アットウィキロゴ
61:弥次郎:2025/10/31(金) 23:37:09 HOST:sp1-75-75-127.smd03.spmode.ne.jp

大陸版日企連×86 SS「悪霊の進撃」


  • 日本大陸 日企連企業領土 某所


 ギアーデ帝国からの戦線布告を、日企連はもとより警戒していた。
 だからこそ、宣戦布告があった直後から予め定められていた通りにデフコンがシフトし、防衛体制へと動き出していた。
これは何もギアーデ帝国に限った話ではなく、星暦世界から戦争を吹っかけられることをそもそも想定していたのである。
自分達が星暦世界から見た場合に、如何に異常でおかしな存在で、仲良くできるとも限らないと理解していたからだ。
油と水どころの話ではないのだから、これまで穏当にすんでいたのが奇跡的であった。

 とはいえ、である。
 日企連相手だけどころか、周辺国すべてに戦争を吹っかけたのは流石に目をむくしかなかった。
それだけ自国の軍が勝つことができるという自信か確証が存在していたためなのだろうか、と推測していた。
それが無人兵器「レギオン」なのだろうというのはわかるのだが---

「無人化されたMTとそれを支えるインフラを内包した大型兵器の集まり……まあ、想定の範囲内ですね」

 生憎と、その手の兵器については日企連はよく知っていたのだ。
MTに始まって、ACが生まれ、ネクストが生まれ、さらにはAFというものにまで発展しているのだから、レギオン程度では既知の範囲を抜け出していないのだった。
 問題だったのは、諜報活動で発覚したギアーデ帝国のガバガバすぎる運用方針やスタイルであった。

「自己増殖機能と自律判断能力のある機械ってやばい奴じゃないですかヤダー!」
「絶対に命令者の命令を受け付けなくなって暴走するパターンだな。
 最後の1体まで追い詰めて潰さない限り止まらなくなる」
「なんで生産能力まで自律判断で行えるようにしているんですか(現場猫)」
「BETA……資源採掘……シリコニアン……うっ、頭が……」

 そう、この手の自己増殖能力や自己複製能力に自律判断能力をくっつけると、どうやってもやばいことになるのだ。
命令を聞くうちならばまだしも、止まらなくなると資源のある限り生産を続け、命令を愚直なまでに果たし続けようとする。
AIの気遣いや能力が高くなければ、あるいは命令者が曖昧な命令を下した場合、とんでもない解釈をしてでも続行されるのだ。
SFやそれに類する創作をちょっと手に取れば、これが如何に危険なのかはわかろうというものなのに。

「それで、一次対応は?」

 過去のトラウマを思い出してしまった夢幻会の茶番はそこそこに、神崎代表の元に会議は進む。

「今のところは現地戦力---MTとパワードスーツ兵を中核とする部隊でゲート周辺の防衛に努めています。
 最初に接敵するのはサンマグノリア共和国軍ということになりますね」
「あちらがこちらに借りを作ることを嫌ったのだったな」
「はい。まあ、日企連が活動を許されている範囲がサンマグノリア共和国領土の内部。
 サンマグノリア共和国軍は自国領土に入り込まれるのを嫌って国境沿いで迎撃するようなので、必然です」

62:弥次郎:2025/10/31(金) 23:37:57 HOST:sp1-75-75-127.smd03.spmode.ne.jp

 その結果は論じるまでもないだろう。
 相手は既存の兵器を想定し、徹底したメタを張っているのが判明しているのだ。
 無人ゆえに疲れることも死を恐れることもなく物量で襲い来る相手に、通常兵科だけの軍隊では勝てるはずがない。

「……一応警告くらいはしたんだよな?」
「それはまあ、はい。
 ただまあ、取り合ってくれないのが実情ですね」
「せめてヴァルト盟約同盟のようにフェルドレスがなければ厳しいでしょうにね」

