- 234:モントゴメリー:2026/03/08(日) 00:38:36 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
- 日蘭世界SS——Les Larmes de la Pucelle(乙女の涙)——
———フランス連邦共和国(FFR)、パリ7区サン=ドミニク通り14番地「ブリエンヌ館」
フランス連邦共和国の国防参謀総長たるアナイス・ベルナルドは執務室にいた。
アナイスは『御守り』を手に取りフタを開ける。そしておもむろに『御守り』を傾け中の液体をグラスに注ぎ始めた。
注がれた液体は無色透明で一見すると水である。
しかし、あのアナイスが『御守り』にただの水を入れるであろうか?いや、入れはしない(反語表現)
アナイスはグラスを手に取り香りを楽しむ。
鼻腔に広がるのはハチミツのような優しさと、干したデーツのような爽やかさを併せ持った甘い香りだ。
「まさに太陽で温められた果実の甘さね」
アナイスはそうつぶやいた後、グラスを傾ける。
舌に触れた瞬間は柔らかい。果実感にあふれた甘みが口の中に広がっていく。
次に感じるのはナツメヤシが生み出すコクと軽い酸味である。
そして喉を落ちる頃には火のような熱を感じ、腹の奥は砂漠の太陽が入り込んだかのように熱くなる。
残る後味はキャラメルのようなほのかな苦味である。
「なるほど、『砂漠で生み出された酒』に相応しい味わいね」
ドライフルーツのような残り香りと共に余韻を楽しんでいるアナイスに対して、真冬のピレネー山脈の如き冷気をまとったツッコミが入る。
『閣下、何をしていらっしゃるのですか?』
アナイスの秘書官であるクロエは間髪入れずに追撃する。
『それは私のために購入していただいた“乙女の涙”ではないですか。何故閣下ご自身で飲まれているのですか?』
しかしこの程度の打撃で破られるほどアナイスの面の皮の装甲は薄くない。
「“品質検査”よ、大事な貴方の燃料として使うのだからしっかり確認しないとね♪」
クロエの方も既に学習しているので、不毛な“第二撃”は行わなかった。
『それで“検査”の結果はいかがですか?』
「“文句なし”ね。一言で言えばラム酒より軽いけれどブランデーよりも野性味を持った味わいね。
サハラ砂漠の太陽と我が祖国の技術と歴史の結晶と言っていいわ。この“乙女の涙”は」
「Les Larmes de la Pucelle(乙女の涙)」、それはFFRが生み出した蒸留酒である。
原料には「La Veine Verte(緑の血管)」から収穫されたナツメヤシの実、デーツが用いられている。
緑の血管から収穫されるデーツは年間およそ「30万トン」である。その内20%、約6万トンを乙女の涙の原料として使用する。
デーツ1㎏からは約0.35kgのエタノールが採取できる。乙女の涙のアルコール度数は約40%であるため「約1.1リットル」を生産できる。
すなわち合計で「約6600万リットル」となる。
これはジャマイカ1国で生産されるラム酒とほぼ同等であり、一般的な750ミリリットル瓶に換算すると「約8800万本」となる。
この膨大な量の蒸留酒が緑の血管中の33か所の蒸留所(平均200㎞につき1か所)で生産されているのだ。
そして、乙女の涙は開発当初よりクロエ達ラ・ピュセル——「La Pucelle aux cheveux argentés」たちの燃料となることを想定した飲料である。
アルコール度数が40%とされたのもこれが理由だ(ラ・ピュセルたちは40%以上のアルコール飲料ならば燃料として使用できる)。
彼女たちの燃料タンクの容量は最大16リットルなので、仮に生産された全ての乙女の涙を燃料とした場合——
8800万/16=550万
「550万体」のラ・ピュセルに供給できる。消費量は運用状態により千差万別であるが、ここでは1日で使い切ると想定すると——
550万/365≒1万5000
「年間1万5000体」を稼働できる計算となる。
つまり、「乙女の涙」は単なる蒸留酒ではなく国家戦略物資でもあるのである。
- 235:モントゴメリー:2026/03/08(日) 00:42:23 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
- 以上です。
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- 約30万トンにおよぶ「緑の血管」産のデーツ、その活用方法でございます。
- ラ・ピュセルを発表した時から既に頭の中に光景は浮かんでいたのですが、文章化するのにここまで時間がかかってしまいました…。
6600万リットル、ジャマイカのラム酒生産量と同等と書きましたが、日本の焼酎生産量と比較すると「約13%」にしかならないという…。
最終更新:2026年07月26日 23:42