388 :ヒナヒナ:2012/05/29(火) 20:16:51
○缶詰【ブラックネタ】
※ネタですネタですネタです。ついでに超ブラックジョークです。
急に電波を受信したので書きました。分かる人だけ笑ってやってください。
1947年 旧米国のとある工場
「ったく、やってらんねーよ。」
40歳過ぎの工員が本日何度目かの悪態をつく。
汚れた作業着に油の染みた皮手袋
いつの時代も低賃金の代表格といえば工場勤務工達である。
単純労働、必要スキルなし。必要なのは飽きずに続けられる忍耐力だ。
「おいジャック、ぼやくなよ。いいだろう?去年の冬は世界的大寒波だったんだ。
食べる物を確保できるだけマシだろう?」
奥のほうに配置された工員が叫ぶように返してきた。
機械油と工員らの痰などが掃除もされぬままになった床は、
元の色など創造できないほど黒々としていた。
粘度の高い汚れで床はベトベトとしており、うっかりすると靴を脱がされそうになる。
工員同士で「こんな場所で作った缶詰なんか、金出して食うもんじゃねぇ」と言い合うほどの環境だ。
そんな状態でもこの缶詰工場勤務は羨まれた。
雀の涙ほどの給料の他に現品支給でこの工場製の缶詰が得られる為だ。
1946年末から1947年に掛けての冬は大寒波が北米を襲ったのだ。
史実では同年に欧州、特にイギリスを襲った寒波であったが、
気候が変動したためか、欧州ではなく北米大陸を強襲していた。
西海岸の海岸沿いはそれでも海が近いため、まだマシであったが、
少し内陸に入ると強烈な寒波が襲った。
人間はまだ暖を取る事ができたが、これにより多くの家畜が死亡した。
また、冬期に道路網が寸断されたことにより、
一部の集落では食料が不足し餓死するといった悲惨な事態も発生した。
それでも、遅めの春が来て雪解けが進んでいった。
この経験から、人々の間で保存食である缶詰の需要が高まったのだ。
「っち、やってらんねーよな。肉煮る臭いが臭いし。機械はすぐぶっ壊れるし。なあニック。」
「いいだろう。賃金は安いけど、今年の冬はこの缶詰配給で乗り切れたんだ。知ってるか?
15マイル向うの山中の集落では子供とジジババが全員飢え死にしたんだぜ。」
「だけど、こんな収容所も近いところで働くなんて、危険手当でも上乗せしろってんだ。」
「ジャック、考えてみろよ。食えるって大事だぜ。俺たちが前に働いていた
あの牧場の因業親父の野郎なんて、寒さで牛が皆死んじまって真っ青になっているって話しだ。」
「ニックの言うとおりだ。ジャック。いつもはもっと金稼いでこいって言う
うちのおかぁが今年の冬ばかりは優しかったからな。おかげでまたガキが増えちまう。」
品のない笑い声が響き、サボるなという現場監督の怒鳴り声が響きわたる。
工員達はしぶしぶと言った体で、動きの怪しくなったラインを修理したり、
缶詰をまとめた箱をトラックの荷台に運んだりしだした。
“Soylent社”と緑のインクで印字された箱がトラックで何処かへ運ばれていった。
(了)
ああ、石投げないで!
最終更新:2012年05月29日 21:31