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憂鬱スパロボ
Fルート 未来編
東方からの使者、或いは地獄への片道切符
ベルント・バルツァーは一介の軍人である。出自や立場は別としても基本的には生まれ育ち仕官した国家
であるヴァイセン王国に忠実な軍人と言えた。そんな自身の過去を現実逃避として思い出させるほどに
目の前の光景は彼の精神には宜しくない影響を与えてると言えた。そうした緊張を軍より命令されて
赴任先となっているバーゼルラントの王族、アウグストや士官学校の生徒達も感じているのかやや緊張
気味と言えた。
「成る程、歴史を感じる趣ある校舎ですな…教養を育むには良い環境でしょう。」
そんな、冗談とも本気とも取れない言葉を口にしている存在こそ、この騒動を引き起こしている元凶と
言えた。数日前、ヴァイセン王国経由で極東の軍人がこのバーゼルラントを訪れるという事は予め
連絡されていたが、その方法と言うのが問題であった。飛行船、それも欧州の覇権国家アルビオンの
飛行戦艦すら優に超えるそれを態々3隻もヴァイセン上空を通過させてバーゼルラントへと係留させたと
いう行為はコレが単なる表敬訪問ではない事を如実に示していた。
しかし、それとは裏腹にその仰々しい船体から降りて来たのは、自分が教えている生徒達より一見すれば
幼そうにも見える少女たちを中心とした集団だった。一瞬、気が抜けたバルツァーであったがすぐに
身体が強張る程の威圧を浴びる事になる。先頭に立つ少女はその身長以上に強い圧を放っており、
胸に付けられた複数の勲章の存在が彼女を異質な物として見せていた。
雰囲気に気圧されながらも飛行船が留まっている地点から馬車に乗って、士官学校まで案内をした所で
先ほどの言葉である。場の状況としては完全に主導権を握られている状況であったが、その中で意を
決して言葉を発したのはこの国のトップの一人であるアウグストであった。
「それで?新進気鋭の大国が何の用で、このような物々しい戦力を連れて来た?」
「失礼、本来なら開設されたばかりの鉄道を使いたかったのですが、ヴァイセンが中々首を縦に振って
頂けなかったもので…私はこの部隊の代表を務めるターニャ・フォン・デグレチャフ中将と申します。」
「…それだけでこの騒動をそれほどまでに何を求めて?」
「歴史を見に…」
「何を言っている?」
その言葉と共に一瞬、ターニャの首元に掛けられている首飾りが一瞬輝いたのをバルツァーは見ていたが、
危険性があれば隣の家屋から様子を伺っている情報部の二人は動いて居ない事から危険はない事は
理解できた。
「先のヴァイセンとホルベックの戦争、近くから拝見しておりました。バルツァー少佐とあなた方の戦いね。」
「ほう、あの時の事を…我々の窮地を知って居ながら見過ごして居たと?」
「正式な参戦では無く、ヴァイセンにも歩兵数名と言う少数でしたもので…」
若干の怒りを滲ませるアウグストに対して、その怒りを気にする素振りも無くターニャは出された飲み物に
口を付けながら会話を続ける。その口ぶりは若干嬉しそうな様子まで滲ませている。
「あの戦い、ホルベックの歴戦の騎兵隊を殲滅して見せたその動き、軍事後進国のヴァイセンに見る物は
無いと思っていた自分を恥じました。」
「!」
「ほう、その言い草…まるで自分たちの方が優れている様に聞こえるが?」
見逃せない言葉を聞いたバルツァーは思わず、声を挙げようとしたがそれを制して先に疑問を呈したのは
アウグストであった。アルビオンには劣るが、それでも中欧に於いては上位に位置する軍事大国である
ヴァイセンを後進国呼ばわりと言うのは欧州に住まう物としては聞き逃せない発言であったためである。
それを聞いたデグレチャフを少し考え込んだと立ち上がると扉へと向かったかと思うと振り返った、
先ほどまでのある意味では張り付けた様な笑顔と違い、その顔には狂気的な笑みが浮かんでいる。
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「では、証明しましょう。我々の力を」
その言葉に促される様に、連れ立って校舎を出ると射撃彼女達は真直ぐと校舎の射撃場へと足を運んだ
上空から地形を把握されるという事の厄介さを痛感しつつも彼等の元に付いて行くと、既に彼女の
部下がスタンバイしていた。その手元にはライフルと言うには余りにも重そうな火器であった、
テキパキと装備を組み立てると弾薬を接続した。目標にしていたのは彼等が持ってきたのか
ホルベックの騎兵隊等で使われる鎧やバーゼルラントで使用される馬車等である。
「これこそ、我が国の技術の一端です。」
その言葉から先を彼等は聞き取れなかった。正確にはかき消されたと言っていい。そう言えるほどの騒音
と共に発射される弾丸の嵐は、標的として置かれていた鎧や馬車を瞬時に砕き尽し、後方の土塁まで
大量の弾痕を産み出した。
「少々、骨董品では有りますが、
アジアでは良く使われる7㎜規格の重機関銃です。」
「アジアでは良く使われている?」
「はい、火力支援を行うための火器としてね…」
「…」
その言葉に今度こそ、彼等が沈黙するしか無かった。ヴァイセンすら導入には懐疑的なそれをより高度に
且つ装備数を見れば多数の其れが傍に置いたコンテナには置かれいた。
「中央アジアにてオスマンや正統ローマにて怪しい動きがあります。」
「いずれ戦火は欧州に及ぶでしょう。或いは…此方で付いた火が向こうへと飛び火するかもしれない。
その時、この国はその渦中へと放り込まれるでしょう。歴史の分岐点であなた方がどう動くかに興味が
あります。我々としても多少の支援を行わせて頂きましょう。」
その姿はまるで悪魔との契約の様であったと後にバルツァーは回述している。飛行船から降ろされた
複数の高射砲や機関銃は多量の弾薬と共に士官学校の倉庫へとしまい込まれた。見たくない物を
しまい込んだとも言えるが、現状ノウハウも何もない以上、迂闊に使える物では無かったのである。
「我々は去りますが、部下を数名置いて行きます。正式な国交を結べていない以上、あくまでも大使の
様な物と言えますが…」
「使いこなせない武装だけ貰っても、此方としても持て余すだけだ。管理者は必要だろう。」
「何れ、正式な国交を結ばせて頂きますそれでは…」
その言葉と共にターニャは飛行船へと乗り込むと、飛行船は高度を上げて行った。艦が上昇する中、
ターニャは艦の指揮所へと到着した。
「中将殿、首尾は如何でしたか?」
「上々だ。コレで向こうも此方に興味を持つだろう。」
「起き得る大戦への足掛かりとは、上層部も無茶をおっしゃる。」
「戦乱の中でしか顔を出さない存在も多い、人的資源の無駄な消費には変わりないがな…」
既に夕闇に包まれ始めたバーゼルラントの地上の様子を見ながら航空船団は一路ライヒ拠点へと向けて
帰路に就いた。間もなく、バーゼルラントの政変から始まる大規模な戦乱は中央アジアにおける
西進と共に世界大戦の足音は確実に迫ってくることとなった。
892:ナイ神父Mk-2:2025/12/29(月) 01:47:16 HOST:p939189-ipxg03101akita.akita.ocn.ne.jp
以上です。WIKIへの転載は自由です。取り敢えずバーゼルラント組とライヒとの繋がり作りの一部をば…
最終更新:2026年06月11日 14:45