896 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/29(水) 21:36:04 ID:sp1-75-72-100.smd03.spmode.ne.jp [2/10]
大陸版日企連×86 SS「異世界間接近遭遇」2
私が予算獲得の陳情の嵐で残業を続けている間にも、粛々と異世界間交流は続いていた。
当初の予測通り、企業が国家を解体して支配者となった世界というのはあちらにとって大きな衝撃であったようだ。
何とか宥めすかしていきなり軍事衝突になるような事態を回避できたのは大いに賞賛すべきところであろう。
夢幻会のメンバーたちが集めた、国家解体戦争前に国家が陥っていた問題点などを提示し、その解決のためには致し方なかった説明をしたのが効いたそうだ。
さしものサンマグノリア共和国も、自国の将来に待ち受ける可能性のある問題には目が背けにくかったらしい。
勿論、それだけで感情的あるいは政治的な反発などを綺麗に打ち消せたわけではない。
ゲート周辺に結構な数の軍が展開したのを確認したというのだから、よほど恐ろしいと感じているようである。
人の行き来や情報も含めて統制を厳しく行ってこちらを隔離しようとしている。物の取引もかなり監視をつけられているようだ。
これまで自由に傍受できていた電波についてもバンドが制限され、人員の展開地域で得られる紙媒体の情報元も一気に減ってしまった。
あちらも理解しているのだろう。企業というのは経済活動に基盤を置いて立脚する。
つまり、従来のように武器と武器を向け合う戦争によって領土を取り合うだけではない。
経済活動を通じてじわじわと侵食してくるという、真綿で首を締めるような特性を有しているのだ。
企業城下町などを形成されては実質こちらに併合されたも同然であると判断し、下手に展開されないようにしている。
あちらから物や情報を入手できることはできるのだが、明らかに政府による介入と監視が存在している。
だが、完全に無視ができず、日企連について知りたがっているのはサンマグノリア共和国側も同じだ。
接触の完全な拒絶ではなく、共和国側が主導権を握った上での交流をしようと模索しているのがその証拠だ。
国家や歴史の事象などが違えども、同じ可能性を辿るかもしれない「もしも」の可能性の世界とあちらからは見えている。
荒唐無稽かもしれなくとも、日企連が提示してみせた証拠を無碍にするわけにもいかない。
ラクダの背骨を折る最後の藁がなんであるか、おそらくはしゃかりきになって探しているはずだ。
そうして交流が続けば、少しずつでもサンマグノリア共和国から情報が得られていく。
こちらの情報が開示されていくのと引き換え、というわけではないが、サンマグノリア共和国以外の国の情報も手に入り始めていたのだ。
共和国から見て東に位置するギアーデ帝国。名前の通り現代でも帝政を敷き、技術や軍事に秀でる超大国。
そのギアーデ帝国と同盟にあり、同時に仮想敵国でもある、ロア=グレキア連合王国。こちらも王政が現役であり、これまた技術に優れる国。
南方に位置するヴァルト盟約同盟。かつてギアーデ帝国の侵攻を跳ねのけた実力を持つ、国民皆兵の民主制国家。
ギアーデ帝国と縁が深い、原生海獣という生物を退け海洋の制覇を目指す海洋国家たるレクギード征海船団国群。
情報元が揃いも揃って「狂った国」と評する宗教色の極めて濃いノイリャナルセ聖教国。
その他、キティラ大公国、リン=リウ通商連合、その他諸々---この星暦世界の、この大陸に存在する国々の情報が入ってきていた。
897 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/29(水) 21:37:30 ID:sp1-75-72-100.smd03.spmode.ne.jp [3/10]
これを簡単には言えないが、多様なものだ、と私は驚嘆した。
こちらの世界ではフランスで発生した革命に端を発し、それが世界中の国に広まって、時間差こそあれどもそれが普遍的な基盤となったのだ。
GAの母体となった
アメリカなど、民主主義の兵器廠を嘯いた時期もあったほどに根付いていたのだ。
しかし、そのフランス革命に該当するであろう、サンマグノリア共和国の革命から300年を経てもなお、実権を握る君主が残っているのはすごいものだ。
特にギアーデ帝国は、農奴や荘園制度が現役で、貴族が有力な権力と知識を独占していて、それでいて近隣国でもトップランクの国力を持つ。
勿論、民主制にならなければ発展しないわけではないというのは、我々の世界の歴史でも証明している。
それでも、文化文明が発達し、革命によって民主主義が生まれても、それに流されない政治体制が複数存在しているのは驚きだった。
悪く言えばちぐはぐな政治体制で世界でも有数の国力を築き上げることができたのは、一体どんな制度や風習によって支えられているのだろうか?
