アットウィキロゴ
219奥羽人:2025/12/21(日) 17:33:26 HOST:sp49-109-146-244.tck02.spmode.ne.jp
近似世界【南方開拓】

17世紀末、明清戦争と欧州の大同盟戦争、そしてインド洋・中東・アフリカ地域への進出が一段落した幕政日本……夢幻会は、新たに発見した南方大陸(オーストラリア)の開拓に着手した。
主な理由としては、経済的なものが挙げられる。

当時の日本には、国外との交易によって莫大な外貨が流入していた。
それに伴って国庫収入も増加しており、国内の過剰なインフレを抑える為に、外側に資金の“投射先”を求めたのが一番の目的だった。
また、海路を介した国際交易や国内経済の発展に伴い金融経済の急速拡大が起こったことで、実体経済とのバランスを取る為の、いわば工業力のプール先としての未開拓地が求められた事もひとつの要因である。

国際交易においても、高い技術力を持つ上に大抵の資源を自給できる日本の場合、その貿易額は大抵の場合黒字……つまりは貿易赤字を相手国に押し付ける形となっているのが常だった。
富の偏在は戦争をもたらす。
そのように理解していた夢幻会は、世界情勢安定の為に、開拓に伴う資材・人材の調達を利用して、貿易不均衡の是正を行いたいという目論見もあったのだ。

そうして南方大陸へと到達した開拓者達の前に広がっていたのは、自然に囲まれる雄大な大地。
しかしそれは、厳しい気候の上に危ういバランスで存在している自然であり、無軌道な開発があらば容易く砂漠化してしまうものでしかない。
この事から大陸の開発指針は、第一に緑化を進めて居住可能環境を安定させ、第二に環境とのバランスを取りながら入植・定住を進めるというものになった。


(ここからは便宜上史実の地名を使用する)

220奥羽人:2025/12/21(日) 17:34:50 HOST:sp49-109-146-244.tck02.spmode.ne.jp
1690年代末から1700年代初頭、ダーウィン、ブリスベン、メルボルン、パースに上陸した開拓隊は、早速港湾の造成と周辺地域の測量に着手する。
同時に、アボリジニ諸部族との交流を持ち、彼らの活動範囲をマッピング。
これからの開発に当たってトラブルが起こらない範囲の策定を開始。
開拓自治州政府最初の指針として沿岸付近の生態系を安定化を掲げ、東海岸~タスマニアに至る連続森林帯の縦深増加、マレー・ダーリング盆地の湿地帯増強を目標として具体的なプランを練り始めた。

最初の動きとして各地の赤土をサンプリングし、粒度、硬度、乾燥の度合い、塩分の含有を確認する。
砂と粘土の中間にあるこの土は、水をためる力が弱く、風が吹けば容易に舞い上がる。故に植生の定着には向かない。
海岸沿いに小規模の実験区画を設け、その中で木枠で囲った土壌に水を少量ずつ与え、どれだけ保持できるかを試し、樹木の種子を小さな区画ごとに分けて埋めていく。
そうして芽が出たもの、腐ったもの、乾死したものを記録していく。

一通りの植生実験を終えた開拓隊は、1750年頃を目安として、半砂漠に対応可能な先駆植物や植林に用いる耐乾性樹種の利用を開始。
同時進行で複数の小河川に水路と小規模ダムを造成、季節河川を恒常河川化。
また、植林とセットにした貯水池の多数造成により安定した水資源利用を実現し、持続的な農耕、周辺の土壌の肥沃化を狙う。
特にダーリング川、マランビジー川等から砂利堆積を除去し、堰や小~中規模ダムを多数造成。激しい蒸発を防ぐため、部分的に狭い樹林帯で川を覆う。
東海岸連続森林帯の成長を確認した18世紀半ばより、東部のグレートディバイディング山脈から、内陸に向かう帯状植林を開始。
同山脈の谷状地や河川沿いを遡上し、複数並行する森林帯を形成することで、湿気を含む大気の内陸部到達が狙いだった。
地道な緑化は年を経るごとに徐々に成果をあげていき、海側の湿潤地帯と乾燥した内陸を繋ぐ200km単位の帯状森林帯が触手のように山間を浸透していくことになる。

緑化工程が内陸部へと進行するにつれ、土壌改良の工程が本格化した。
沿岸部の河川沿いでは、大量に採取された海藻が、日干しされ、砕かれ、赤土に混ぜられては水をかけられ、さらに乾燥地帯向けの堆肥と合わせて肥沃な土が作られ、内陸部へと輸送されていく。
また、緑化地域外縁部の高所には海から流入してくる少ない水蒸気を適切な位置で活用するために多数の露集塔(フォグキャッチャー)が建造され、大気中の水分を集めて周辺地域へと供給した。

同時期に北部のダーウィン周辺では、湿潤な熱帯気候の環境を利用して開拓活動を賄うための農業生産に着手。
また、将来的に内陸部へと水を流す為に北部フリンダーズ川を起点にした小規模な貯水池、人工河川などの造成を複数箇所で開始した。
この工事には後に、こっそり侵入したきた後に蹴散らされた英国人を活用しており、彼らを十分こき使った後で大金を握らせて本国に還すことで、新たな労働者の募集に成功している。

