677 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2026/03/06(金) 21:58:46 ID:sp49-109-21-211.smd02.spmode.ne.jp [4/6]
憂鬱SRW 融合惑星編「The Hound Dog in Megapolis」SS「前日譚 欠けた虹の橋」4
- 惑星2113 現地時間西暦2113年 日本 出島 地球連合外交使節艦隊 十和田級外交使節艦 外交官執務室
公安局からの事件調査の経過報告---メールではない物理的なもの---を読み終え、苅生ソフィアは安堵を得ていた。
不正アクセスをしてきた下手人についての調査がかなり順調に進んでいることが分かったのだ。
別件の体裁でアクセスをしてきた会社や個人を調査するという方法で、足跡を誤魔化しながら下手人を追いかけている。
下手人は何らかの方法で得たアクセスコードで出入り口を作り、瀬踏み役に提示。その結果報告から詳細を得ている。
そして、その下手人が何らかの方法でシュビラの目をかいくぐっている、というのも把握しているようだった。
この調子ならば、連合側の調査と同じ結論にたどり着くのも時間の問題ということになるだろう。
「良き哉、良き哉」
なるほど、シュビラの届かないところを探し回る仕事をする公安局だ。
意外と隙間の多いそこをみつけ、犯罪者を追いかけ、容赦なく執行する能力がある。
尚且つ、相手のやり口を見定める嗅覚というのも備えている。どちらかといえば、良いアドバイザーがいるのか。
「公安局もかなり頑張っていますよ、第二エミュレーターサーバーさん?」
声を飛ばした先、執務室のソファーの上には人の姿があった。
第二エミュレーターサーバー---そう、それは機械で構成された第一と異なり、電脳化をした人間によるエミュレートとデータ処理を担うサーバーだ。
嘗て、コンピューターの発達の前に膨大な計算を熟していたのはコンピューターという名の人間だった。手計算をしていたのだ。
それから遥かな時間を経て、博物館にもあるかどうかというレベルの技術を現行として用いる世界との接触で、再び仕事は人の手に委ねられた。
人の技量によって過去のプログラムを模倣して、動作させる。コンバーターではなくエミュレーターとなったのはそのためだ。
第二エミュレーターサーバーたる金堂カイは紅茶を優雅に飲み干し、大いに破顔した。
「それはありがたい。表向きは俺たちは関与していないわけだしな。
どうしようもないことを除けば、他人の尻拭いは勘弁してほしいし」
「はい。まあ、発想さえ転換できればすぐにたどり着けますからね」
「全方位を監視するシステムの懐に入り込みつつ、その死角に入れる方法は?と考えれば簡単だ」
それは、とカイはSEやプログラマーとして答えを出す。
「シュビラシステムのデバックを行うシステムの利用だ。
全能をうたうシステムであろうとも、デバックは必要。
むしろ完成に近づけるためにはデバックプログラムは必須のはずで、
システムとデバックの意義と都合上、シュビラはそれを認知できない」
「宣託を受け取る巫女の死角、ですか」
「正解」
678 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2026/03/06(金) 21:59:27 ID:sp49-109-21-211.smd02.spmode.ne.jp [5/6]
カイは嬉しそうに手を叩いて言葉を続ける。
「デバックシステムはシュビラシステムの稼働開始で役目を終えたと思われる。
けど、この便利なシステムを惜しんだ馬鹿が湧いても全くおかしくはない。
システムによる統制が厳格化した分だけ、その統制を逃れるうまみが増えたわけだし」
「つまり、そんなデバックシステムを知っていて、尚且つ活用できるのはシュビラシステムの開発に関わった人間に限られる。
公表されている情報だけでも、よく洗えば誰かの尻尾はつかめるわけね」
「まあ、オープンソースでは限界があったけど。
シュビラを開発した人間はどうやっても狙われるわけで、隠しておいた方が安全だからな。
そのせいもあって、向こうが手を突っ込んできてくれるまで確定が出せなかった」
瀬踏み役で得た情報を元に、彼ら---ビフロストのインスペクターは改めて侵入してきた。
いいところまでは潜ってきたのだが、前述のようにエミュレーターサーバーであえなく弾かれることになった。
バックドアから巧妙にアクセスしてきて隙を伺っていたのだが、生憎と人間の目はごまかせなかった、というわけだ。
いや、技術的に遥か先を行き、尚且つ人と一体化しているコンピューターの前には形無しといったところだろうか。
「それで、外交官殿。今後の連合としての方針は?」
「一先ずは秘密裏に調査を進めます。
デバックシステムを預かる彼らも、ひょっとしたらまだ役目があるのかもしれませんからね。
公的な場で確認をとってもらうことも考えています」
「ビフロストの関係者にか。いきなり執行とはいかないんだな」
「国交を結んだ他国ですから、配慮くらいはしますよ。少なくとも上はそのつもりです。
やけっぱちになって無関係の人間を巻き込まれてはたまりませんしね」
「テロリストを追い詰めるにも注意がいると。
まあ、無差別テロをされてはたまらんしな」
最後のスコーンを口に入れ、紅茶を呷ったカイは、PP日本に対する行動の方針と指示をまとめた書類を手に取って立ち上がった。
「今後も不正アクセスについてとビフロストについての調査は続ける。
なにか政治サイドで動きがあったら連絡を頼むわ」
「ええ。そちらも足跡を残さないように気を付けてください」
ソフィアもまた、ビフロストへの問い合わせの準備を進める。
まずは関係者であり、ここにも顔を出すために接触がしやすい慎導篤志に確認をしないとならない。
いずれはシュビラシステムを抱えるPP日本政府にも極秘裏に伝えなければならないが、それはもう少し先になりそうだ。
混乱を最小限にして、速やかにエクソダスに取り掛かりたい。それが連合の意思なのだから。
679 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2026/03/06(金) 22:00:08 ID:sp49-109-21-211.smd02.spmode.ne.jp [6/6]
以上、wiki転載はご自由に。
エミュレートをする人、だからエミュレーターというわけでした。
次回、本部長死す。デュエルスタンバイ!
最終更新:2026年08月27日 14:50