(火) 22:47:51 ID:sp1-75-73-183.smd03.spmode.ne.jp [3/4]
この情報を契機に、さらに異世界---電波傍受の結果「星暦」を年号とする世界についての情報クリアランスは引き上げが行われた。
何のことはない、国家体制を否定して今の体制を作っている企業からすれば、どういう形でも存続している国家という情報は劇物にしかならないのだ。
だが、同時に我々も気が付いた。情報統制をしようが、いずれは接触を持つことを避けられないのだと。
まあ、当たり前であろうが、何時かは来ると分かっているのならば準備のしようもあるというものだ。
他企業ならば強硬姿勢も辞さないだろうが、日企連---というか夢幻会---では穏当に接触を図る姿勢のようだ。
戦争に気軽に持ち込みたくはないのと、あちらにある資源を入手したいという欲が混ざった結果だというのはわかる。
そこについては私は間接的にしか関われないので、朗報を期待するしかないだろう。
また、こちらからドローンを送り込んでからほどなく、あちら側からも調査用と思われる無人機が送り込まれてきた。
やはりというか、人間をいきなり送り込むことには恐怖が伴っていたのだろう。そういう調査ができる程度には技術などが進歩しているとみるべきか。
こちらの送り込んだドローンを我々同様に調査していたらしいことを考えれば、推測もできようというもの。
傍受したラジオ放送曰く、あちらの年代は共和国歴350年代、星暦でいうと2130年代とのこと。
単純比較は難しいのだが、フランス革命から350年余りが過ぎればなるほど西暦で2100年代くらいにもなるだろうか。
だとするならば、案外年代などは近い可能性もなくはない。これらの情報も防疫などの分野に生かされることになるだろう。
私はといえば、調査が進むにつれて膨らんでいく予算要求の嵐に対処することに追われていた。
情報が入って共有されれば、必要となるものがわかるわけで、その調達を急ぎたいという声が湧くのだ。
予算は余裕を持たせていたつもりであったのだが、知的好奇心や冒険心、あるいは国家体制への恐怖という感情の前には物足りないものと映ったようだ。
急いで確保しなければ後回しにされるかもしれない、という焦りもあったのだろう。
こちらは折衝に奔走しないとならないというのに、なんというか、こっちのことも考えてほしいものだ。
そのことを辻堂氏に愚痴ったところ、いい笑顔で「ここからさらに大変ですよ」と言われた。
今日もまた残業となりそうである、ガッデム。
872 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/28(火) 22:48:27 ID:sp1-75-73-183.smd03.spmode.ne.jp [4/4]
以上、wiki転載はご自由に。
プロローグはサクサク進めたいところですね。
本格的な接触は次話には取り掛かれそうです。
最終更新:2026年01月10日 15:05