221奥羽人:2025/12/21(日) 17:35:56 HOST:sp49-109-146-244.tck02.spmode.ne.jp
大陸西部、パース周辺から着手された緑化活動は、主にグレートオーストラリア湾沿いにアデレードへの森林帯接続を目指す南部ルートと、北西オーストラリア、ガスコイン川流域への緑地拡大を目指す北部ルートの二本が策定された。
オーストラリア西部は正真正銘の乾燥地帯であり、海洋から来る気候風由来の水分の利用は困難である。
そこで利用されたのが、豊富に存在する地下水だった。
比較的浅層に存在する地下水脈沿いに井戸を掘り、そこを中心に植生の一次遷移を開始。
そのようにしてルート上に点々と整備された“グリーンスポット”を接続する形で環境を循環する水分量を牛歩の如く増加させていき、全体の環境改良を目指した。
もっとも、こうした地下水は自然流入/利用量から鑑みて減少していく一方であり、いずれは枯渇することが考えられる。しかし、枯渇までのタイムリミットの中で安定的な海水淡水化技術の確立することが可能と試算された為、計画実施が許可された。

1800年代に入り、蒸気機関を動力源とした重機、工作機械の大々的な利用が解禁されたことで、北部の水源南下計画が一気に進展を見せる。
史実におけるブラッドフィールドの計画を下地に、ビクトリア川流域やフリンダーズ川流域を起点に溜池や人工支流の南下が進む。
付随するように緑化帯の伸長も推し進めており、その前線は砂漠気候帯外縁部へと到達しようとしていた。

緑化前線がグレートアーテジアン盆地へと到達し始めると、そこに存在する莫大な深層帯水層の利用も開始される。
半乾燥帯の地下水に特有な強い塩分濃度に対応する為に乾塩性植物が一次遷移植生として導入され、緑化の前途を繋げることとなる。
また、ここまで来ると問題になってくるのが人間の生活用水であり、河川流域から送水パイプを延伸するのも一朝一夕で出来ることではない。
しかし、そこで簡単に諦める人類ではなく、数々の初歩的な塩水淡水化技術やインフラ技術が試行錯誤され、これらは後の時代を形作る雛型の技術となっていった。
むしろ、この時代に進展した土木技術は物流分野での革命を牽引し、大規模輸送網の構築によってそれまでより遥かに物の移動が容易となったことで、後の開拓活動の進展の布石となる。

19世紀も半ばになってくると、電力需要の増加に伴って火力発電所の運用体制も成熟してきたことにより、同じく膨大な熱量を必要とする多段フラッシュ型淡水化プラントの稼働が本格化。
プラントで製造された真水は、ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、ノーザンテリトリーの沿岸部からグレートアーテジアン盆地内部へと伸びる複数のパイプラインによって送水され、水の蒸発に伴う塩害が発生した土地を洗い流し、新たな植生の為の水源となる等として利用されていった。
また、西部でも送水技術の進歩にともなってカーネギー・ウェルズ湖方面への緑化拡大を開始。
北部からも内陸部の中小乾湖への水路接続を企図した工事が急ピッチで進められていた。

222奥羽人:2025/12/21(日) 17:37:44 HOST:sp49-109-146-244.tck02.spmode.ne.jp
従来の緑化地域でも淡水の利用可能量が増加した為、低木や草原地域での高木植樹活動……つまり、日本人が真っ先に想像する「森林」そのものを拡大する計画に着手。
耐乾性、耐塩性を有し荒地でも育つ一部の低木、草類と異なり、ほとんどの樹木はある程度の土地の肥沃さを必要とする。植物が成長し、枯死し、分解され大地に還り、それが新たな植物の養分となる。この一連のサイクルは定着させる事こそが一番の難問。
そこでバイオ炭等を利用した次世代の土壌改良材を投入し、土壌肥沃度の向上が推し進められた。
これは、段々と増加してきている食料需要への対応も視野に入れ始めたという理由もあった。しかし、現在の緑化活動は沿岸部から内陸へ連続する緑化帯の全体が相互作用して維持されている代物であり、だからこそ安易な農地・放牧地化は全体のバランスを崩す危険性がある。
この問題は現代まで続いており、その時代々々において様々な分野の学者達が計算を行い、適正な農地化を進めることでバランスを保っている。

こうした地道な活動によって徐々に緑化地域を拡大。この地道な動きは20世紀初頭に次世代型淡水化技術と原子力発電が実用化されるまで継続する。

223奥羽人:2025/12/21(日) 17:39:57 HOST:sp49-109-146-244.tck02.spmode.ne.jp
以上となります。転載大丈夫です。
赤字を垂れ流す公共事業ですが、赤字を垂れ流すことが目的なので無問題。
近似世界の話ですが、日蘭世界でも多分似たような感じにやっているのではないでしょうか。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2026年06月24日 23:14