808 :earth:2012/04/25(水) 22:57:53
『新たな格差』
東南アジアやインドは日英独の取引の結果、独立を達成した。
彼らは長年の植民地支配に終止符を打ち、自分達の国を得たのだ。
「独立万歳!」
長年の苦労が実ったとばかりに喜び合う住人達。しかしそれを見る白人達の視線は冷ややかだった。
彼らからすれば遅れた有色人種が独立できたのは、『突然変異』の日本人と白人国家の取引の結果に過ぎない。
それをまるで自分達の努力が報われた結果とばかりに喜ぶ現地人は、滑稽にしか見えなかった。
「所詮、連中は日本の金と力で独立を手に入れたに過ぎん。そんなことも判らないとは」
「その程度だから、遅れた文明をもてなかったのだよ。我々が近代文明をもたらさなければ、今でも原始時代だよ」
商業ビルのオフィスで白人の男達は嘲笑った。
彼ら白人からすれば、アジア人など、遅れた未開の劣等種でしかない。
「それにしても日本め。現地人の肩を持つとは」
「まぁ良いじゃないか。我々は日本との取引で、ここに権益を残せるんだ」
「それもそうだな」
「しかし下手に有色人種が騒ぐのは拙いぞ。アフリカの植民地に影響がでる」
「本国政府は、アフリカの本国化を進めるそうだ。金と手間は掛かるが、成果は期待できる。現地住民の『処理』も進めるそうだ」
「少し急ぎすぎじゃないか?」
「本国ではアフリカの黒人に突然変異種が現れることを警戒しているようだ」
「第二の日本人が黒人の中から生まれる、と? そんな」
「無いとも言い切れないだろう? 日本が開国したとき、20世紀には世界最強国家になると予想した国があったか?」
「……」
日本の信じられない隆盛。それは彼らにとって大きな衝撃であった。
白人が、科学力でも軍事力でも負ける。それはあってはならないことだった。
故に彼らは自分達の自尊心を守るために、そして他の有色人種が勘違いしないように日本人を新たな人種と定義し、有色人種と区別した。
しかし同時に彼らは恐れた。他の有色人種から第二の日本が生まれることを。その第二の日本が、日本帝国と手を組むことを。
「第二の日本がアフリカに現れれば、欧州は重大な危機に陥る。
一度なら悲劇と言える。だが二度目は喜劇だよ。祖国を笑いものにするわけにはいかないだろう」
「……そうだな」
強欲な強国の支配から逃れ、将来の希望に沸く東南アジア一帯や南米太平洋岸地域。
一方で欧州列強に支配されたアフリカでは、現地住民にとって暗黒の時代が始まった。
一切の情け容赦のない弾圧と搾取、そして民族浄化。数多の血がアフリカの血に流れることになった。
あまりの凄惨さに日本は眉を顰めるが、それ以上のことはしなかった。日本人にとって守るべきは自国勢力圏と友邦であり、欧州の
勢力圏下にあるアフリカの住民を助ける力は無い。また北米の封鎖線維持のためにも欧州との関係悪化は避けなければならない。
「見て見ぬ振り、それしかない」
それが日本の意思だった。
自由と独立を求めるアフリカの住民達の声は、今日も銃声によってかき消されていった。
最終更新:2012年04月26日 18:06