316 :earth:2012/05/10(木) 22:40:46
インド動乱と呼ばれる内戦は、インド各地に深い傷跡を残した。
宗教や階層など様々な問題が絡んだことで、インド動乱は史上稀に見る規模となったのだ。インド権益にかなりの痛手を受けた
イギリスであったが、この内戦と日本との連携によって彼らはインド各地に再び影響力を確保することになった。
またこの騒乱でイギリスはどん底だった経済をある程度回復させ、英国は最悪の時期を脱することになった。
「日本の助言どおりに、インドを(形だけでも)独立させてよかったな」
「ああ♪ 武器は売れたし、それに……インド人もそれなりに売れた」
公然と人身売買は出来ないが、抜け道は幾らでもあるのだ。また『奴隷』ではなく使い捨てが出来る『低賃金労働者』としてアフリカの
鉱山開発に酷使することも出来る。日本も奴隷については苦言を呈するが、低賃金労働者についてまで文句は言わない。
「インド人も馬鹿なことをしたものだ」
ロンドンでは白人達の嘲笑交じりの会話が交わされた。
「所詮、有色人種は一部の例外を除いて白人の下で統治される存在でしかないのさ」
彼らの現在の価値観では白人≒日本人(例外)>>>>(越えられない壁)>>>>有色人種だった。
一方、ドイツは「またしても日本に嵌められた」とか「腹黒紳士共め!」と腹を立てたが、日英の黙認の下、インドから多くの労働力を
確保することに成功した。
ドイツは新たに手にした奴隷を使ってロシアの開発を進める一方で、ユダヤ人奴隷の下の階級に今回確保した奴隷を置く事で巧みに
奴隷間の分断を図った。
「今回確保した奴隷は、東部戦線にも配備しておけ。後ろに監視をつけてな」
「は!」
ドイツ総統の命令によって白人兵士は、有色人種の兵士(弾除けとも言う)と交代して後方に下がった。
そして後方には親衛隊を含む督戦隊が展開し、不十分で粗末な装備の部隊を監視することになる。
勿論、これに危惧を覚える者も少なくなかったが、幸いなことにソ連も似たようなことをしていた。
「少数民族と東アジア出身の兵士(弾除け)を前線に配備しろ。後ろには督戦隊をつけて監視させる」
ソ連はソ連でロシア人を温存し、有色人種を盾にして国家再建を目論んだのだ。
「……地球人口、史実と比べてどのくらいまで減ると思います?」
「半分、いや下手をすれば3分の1以下になるんじゃないか?」
会合の席で報告を聞いた辻と嶋田も乾いた笑みしか浮かばない。
さらにこの戦乱で、まともな有色人種の列強が日本のみになることが確定したのも問題だった。
インドという大国になりえる国が、事実上脱落したのはそれほどまでに大きかった。日本は恐らく21世紀まで唯一の非白人の列強として
踏ん張っていくことになるのだ。
「まぁ反日運動が一気に減ったのは有難いことでしょう」
「その代わり帝国軍の駐留を求める声は増えたがね。米帝の真似事など絶対に御免だというのに……はぁ~」
日本の悩みは尽きなかった。
最終更新:2012年05月19日 16:11