773:弥次郎:2026/02/11(水) 19:57:49 HOST:sp49-109-141-124.tck02.spmode.ne.jp
憂鬱プリプリ×エスコン プロローグ
「アイツか?
ああ、よく知っている。
話せば長くなる。
そう、古い話だ。
知っているか?エースは3つに分けられる。
強さを求めるヤツ、プライドに生きるヤツ、戦況が読めるヤツ。この3つだ。
ヤツは、確かにエースだった」
彼は「片羽の妖精」の異名を持つ傭兵。
私が追う、ある人物の元同僚。
10年前、二つの世界を巻き込んだ戦争があった。
オーシア・ベルカ戦争。
その空に軌跡を描き、歴史から消えた戦闘機パイロットがいた。
畏怖と敬意のはざまで生きた、一人の傭兵。
私は、彼を追っている。
そして、「片羽」の言葉で、物語の幕は上がる。
「あれは、雪の降る寒い日だった」
オーシア・ベルカ戦争には謎が多い。
終戦から10年以上が経過し、オーシアがあった地域にようやく安定の兆しが見えた現在、
ベルカ連邦からやっと一部の情報が開示された。
私はその資料をすぐに入手し、それでは足りずに出所不明な裏情報にも手を出した。
私がそこまで掻き立てられたのには理由がある。
この戦争の大本は、1970年代に発生した次元間連結現象にある。
当時ベルカは財政難の兆しがみられており、その打破をもくろみ、あらゆる分野に研究の手を伸ばした。
それこそ、疑似科学と呼ばれるような不確かなものにも縋りつくように。
そして、それは結果から言えばその中の一つが幸運をもたらした。
多次元から資源やエネルギーを得るという名目での、次元に関する研究だ。
その働きかけが、別な歴史をたどった世界との橋を作り上げたのだ。
他の世界の側から働きかけを行った国---インペリアル・ジャパンとはこの時に接触する。
774:弥次郎:2026/02/11(水) 19:58:55 HOST:sp49-109-141-124.tck02.spmode.ne.jp
この他の世界---並行世界との接触と交流を事実上独占したベルカは、財政難の立て直しに成功する。
交易のお陰もあるが、並行世界のそれを範とする、積極的な公共事業---宇宙進出・開拓事業への国を挙げた参入による成果だ。
元々ベルカ連邦からの独立の志向があった地域の独立を認め、それによって得た資金を、財政の立て直しに使いつつも宇宙進出に用いた。
挙国一致体制を示し、インペリアル・ジャパン側の信頼を勝ち取った彼らは、すさまじい勢いで惑星から飛び出していった。
熱エネルギーを重力制御に転換するエキゾチック物質「ケイバーライト」。
それを用いた抗重力・慣性制御機関「ケイバーライト機関」。
並行世界からもたらされたこれらが、ベルカを文字通り宇宙に連れて行ったのだ。
一方で、その流れに取り残されたのが、ベルカの隣の巨大国家「オーシア」。
瞬く間に国家財政を立て直して政治・経済・軍事の面において自国を追い抜いて行ったベルカに対し、
オーシアはそれを指をくわえて眺めるしかなかったことで、政権への不満が発生。
ベルカの躍進によって経済分野のリードも消失したために、それは経済的な不況にもつながる。
財政政策の見直し、資源地帯の売却、異世界との交易や交流の立案などかなりの策が打ち出されたものの、それらは悉く失敗。
その結果、オーシアでは恐慌が発生し、政権が交代。
躍進する隣国ベルカとの経済摩擦の発生を経て、極右政党が台頭する。
強く、世界に覇を唱えるオーシアを取り戻すため。
1995年3月25日。
前年に小惑星ユリシーズについての国際会議における独善的且つ独断的な態度故に、
他国に見切りを付けられていたオーシアは、突如として周辺国に宣戦を布告。侵攻を開始した。
オーシア・ベルカ戦争の幕開けである。
準備不足の各国はその奇襲と極右政党政権下で準備された膨大な軍事力の前に敗走。
開戦から数日の内にウスティオなどが陥落。包囲状態に置かれ国土の一部を失陥したベルカは、
伝統のベルカ空軍に加え、周辺国から脱出した各国の軍と外国人傭兵部隊とを合わせ、
大日本帝国との協力に反撃の望みを託した。
ここまでは、教科書にも載っている。
だが、資料に奇妙な類似点を見つけた。
一人の傭兵に関する記述と記録。
そこに残された「鬼」という暗号。
情報としては、不十分なものが多い。
だが、私はそこに惹かれた。
私はこの傭兵を通して、オーシア・ベルカ戦争を追いかけることにした。
その先には何かがある。この戦争の隠された姿か。ただの御伽噺か。
その傭兵に直接会うことはできなかった。
存在自体があやふやだ。
ただ「彼」と関わりのあった人物数人を突き止めることはできた。
「片羽」はその中の一人だ。
775:弥次郎:2026/02/11(水) 19:59:47 HOST:sp49-109-141-124.tck02.spmode.ne.jp
宣戦布告から数時間と経たず、オーシア軍はウスティオやサピンを蹂躙した。
見事なまでの奇襲。抵抗をさせることなく、一挙に主要目標を刈り取る斬首戦術はその大部分を成功させた。
だが、ウスティオなどが全くの抵抗できなかったといえば、そうではない。
戦前からオーシアと周辺国は政治的・軍事的な対立と緊張が増していた。
オーシアで極右政党が政権をとり、自国経済を回すために軍事拡張に走ったのは周知の事実。
故に、各国はオーシアを警戒していた。軍事偏重はやがて行き詰まり、その武力の矛先を求めることになると。
その為各国は、足りない戦力を少しでも補うために多くの傭兵を招聘、外国人部隊を編成していた。
正規軍の一部であり、フットワークの軽い彼らがいたことで、政府首班などが逃げ出す時間を稼ぐことができたのだ。
「片羽」と「彼」はこの外国人部隊で出会った。
ウスティオ共和国空軍第6航空師団第66飛行隊ガルム隊。
バレー空軍基地を拠点にする、傭兵たちを集めた部隊の一つ。
バレー空軍基地は、ウスティオでもベルカ寄りの山岳部に近い立地であったために、序盤の奇襲から逃れた。
その為に国外への脱出を図る政府首班や国民を乗せた輸送機が立ち寄り、あるいは奇襲を生き延びた部隊が集結していた。
国土失陥はもはや覆しようがないために、ベルカへと撤退して体制を立て直すことをウスティオは決定していた。
だが、その動きを見逃すオーシア軍ではない。
この基地の無力化およびそこにいる戦力の排除を以て、ウスティオ制圧を完了させようとしていた。
組織的な撤退を許せば、オーシアは長期戦に引きずり込まれるためだ。
ベルカも隣国ウスティオを救援すべく、動ける戦力を派遣してウスティオでの遅滞戦闘に参加。
よって、ウスティオからの撤退戦は当時の参戦国の戦力が激しくぶつかり合う、途方もない激戦となった。
そして、1995年4月2日。
しびれを切らしたオーシアは、ついに大量の爆撃機とその護衛機をバレー空軍基地に差し向けた。
そう、「片羽」と「彼」がエレメントを組み、初めて空を飛んだ日である。
776:弥次郎:2026/02/11(水) 20:00:30 HOST:sp49-109-141-124.tck02.spmode.ne.jp
以上、半ば勢いですが。ご容赦を。
最終更新:2026年08月05日 16:41