294 :earth:2012/05/10(木) 20:28:00
日本帝国と欧州列強の取引の下、これまで列強の草刈場であり、植民地であった東アジアには多数の独立国家が誕生することになった。
特に大英帝国の至宝と言われたインドの独立決定は大きな意味を持っていた。イギリスとしては権益を残した形での独立を図ったのだが
それを良しとしない勢力も多かった。
彼らは日本は兎に角、イギリスには最大限の嫌がらせをしようと考えていたのだ。幸い、インドには宗教問題を筆頭に多くの火種が存在
している。裏工作する場所は事欠かない。
「日本には兎に角、イギリスには相応の報いをくれてやらなければ」
イギリスによって自慢の新型戦艦を撃沈(それも騙まし討ち)された某国は特に気合十分だった。
だがインドの火種は予想よりも大きかった。彼らが火遊びしたのは花火工場どころか、気化したガソリンが充満した弾薬庫と同然の場所で
あったことがすぐに明らかになった。
「……インドで内戦だと?」
「恐らく枢軸の連中でしょう。全く、やってくれますね」
嶋田と辻は報告を受けて舌打ちした。
イギリスによる収奪で荒廃した経済、異常気象による食糧価格の高騰、イスラムとヒンドゥーの対立、ガンジー派とチャンドラ・ボース派、
さらにカースト制度など様々な問題が火を噴いたのだ。
独立のタイミングを誤ったこともあり、一部の陰謀家が目論んでいたような小火騒ぎではなく、インド全土で吹き荒れる闘争の幕があけた。
さすがの日本もこれを収拾できる手立ては無い。彼らだって今抱える地域の支配で手一杯なのだ。
加えてインド側は、独立の際に日本の介入を丁重だが拒絶していた。
「分離独立で穏便に行きたかったのですがね……」
会合メンバーはため息をつくが、どうしようもない。
295 :earth:2012/05/10(木) 20:28:33
「陸軍としてはあの広大な亜大陸への介入は反対です。本格的に介入するのであれば50個師団体制が必要になるでしょう」
「海軍は1個機動戦隊を向かわせる余裕はありますが……それだけでは」
「基地航空隊は?」
「イギリスと話をすれば第11航空艦隊をセイロンに展開させることはできますが……」
「「「………」」」
「富嶽と核で脅します?」
「恨まれるだけですよ」
辻の一言で核オプションは却下される。しかし現有の通常戦力では手の打ちようが無い。外交も同様だ。
これほどの大火事を本気で鎮圧するのであれば、日本も本腰を入れるしかないのだが……新領土開発や各国の独立準備政府への支援に忙しいこの
状況でそんな余裕はない。
「……仕方ありません。インドには生贄になってもらいましょう。
欧州連中も独立した途端に内戦になった国があれば自分達の正当性を喧伝できるでしょうし、我々も日本の助言を無視した国だからと言えます」
「下手人はどうする?」
「取引で落とし前をつけるしかないでしょう。ああ、それと軍と外務省、情報局には周辺地域に悪影響が出ないように頑張ってもらわないといけません」
「……やはり仕事が増えるのか」
一方で日本はインド内戦を儲け時と判断した。彼らはただでは起きない。
イギリスも日本の動きに乗ってあらゆる物を売りさばき、ボロボロの経済を立て直していくことになる。
日英はインド内戦である程度経済を潤わせた。だがインドの凄惨な内戦は、日本人以外の有色人種のさらなる自信喪失を招き、後に日本の頭を
悩ませることになる。
最終更新:2012年05月19日 16:07