944 :2号:2012/05/05(土) 22:30:39
戦後のあるかもしれない話の第二弾です。
ジパングネタとも微妙にクロスしてます。
とある海軍の統合整備計画
ある日の海軍省。
複数の書類と図面を前に男達が手にとって眺めていた。
「これが例の計画の?」
「ああ、技研の菊池とかいう新人が提案してきたっていう『統整計画』だ。
上も乗り気らしいんだ。こっちでも検討してくれって言われた。こっちも無人護衛艦の事で忙しいのに・・・」
『統整計画』 正式名は砲兵装統合整備計画。
それは日米戦後の海軍予算の縮小を予想して現在の新旧混合の兵装をできる限り統合して不合理を解消し、
整備、補給の手間を省き、生産性を向上させることを狙って立案された計画である。
例としては12.7cm砲が挙げられる。
終戦直後の砲口径は控えめに言ってもバラバラであり、
吾妻型の45口径、富士型の40口径、大鳳型の54口径と建造予定の大和型の60口径という百花繚乱のような状態であった。
戦時中の急速建造のためなど仕方の無い理由があったとはいえ終戦によって余裕が出来た今なら、
これら不合理を解消し、兵器のスペックの平均化に伴う戦力計算が容易になる事(個艦レベルの射程の均等化)、
大口径砲は大和のものに統一、小口径砲も種類を減らす事で艦の必要人員の削減などが出来ると想定されている。
「しかし・・・大口径砲の統一っていうが新型戦艦の砲はたしか・・・」
「51cm。艦載砲としては史上最大だな。ちなみにこっちが改装予想」
そう言って渡された書類を見て男は頬が引き攣るのを抑えられなかった。
改吾妻型重巡洋艦
武装
50口径51cm砲 単装1基(前部1基)
60口径12.7cm両用砲 単装4基(左右舷側各2基)
30mm回転銃身式機関砲 単装5基(艦橋前1基 左右舷側各2基
12cm噴進砲 8連装2基(チャフ・フレア発射用)
32.4cm対潜魚雷発射管 3連装2基(対魚雷迎撃用)
搭載航空兵力:ヘリコプター4機
改富士型超重巡洋艦
武装
50口径51cm砲 2連装2基(前部1基 後部1基)
60口径12.7cm両用砲 単装6基(米クリーブランド型と同配置)
30mm回転銃身式機関砲 単装10基(左右舷側各5基)
12cm噴進砲 8連装2基(チャフ・フレア発射用)
32.4cm対潜魚雷発射管 3連装2基(対魚雷迎撃用)
改伊吹型高速戦艦
武装
50口径51cm砲 2連装2基(前部1基 後部1基)
60口径12.7cm両用砲 単装10基(前後艦橋と主砲の間に各1基 左右舷側各4基)
30mm回転銃身式機関砲 単装10基(左右舷側各5基)
12cm噴進砲 8連装2基(チャフ・フレア発射用)
32.4cm対潜魚雷発射管 3連装2基(対魚雷迎撃用)
搭載航空兵力:ヘリコプター4機
945 :2号:2012/05/05(土) 22:31:30
2
引き攣った顔で見ていた書類をそっと置く。
「あ~、いろいろ言いたい事はあるが・・・まずひとつ、公算射撃のためには砲が少ないと思うんだが」
「ん・・・それについては命中率の上昇で補えるらしいぞ。
電算機の発達と観測機器の新型の検証結果が実験艦隊から上がってるそうだ。こっちの資料にある」
「・・・伊吹型はどうなんだ?かなりの大改装になるぞ。それに砲塔重量とかでトップヘビーにならないのか?」
「砲塔に関する資料は・・・これか。
新型戦艦より防御力は落ちるが軽量の新素材(セラミックや強化繊維など)で作ってクリアするそうだ。
砲塔を移動させる改装は伊吹と富士の比較もかねてらしい。次期大型艦はどちらの船体にってことか」
「吾妻級も松島級みたいな砲艦にする必要ってあるのか?」
「新型兵装の問題洗い出しの実地試験のために戦艦建造前に改修するんだとさ」
大和がドックに入っている間の抑止力の低下を補填するという意味と、
大和の攻撃力だけは分散して残るというブラフも込めて大口径砲を51cm砲に統一して大型艦に搭載、
15cm、20cm、36cmなどの規格外とされる砲は輸出用と指定された。
また、あぶれた41cm砲などの生産設備は陸軍や輸出用の砲弾薬製造に流用する、とされていた。
「中小口径砲の生産にリソース集中できるから一括生産で少しは安くなるからうちとしても助かるか」
こうした様々な意見が集まり、嶋田のGOサインが出て計画が達成されるのは1950年代に入ってからの事になる。
おわり
おまけ
「嶋田さんのあたらしい噂を聞いたんですけど・・・聞きたいですか?」
「なんです辻さん。もったいぶって」
「『悪魔の牙(51cm砲)を増やした男』だそうですよ」
「なにそれこわい」
91 :2号:2012/05/06(日) 17:33:13
なんかネタが実行されたと思われてるようなので後日談を。
統合整備計画は真面目に
支援SSとして考えたんですけどネタのほうが注目されたようなので。
「悪魔の牙うんぬんとかいう厨二的な二つ名がついたのって何でですか?」
「ほら統合整備計画に伊吹と富士、吾妻に51cm砲を乗せるっていう案があったでしょう?」
「・・・ああ、初期案のひとつにありましたね。あれのせいか!?
たしかに吾妻に大和の『中小口径』兵装を乗せて試験はしましたけど伊吹と富士は改装してませんよね?」
「ええ、あくまでも海軍、海保の中小口径砲や備品の統合整備計画ですからね。
ただ・・・『次世代戦への対応として改装された艦艇予想図』を第三国経由で情報局が流したんですよ。
『嶋田さんが計画してた』という情報と一緒に。ちなみに『吾妻が新兵装に改装した』という情報は私が」
「あんたのせいか!!」
「嘘は言ってませんよ。いやあ、各国の戦艦建造熱やミスリードを煽るいい燃料になってくれましたよ。
将来の嶋田さんのWIKIページとアンサイクロペディアにまたひとつ二つ名が追加されるでしょう」
「もうやだこいつら」
最終更新:2012年05月07日 23:49