227 :earth:2012/05/08(火) 22:52:36

 西暦1964年。海洋国家連合(日英印)地域の中心である大日本帝国・帝都東京は繁栄の中にあった。
 自由主義陣営の金融の中心地であり、史実アメリカには及ばないが世界最強とも言われる帝国の首都には多くの資本が流れ込んでいたのだ。
勿論、資本と共に人も流れ込んでくる訳で……帝都は実に国際色豊かな都市になっている。  

「これが帝都東京か……」
「大きいな」
「あんなに大きい建物、俺達の国じゃ滅多に見られないぞ」

 東南アジアやインドから訪れる留学生や観光客は帝都東京に建設された巨大建造物(東京タワーや高層ビル群)に興味津々だった。

「俺達の国も、こんな建物が建てれるようにならないとな」

 彼らにとって帝都東京は、自分達が目指すべき国の姿だった。
 そこには豊かになりたい、という思いもあったが……それよりも逼迫した理由もあった。 

「白人達に二度と負けないためにも」 

 20世紀も後半に差し掛かろうとしている状況にも関わらず、有色人種の扱いは良くなかった。
 ドイツ第三帝国を中心とした欧州枢軸各国は、一部の国を除いて奴隷制度で有色人種を酷使していた。フランスに至ってはアフリカで
平然と民族浄化を行っていたのだ。警戒しない方がおかしい。
 さらに彼らの怒りを煽っていたのは、欧州の白人達の傲慢な考えだった。

「日本人の軍事力と金と技術で、近代国家ごっこをさせてもらっている連中は大人しく引っ込んでいろ」

 そんな白人の物言いに誰もが腹を立てていた。
 しかしそれに言い返せないのも事実だった。彼らは自分達の力で独立を手にしたわけではないのだ。
 独立派は白人の軍事力に最後まで勝てなかったし、自力で独立しようとした国『ベトナム』は、華南連邦の介入を受けて多大な被害を被った
挙句、日本の金で何とかしてもらったという悲惨さだった。
 自主独立派は「有色人種である日本人に出来たことが俺達にも出来ないわけが無い」と息巻いていたが、今ではアジアの人間でさえ日本人が本当に
有色人種なのか疑う者さえ出始めていた。それほどまでに日本の発展は異様だった。
 尤も「日本人≠有色人種」という考えは、彼らが毛嫌いする白人の間ではすでに共通認識であった。

「例え日本人が我々に膝を折っても、名誉白人として我が陣営に加えてやろう。彼らにはその資格がある」

 ナチスの幹部さえこう言う程なのだから、白人達がどのように日本人を見ているかが判る。
 もしも日本が欧州の奴隷制度や民族浄化などに口を挟んでいれば、話は別だっただろうが、日本は他所の勢力圏内で行われることには我関せずだった。
有色人種の星である日本に助けを求める者や亡命希望者も少なくなかったが、日本は冷淡だった。

「我々が内政問題に口を挟むのは難しい」

 それが帝国の公式見解だった。
 強者が弱者を平然と踏みにじり、誰もそれを咎めない世界。
 そこは白人優位を唱える勢力と、白人からも有色人種からも変異種と思われている人間達が中心になった勢力が相対する世界だった。

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最終更新:2012年05月19日 15:39