670 :名無しさん:2012/04/20(金) 17:59:11
チート日露同盟

1940年大英帝国首都ロンドン

「世界に冠たる大英帝国本土に東方の蛮族の侵略を許すとは。若いころには考えられなかったことだ。」
敵軍がロンドンを包囲しつつある報告を聞いて男は嘆息しながら言った。

スペインの無敵艦隊、フランスのナポレオンといった強敵すら退けた大英帝国が本土を侵攻されてひざを屈しようとしていた。

世界の海の支配者の落日を演出した国は大ロシア帝国。世界最大の領土を保有する大帝国である。

イギリスを盟主とするロンドン条約機構とロシアとの妥協で認められた軍備制限緩和の基準をオーバーして再軍備を進めるナチスドイツとこれを黙認したロンドン条約機構にロシアと同盟国である日本が宣戦布告して始まった第二次世界大戦はあっけないほどに日露同盟の有利に進んでいた。

すでに欧州本土はロシアの手に落ち、ダンケルク撤退の失敗で数多くの将兵を失い、バトル・オブ・ブリテンはロシア空軍の前に屈し、グランドフリートは、空と陸を重点に予算を振り分けられて同盟国である日本に抜かれたとはいえ世界4位の規模を誇るロシア海軍の前に歴史となった。

阻むもの無くなったロシア軍は欧州の権力者が夢見ながら果たしえなかった英本土上陸を成功させていた。おまけにアイルランドが北アイルランド奪還を目的にロシア側に参戦していた。
そしてロシアの犬である日本はアジア・太平洋の植民地を解放していた

だが男には絶望の文字は無かった。アメリカの力を借りてでも勝利する決意を大英帝国首相ウィンストン・チャーチルは、固めつつあった。まずは敗戦続きで低下していた国民の士気を維持するためにぎりぎりまで滞在していた首都ロンドンから無事に脱出しなければならなかった。
だが、暗号などかチャーチル脱出計画を知ったロシア軍によって捕縛任務を与えられたシモ・ヘイヘやスロ・コルッカなど人外を加えた特殊部隊の魔の手が迫っている事をまだ知らない。

671 :名無しさん:2012/04/20(金) 17:59:54
露西亜帝国帝都サンクトペテルブルク

「いつも見る面子だがどこと無く違和感を覚える情景だな。」

スターリンやベリヤら史実ではソ連の中枢部にいた面子がロシア帝国の忠実な臣下として仕えているのだ。史実を知るものなら違和感を覚えるのも当然だろう。

鈴木一郎というどこにでもいる平凡な青年だった男はローマの後継者として新たなるローマ帝国を生み出した偉大なる皇帝ニコライ2世としてロシアに君臨していた。

皇帝だけではない。英本土上陸成功を受けて召集された夢幻会首脳の集まりの場にいる皇帝の臣下はみな前世が日本人である転生者たちだった。

ロシア夢幻会の始まりはニコライ1世 のころだったといわれる。当時のロシア帝国の転生者は日本開国とそれに伴う友好関係の構築やアラスカ買収阻止のためのクリミア戦争阻止に動いていた。ロシアの転生者は夢幻会を結成し、ロシア帝国の近代化を進めていた。奇しくも日本にも同様の同じ名を持つ転生者組織「夢幻会」が結成された。その存在を認め合った二つの夢幻会は、手を携え日露同盟を結ぶ土壌になった。

ロシア夢幻会の指導下で入念な準備のもとで第一次世界大戦に備えたロシアは気がつけば戦勝国として領土を拡大させていた。大恐慌前はニコライ2世が国際連盟創設を主張したり、平和を唱えてロシア脅威論を打ち消しにかかっていた。疲弊したフランスやベルギーなどはドイツの賠償金取立てに忙しくロシアとの友好関係を維持していた。割を食ったのがドイツだった。ヴェルサイユ条約の軍備制限条項の抜け道を前世知識の反則で指摘して再軍備をじゃましたり、賠償金の削減の代価に優秀な人材を大量に引き抜いたりした。

それが変わるのは世界大恐慌がきっかけであり、欧州世界が疲弊するのにくらべてロシア帝国は影響を受けずに高い成長を記録して強大化していた。1936年に開催されたサンクトペテルブルクオリンピックはロシア帝国の勢威を世界に伝える場と化していた。

膨張していくロシアに周辺国家が危機感を抱かないはずが無くイギリス・フランスとした西欧の国家を中心に北欧・トルコそして再軍備を許されたナチスドイツが加盟した集団安全保障機構(ロンドン条約機構)ロシア帝国の抑制を目的にして結成された。

だが結果は超大国への道を歩むロシアをとめることは出来なかった。
「米国は大統領選挙の年であり、アメリカ国民の多くはモンロー主義を望んでいます。また欧州を短期間で屈服させたわが国の軍事力を見て介入論は低調です。ベルリンで発見されたロシア侵攻計画が公表された事でロシアより世論になっています。」

ロシア帝国を超大国にするためなら非人道的な手段すら辞さない魔王と恐れられるロシア帝国宰相スターリンの声が響く。某とある日本夢幻会は「辻よりも上の恐ろしい怪物がいた。あいつだけ史実のスターリンが転生しているじゃないか」と震えながらいったほどだ。

「しばらくは、アメリカの介入は無いと見るのが妥当だな。だが謎の事故によって露米開戦が起こる可能性もあるので注意せよ。それから翌日にやってくる近衛首相の歓迎式典はどうなってるのだ。」

いくつかの最重要議題を議論した後、ロシア夢幻会は退席していった。

「やれやれ、超大国ロシア帝国か。仕事が増えるだけでそんな名誉はいらないのに」
それがロシア帝国皇帝ニコライ2世の本音であった。

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最終更新:2012年04月26日 17:41