 軍事系の上層部に名を連ねる面々は嘆息した。
 フェルドレス---星暦世界において誕生した、足の生えたMBTと呼ぶべき機動兵器。
攻撃を耐久するのではなく、その脚部による運動で前方投影面積を最小にしつつ回避し、同時に優位なポジションを確保することで火力でも優越する兵器。
そも、レギオンの個体はこのフェルドレスを無人化することによって開発されているようなものなのだ。
誘導兵器も通用するか分からない状況下ならば、最低限でも同じ兵科で同じ領域に飛び込んで戦うしかないだろう。
 しかも、相手は無人機だからこそ有人機ではできないような動きや選択ができるし、人が乗らない分性能を高めることができる。
激突する地形が平野部ということもあるならば、防衛三倍有利というのがあったとしてもその結果は目に見えるだろう。

「だとするならば、ゲート周辺の日企連駐留地域に押し寄せてくるのは時間の問題だな」
「防衛範囲が狭いこともあり、すでに派兵されている分で対応は可能でしょう。
 ただ、問題なのは---」
「新資源の回収の問題か……」

 誰もがそれに頭を悩ませる。
 ギアーデ帝国が異世界まで攻め込んでこれる可能性は極めて低い。それは安心材料だ。
 だが、あちらに展開ができなくなれば、星暦世界に存在する「新資源」---天然資源を筆頭とする各種資源の確保が難しくなるのだ。
ギアーデ帝国が勝ったならギアーデ帝国と商取引をすればいいと考えることもできるが、相手は日企連を名指しで宣戦布告してきた。
つまり、今後相手とまともに話し合いができるとは思えない。事実、戦争に突入するのを回避はできなかったわけであるし。

63:弥次郎:2025/10/31(金) 23:38:44 HOST:sp1-75-75-127.smd03.spmode.ne.jp

 つまるところ、日企連としては自己の安全を確保するならば容易いが、それで失うものがあまりにも大きいのだ。

「神崎代表、ここは介入をすべきでは?
 こちらは宣戦布告をされた側であり、やられっぱなしというのは沽券にかかわります」
「私も同意見です。新資源の確保は今後の戦略にも大きな影響を及ぼします。
 これまでに得られた程度では、まだ種火にしかできません」
「だが、介入していらぬ反感を買っても問題ではないか?」
「向こうの合意と協力がなければ、例えギアーデ帝国に勝利しても、その後の付き合いを拒否される恐れも……」
「財務部としては、何かコストをペイできる保証がなければどちらの案にも賛成しかねますね」
「うーん、それは確かに……」

 望む結果を得るためには、針の穴に糸を通すような精密で繊細な選択と行動が必要というのはわかる。
 だが、穏当路線をとってもなお宣戦布告されたことからわかるように、こちらの判断と行動が相手にどう映るかのエミュレートが難しいのだ。
下手に手出しを避ければ締め出され、介入しすぎたらそれはそれで警戒されてしまう。

「うまく介入……いえ、何か我々の力が必要とされる状況になれば……?」
「そんな都合がいい状態になるとも限らないのでは?他国ならばともかく、異世界の相手に頼る状況に陥るのはよほどのことがないとありえない」
「それは、そうだけれども……」
「そんなことを選ぶ国がいるわけがないだろうな。
 国家というのは、いや、支配者というのはそういうものだ。最後のその瞬間まで決して自らの権力を手放すことを選ばない。
 まして、他人に委ねるなんてことはあり得ない。死んでもしがみつくものだ」

 諦めたくはないのが夢幻会の意思、コンセンサスであるのは事実。
 けれども、いくら望んでも得られないものは得られないのだ。
 かくなる上は、対立も前提で踏み込むしかないのでは---そんな空気が漂い始めていた。

「各員、あちらで動きがありました。
 最新の情報です、閲覧を」

 その時、駆け込んできた連絡員がモニターに新情報を表示する。
 内容としてはシンプル。
 国境沿いでレギオンと会敵したサンマグノリア共和国軍が文字通り全滅したこと。
 他国でも同様に通常兵力を擁する軍がかなりの打撃を被ったこと。
 ギアーデ帝国領内において、革命勢力が蜂起したこと。
 レギオンについての新たな情報と弱点が明らかになったこと。

