415 :earth:2012/05/30(水) 00:00:30

 夢幻会が公的機関となったことで『公式』の会合は料亭や倉崎などの企業の建物ではなく、総研の建物で開かれることになった。
 そして総研で開かれる会合の席では……多くの面々がゲンナリとした顔で席に座っていた。

「「「………」」」

 彼らの視線の先にあるのは自分達について書かれた本や新聞だった。

「……酷い内容ですね」
「……全て否定できないのが辛い」

 辻と嶋田が引きつった顔をしつつ、本を手に取る。
 そしてそれにつられるように、それぞれが本や新聞を手に取った。

「いや、まぁ確かに色々と陰謀を張り巡らせましたが、別に世界の全てを陰で操っていたわけではないんですよね」 
「大西洋大津波を察知し、それを利用してアメリカを葬り去ることを画策した……半分位は当っているか?」
「近代国家はカモフラージュで、実態は影の朝廷を中心とした封建主義……言いたい放題だな」
「何でもかんでも俺達のせいかよ。M○Rもびっくりだ」
「東洋の魔術結社って……いや魂の研究をしているから否定は出来ないか?」

 夢幻会の存在に加え、彼らがこれまでに叩き出した成果や彼らが影で画策したことも公開(勿論、全てではない)されたことで
世界は大混乱となった。
 日本人は『天皇陛下の懐刀』、『元勲達の後継者』などと評して夢幻会に対して好意的だったが、海外では影から歴史に干渉し
黄色人種の国を100年足らずで世界最強に押し上げた秘密結社ということで連日報道が過熱していた。
 中には面白おかしく書いている会社もあるのだが、実際のところ、完全な的外れな記事のほうが少ないというのが夢幻会の
業の深さをうかがわせる。

「……まぁ人の噂も75日と言いますし」
「75日で収まると思います?」
「……無理でしょうね」

 辻は苦笑しつつ、肩をすくめる仕草をする。
 近衛も苦笑しながら口を開いた。

「恐らく我々は何十年、下手したら何百年とネタにされるだろう」
「ニュースだけではなく、様々な物語の中で扱われると?」
「その兆候がすでに見られるのは、判っているはずですが?」   
「「「………」」」

 近衛の予言どおり、夢幻の住人達は半ば伝説となり歴史、或いは物語の中で末永く語られることになる。

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最終更新:2012年05月30日 21:13