そして、疫病などのリスクが排除できた、あるいは排除できる体制が整ったことで、直接的な交流が幕を開けた。
準備に裏方として奔走した身としては、こんなことなどとてもではないが歓迎できないほど忙しかった。
それもこれも星暦世界の自然や資源を入手できるという、万金を支払っても得られないものを得るためと分かっているから我慢できたのだ。
これらを将来的にコンスタントに受け入れることができれば、それを元手にこちらの世界の環境の立て直しもはかどろうというもの。
その為ならば粉骨砕身の努力をすることもやぶさかではないのであるが。
ともあれ、国家と企業という異なる支配者の体制同士の交流と折衝は、なんとかうまくいっていた。
綱渡り状態で、どこかで破綻する可能性は十分にあるのだが、双方の思惑もあって未だに交流は続いている。
サンマグノリア共和国としては将来的な国家の破綻を恐れ、少しでも情報と対策を得ておきたいという危機感。
日企連としてはこちらの自然環境復興の種火となる資源を継続して入手したいという願い。
その他、色々と絡まっている事情は複雑ではあるものの、日企連はサンマグノリア共和国領土のゲート周辺に拠点を設けることを許されるようになったのだ。
現地の情報収集はより滾るようになったし、防疫期間を過ごすのもスムーズにいくようになったのも非常に大きい。
共和国が優れているという生物科学分野の技術はその手の研究においては有用だと判明してから、技術の買取はかなり進められていた。
898 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/29(水) 21:39:24 ID:sp1-75-72-100.smd03.spmode.ne.jp [4/10]
サンマグノリア共和国も、異世界生まれとはいえ使える技術を入手したいという意欲がわいたのか、部分的な通商を開き始めた。
こちらの世界では普遍的でも、星暦世界ではまだ未発展の技術など、売れる余地しかないものが結構あったのだ。
重工業分野に遅れているサンマグノリア共和国は、その自覚があるのか、日企連から得られるものを得ようとしているのだとか。
こちらは国家というよりも企業の動きが活発なのだという。まあ、国家よりもよほど弱肉強食であるので、企業や民間での生存競争は苛烈なのだ。
飛びついてくるのもまたやむを得ないことなのだろう。
しかし、後から考えた時、私や夢幻会を含んだ日企連は思慮が足りていなかったのかもしれない。
こちらの世界の情報が劇物だとは散々注意を受けていたが、それの影響力を甘く見積もってしまったのだ。
勿論これは結果論であるから、それを言いだしたらきりがない。後知恵ならば誰だって天才になれるのだから。
日企連は色々と注目を集めながらも星暦世界において活動を行っていた。
星暦世界の国々から警戒や悪意を受けながらも、あるいはこちらの世界において他の企業からの探りを弾きながらも、なんとかうまく回していたのだ。
秘匿する必要がある業務であるため、信用のおける夢幻会のメンバーがかなり酷使されたというのは言うまでもない。
そんなふうに異世界に触れているということは、異世界から触れられるということでもある。
こちらが情報を得れば、星暦世界の国々もまた情報を得るという、ある種の等価交換が行われていた。
得られた情報は、星暦世界に広まり、国家をまたぐ情報インフラによってあちらこちらへ伝播していく。
尾ひれ背びれどころか鰓や余計な足までも生えてしまった情報も含め、噂も含めてあちらこちらで影響を及ぼした。
そこまでは理解していたのだが、そこから先において、情報が一体どのような化学反応を起こし、行動に反映されるかまでを予想しえなかった。
殊更に、国家は自らのアイデンティティーのためならば、文字通りなんだってやるということを、迂闊にも我々は忘れてしまっていたのだ。
国家とはリヴァイアサンであり、恐るべき怪物なのだ。その点においては企業と全く変わりはない。
サンマグノリア共和国の民主革命というのが、他国からどのように見られ、警戒されていて、そこに我々の情報が加わることが何を引き起こすのかを。
だから、人の、国家の感情に火がつくのは、非常に容易いのだった。
それを良しとしたとき、正義があるとみなしたとき、他者や他国の意思に関係なくタガは外れ、行動に移される。
唐突に、戦争の足音が迫ってきたのだ。
899 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2025/10/29(水) 21:40:15 ID:sp1-75-72-100.smd03.spmode.ne.jp [5/10]
以上、wiki転載はご自由に。
日企連もまた全能でも万能でもなく、単なる人の集団にすぎないのです。
夢幻会だって然り。そんな簡単にいくわけがないのです。
というわけで、そろそろ原作の気配がしてきたので、物語をどんどん加速させていきます。
最終更新:2026年01月10日 15:07