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794 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/12/16(火) 21:19:49 ID:sp49-109-142-185.tck02.spmode.ne.jp [4/6]

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」外伝「クリミア・ブラッドレイン」


「---ここに至ってアルビオンはようやく戦争を知ったのだ」

  • クリミア戦争についての報告書において、クリミア半島に派遣された陸軍将官の記述。



「手足を失う程度は軽傷扱いだった。
 婦長が治してくれるからじゃない、ひき肉になって死んでいるケースが多すぎたからだ」

  • クリミア戦争に従軍した陸軍兵士の日記より。



「とても怖かった。
 恐怖で顔をゆがめて号令と共に突っ込んでくる兵士たちが。
 そして、そんな兵士を次々と撃ち殺す自分が」

  • ロシア陸軍の重機関銃手の証言。


「クリミアで散ったすべての兵士に、神の恩寵があらんことを」

  • クリミア戦争後にレコード盤に録音された、フローレンス・“ドクトレス”・ナイチンゲールの肉声より。


 戦争序盤は、おおよその予想の通りアルビオンの優位に始まった。
 セバストポリ要塞が航空艦による砲撃と強行着陸からの歩兵投入により攻略され、
制海権と制空権を握ったアルビオンが陸軍戦力を含めてクリミア半島に続々と上陸を果たしたのである。
上陸からしばらくして、赤痢やコレラで兵士たちが次々と倒れてしまったのだが、そちらは想定の範囲内であった。
 問題は、黒海を通る兵站線の構築やセバストポリ要塞を利用した拠点の設営を完了し、意気揚々と北方への進撃を開始した後にあった。
ロシア軍は、予めかなりの人員を動員して何重にも塹壕---それも航空攻撃に耐えうる地下要塞を備えたもの---を揃えていたのだ。
どうやってもアルビオン陸軍の進撃ルートは限られるわけで、そこで待ち受けておけばよかった。それ故に準備は入念に行えていた。
ろくに抵抗しないままに撤収していくロシア軍を追いかけ、アルビオン陸軍は空軍の支援の下に前進。この塹壕に突き当たった。
ドクトリンに則って航空艦による攻撃を受けて沈黙したと思われるそこへと陸軍歩兵は突き進み---見事に塹壕戦の洗礼を浴びた。

 だが、アルビオンは当初この塹壕(と地下要塞)に籠っているロシア陸軍を軽視していた。
 航空艦による砲爆撃の威力は通用するだろうし、仮に陸軍が攻略できなくとも航空艦が後方に浸透して破壊して回ればいいのだと考えていた。
実際、それはリ・レコンギスタで実証されている、アルビオンにおける伝統的な戦術だったのだ。どうやっても陸軍では後方に回り込む航空艦を阻止しえない。
フリーハンドの航空艦が後方にある拠点や陣地や物資の集積所を叩けば、どうやっても前線に張り付いている陸軍は孤立して降伏するしかない。
前線にいればどんどん物資を消費するが、後方からそれが届かなくては戦闘どころではなくなるのだから。
そんなわけで、アルビオン陸軍は歩兵が思ったよりも死んだとは思いつつも、空軍に大人しくバトンを渡して前線を消耗させることに注力し始めた。

795 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/12/16(火) 21:22:35 ID:sp49-109-142-185.tck02.spmode.ne.jp [5/6]

 空軍も心得たもので、戦力を分割して後方攪乱へと投入を開始した。
 しかし、そこで発生したのが、まさかのフリゲート艦「ロイヤル・サブリン」の撃沈である。
航空機という、ケイバーライトに依存することなく空を飛ぶことができる兵器が投入され、無敵のはずの航空艦を大地へと叩き落した。
後方へと浸透していた他の艦艇も続くように次々と襲撃を受け、被害は加速度的に積み重なっていくことになった。

 そして、航空機による攻撃は当然のように前線にも襲ってきた。航空艦は航空機の浸透を阻止しえず、無防備な対地攻撃を受ける羽目になったのだ。
機銃や爆弾や手榴弾、あるいは岩石やカルトロップや汚物爆弾などなど、手を変え品を変えロシア陸軍航空隊は塹壕で足止めされているアルビオンを殴り、
苦しめ、幾多の人間を殺すことによって、これまではアルビオンが独占していた航空攻撃というお株を奪われたのだ。
 アルビオン側の被害は甚大だった。何しろ、航空攻撃を受けることを考えたことがなかったのだ。
無理もない話だ。何しろ他国にケイバーライトは存在せず、然るに航空艦は存在しない。ならば航空攻撃に備えるのは無駄である。
だからそれがどれだけ恐ろしいことになるかを、まるで理解できていなかったのだ。

 ならばと陸軍も攻勢に出ようとしたのだが、塹壕を張り巡らせた縦深の深い防衛線に阻まれた。
 逆に足止めをされている間に航空攻撃を受けて次々と兵士が掃討されてしまい、あるいは後方への浸透を許して嫌がらせを受ける羽目になった。
ここにきてアルビオンはようやくロシア側の狙いを察したのだが、これをやめるわけにはいかないことにも気が付いた。
前に出るのは危険だが、後方に下がったところでロシア帝国陸軍が前進してくるのは目に見えている。
かといってここに拘泥をしても、航空機による攻撃にさらされ続け、時間と資源をひたすらに消費する羽目になる。
しかも航空艦からの砲爆撃を受けても、陣地に籠っているロシア帝国陸軍は健在なわけで、結局アルビオンは同じように塹壕を掘り、
相手が攻勢に出ないようにちょっかいを仕掛け、犠牲を積み重ねていくことを強制されてしまう。

 そう、アルビオンはまんまとクリミア半島という泥沼に引きずり込まれ、出血を強いられていたのだ。
 この泥沼による地獄の消耗戦は、アルビオンの当初の予定を簡単に超え、1年以上の長い期間にわたって繰り広げられることとなった。
 戦場に正気など存在せず、ただひたすらに命をささげる。湯水のように血を流し、その先に勝利があると信じ込んで。

796 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2025/12/16(火) 21:23:16 ID:sp49-109-142-185.tck02.spmode.ne.jp [6/6]

以上、wiki転載はご自由に。

ということでクリミア半島での地獄の消耗戦の様子を……
なまじ相手の狙いを理解できてしまったので身動きが取れなくなりました。
あと2,3話続く予定です。
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最終更新:2026年06月01日 18:02