「以上となります。
 最後の通信は、どうやらレギオンの個体による電波妨害と地価の通信ケーブルの破壊により途中で途絶えました。
 また、通信衛星などもどうやら破壊を受けたようです。これもギアーデ帝国によるものと推測されます」
「……やはり強いな」
「ああ。新兵器を投入、各国に同時に奇襲を仕掛け、おまけに通信インフラも寸断する。
 これによって各国は連携をとれないままにレギオンと単独で戦うことを強いられる。まともに抵抗できるのは限られるでしょう」

64:弥次郎:2025/10/31(金) 23:39:22 HOST:sp1-75-75-127.smd03.spmode.ne.jp

 軍事に理解のある面々が苦い顔をするほどに、ギアーデ帝国のやり方は徹底していた。
 有意な状況を作り、それを固定化し、近現代の軍に必須な情報の共有を分断することで連携すらさせない。
 しかも、如何にレギオンを撃退しようが、それはあくまでも数いる無人機のいくつかを破壊したに過ぎない。
人的損耗は全くの0であり、後々に後詰で来るであろうギアーデ帝国軍本隊にダメージを与えたことにはならないのだ。
 まさに悪霊の進撃。打ち払っても打ち払っても、それは空を掻くようなものでしかない。

 しかし、それ以上に気になったのが、革命がギアーデ帝国の内部で勃発したということだ。
 そも、ギアーデ帝国は徹底した階級社会であり、愚民化政策と分断統治による国内の統制を行う国であり、現代国家にあるまじき知の独占のある国だ。
知を独占しているのは、貴族やそれに連なる一族、あるいは皇帝とその周辺なのだという。
つまり、革命を起こしたのは貴族ということであり、現状の体制を打破すべく動いたということに他ならない。
革命というよりも内乱や帝国分裂の危機。しかも、昨日今日に始まったことではないだろう。

「……」

 喧々諤々の議論の中にあって、神崎は黙考していた。
 戦争、革命、騒乱---まさに星暦世界の国々はその本流の中にある。
 つまり、常識や事情というのは日夜更新されるわけであり、誰も彼もが寄る辺などを求める状況下ということ。

「神崎さん……?」
「辻堂さん、これはいけるかもしれませんね」

 長い付き合いの二人だ。言わんとすることを辻堂は理解できた。
 いきなり正規軍が大打撃を受けて困窮しているサンマグノリア共和国。
 革命騒動が起こって外征を仕掛けながらも、同時に内乱で割れているギアーデ帝国。
 荒れている環境に敢えて飛び込んでこそ、得られるものがあるのではないかと、神崎はそう言っているのだ。

「ですが、それは……」
「リスクは承知です。
 ですが、人間あるいは国家とは、追い詰められるとなんにでも飛びつくものですよ」

 例えば、と神崎の視線は最初に接敵した正規軍が文字通り全滅した情報に向けられる。

「正規軍がいきなり大敗北。そうなれば国土や資産は蹂躙される。
 普通の国家であるならば、それに付随して何が起こるか分かりますね?」
「……責任問題ですね」
「ええ。まして、敗北が続いている最中において、最高意思決定の段階で現実なるものは認識されない。
 求められるのは刹那的な勝利や高揚などであり、政治的・心理的効果を優先した決定や決断が支持されてしまう。
 それらはすべて、責任回避のために」

 だから、と神崎は薄く微笑んで言う。

「逃げ場を用意してあげましょう。それもとびっきりの、全てを明け渡してもいいと思えるほどの逃げ場を。
 そして甘美な勝利の美酒の味を楽しませてあげましょう」

 その言葉は、その意志は、パックス・エコノミカを担う企業の長に相応しい、とてもとても恐ろしい色をたたえていた。

65:弥次郎:2025/10/31(金) 23:40:03 HOST:sp1-75-75-127.smd03.spmode.ne.jp

以上、wiki転載はご自由に。

負けると馬鹿になる、というのは過去の時代からさんざん言われてきたことです。
そうして取りざたされるのが責任というもの。
サンマグノリア共和国のやったことって、責任回避や現実逃避の手法の一つなのですね。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 日本大陸×版権
  • 大陸版日企連×86
  • 86-エイティシックス-
  • アーマードコア
  • ACfA
最終更新:2026年02月24日 16:14