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205:戦車の人:2025/10/19(日) 20:16:38 HOST:110-130-196-35.rev.home.ne.jp

「政府と軍はまた10万単位の帰還兵に社会支援プログラムを構築し、その予算は2000億円を超えるとされている」
「既に帰還兵の大多数が民間で再就職し問題は解決されているのに、これ以上の追加予算が必要なのだろうか」
「寧ろ一般失業者への就労支援に充当するべきだ、国からすれば端金でも余りに生産性がない」

紛争終結から2年ほどして経済誌に掲載されたある雇用アナリストの記事より抜粋。
確かに当時帰還兵の大多数は民間企業や自治体などで再就職を果たしたが、謂れなき偏見により不当待遇に苦しんでいた。
パワハラやモラハラ等により寛解したはずのPTSDが再発した帰還兵も多く、帰還兵家族親族から批判も強かった。


「この度の帰還兵支援プログラムの追加予算は全て、オンライン上で1円に至るまで用途を公開しています」
「仮にこの予算はどうなのかという疑問がございましたらネット経由でも、疑問点をお尋ね下さい。きちんと説明義務を果たします」
「戦争に限らずPTSDというのはとても重たい心の病であり、同時に誰でも罹患するリスクがあります。その点もご理解お願い致します」

国防省(夢幻会)としては用途を考えず数字のみあげつらう事が得意なアナリストなど、平時なら無視するところであった。
しかしあの紛争に選抜徴兵や予備士官過程を経て従軍した、元は市民の予備役兵にして帰還兵達。
彼らの社会復帰支援及び名誉の弁護を怠れば、軍そのものが立ち行かなくなるリスクを理解し、オンラインで動画も含め意思表示を行った。


「君さあ…公立大卒業の後に予備士官?中の上の大卒で人殺しだけ得意な26歳とかこっちでも困るんだわ」
「ほう、特殊車両などの資格も…何だ帰還兵か、却下だ。社内で乱射事件とか冗談じゃないよ」
「そもそも選抜徴兵なんて罰ゲームに引っかからないような努力を自己責任でやってるんだよ?他の面接者は」

元帰還兵が再就職の過程で面接で投げかけられた多くの、人格と名誉を否定するかのような各企業の人事担当者の発言。
面接に赴く帰還兵も自分たちへの白眼視は理解し、ビジネススーツでも分かりにくいピンマイク等で暴言の数々を記録していた。
それらは軍の帰還兵再就職支援部門、そして厚労省双方に提出され、言い逃れが出来ない証拠として保存されることになる。


「はい憲兵隊です。皆さん手を上げて端末や書類から離れて下さい」「労基です、これより軍と合同で聞き取り調査を行います」
「な…何の権限があって!うちは納税から勤怠管理まで法を破った覚えは…!」
「それはこちらが判断します、まあ落ち着いて下さい」「よくまあ労働法も憲法も無視したあんな事出来ましたね?」

最終的に降り積もった人権侵害の証拠を前に、政府は厚労省だけではなく憲兵隊出動さえ行い該当事業所の調査を実施。
多くの人事担当者や経営者が名誉毀損、侮辱罪等の罪状により国軍と厚労省双方から刑事告訴を受けることになる。
悪質な企業の中でも特に事業所規模の大きなところから、一罰百戒の意も込めて実施され、逮捕者は相当数に登っている。

206:戦車の人:2025/10/19(日) 20:19:55 HOST:110-130-196-35.rev.home.ne.jp
「長く平和が続いた大国が久しぶりに戦争を経験すれば悪影響が出る、それは予想していた。手も打ったつもりだったが…」
「流石に民間企業、市民レベルで民意がこれほど悪意を剥き出しにするのは、負け戦でもないのに想定外でした」
「あり得ないとは思わなかったが、流石に民度がマーベルレベルまで悪化するとは。方向性を強引にでも変えるべきです」
「軍としても兵役経験者、実戦経験者が粗雑に扱われると看做されるのは憂慮しています。最悪ベトナム戦争後のアメリカです」

史実の就職氷河期のモラル崩壊やベトナム戦争帰還兵への扱いを熟知していた夢幻会も無策ではなかった。
ただ今回自分たちが担当することとなった日本大陸世界が平和で豊かながら、マーベルに近いレベルで低い民度を発揮してしまった。
それはなまじ過去数十年、政治及び経済政策がきちんと機能し、軍も平時の存在として敬われていたからこそ予想外だった。


「お前…どれくらいお祈りメール食らった?」「100件から先は数えていない」
「面接で酷いことは言われなくなったし賠償金原資の一時金も貰ったけど…」「俺達が嫌われてるのには変わりないよな」
「何でだろうな、ただみんなを守るためと思って出征しただけなのに」

人格否定や名誉毀損に等しい「圧迫面接」を行った企業は、その過半数が軍と厚労省により刑事告発を受けることになった。
それにより帰還兵を相手とした面接であっても、人事担当者は概ね無礼な態度を改めたが、求人倍率の改善には至らなかった。
法的に問題のない面接の結果としての不採用までは、民業弾圧となり介入できなかった。故に帰還兵の大多数は非正規雇用に甘んじることになる。


「雇用アナリスト◯◯氏、家族より行方不明として捜索願を出され一週間。未だに捜査は進展せず」
「当人の私物や財産は一切手を付けられず、家族も気づかない間の誘拐であると警察は判断。捜査本部を設立」
「所轄警察署及び周辺警察署から応援を派遣し、200名規模の捜査活動を行う模様である」

上の帰還兵の支援など無駄と提唱した雇用アナリストがSNSで更に過激な発言をして数日、彼は姿を消してしまった。
一切の私物に手を触れられず家族も気づかず、加入していた民間警備会社の各種システムも異常を検出できなかった。
これほど手際の良い拉致は軍以外出来ないと国防省は詰られたが、事実無根と反論しつつ、誰だよ暴発したのは…と頭を抱えている。


以上。なまじ平和で堅調な好景気の中で軍との付き合い方を忘れ、マーベルレベルで軍へ塩対応となってしまった一般市民。
それに対し合法的な立入検査と立件で対抗する軍と厚労省、それでも再就職に苦労する帰還兵という構図でした。
まあ…いらっしゃるんですよ、激甚災害や不況の問題はもう終わった。さっさと予算を生産性の高いものへという人。現実にも。
さて彼がどうなったことやら。

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最終更新:2026年06月04日 23:10