946 :taka:2012/06/07(木) 10:07:39

「ふぅ……良い湯だ」

嶋田邸で完成した総檜造りの浴場。
八畳間ほどの大きな風呂に肩まで浸かった嶋田は、ホゥと溜息を漏らす。
程良い温度はジワジワと身体を温め、過労と睡眠不足、運動不足でグダグダになった彼の身体を毛細血管から癒してくれる。

「やっぱ日本人って言えば風呂だよなぁ。しかも、両手両足を思いっきり伸ばせる奴」

バスユニットみたいな狭苦しい「湯に浸かれれば良い」浴槽なんてもう浸かれないなと嶋田は笑う。
まぁ、日本を列強筆頭の地位まで押し上げ、今も尚超大国日本の歴代最強宰相として名高い嶋田であれば、これ位の贅沢は許されるべきだろう。
日頃スタミナドリンクを相棒に気の休まらぬ生活を過ごしているのだ。風呂の中ぐらい贅沢に楽しみたいものである。
とは言え、鼻歌を鳴らしながらぬる燗を楽しむ彼の5m後ろ、出入り口にはSPが立っているしその傍には緊急用の電話機が置かれている。
この辺、彼の立場というものが窺える。この間は入浴中にホットラインが繋がり、チョビ髭との会談の所為で気分がぶち壊しになってしまったが。

「ばばんがばんばんばぁん、はぁーびば……ん?」

ぽこりと、大きな泡が浴槽の中央に浮かび、ぱちんと弾けた。

「あれ、でっかい屁でも出たかな……ははは」

少しばかり酩酊した頭でそんな事を考え、お猪口を傾ける嶋田。

ぼこり、ボコボコボコ!!

「え、あれ……?」

流石に人間1人の放屁であれだけの気泡は立たないだろう。
自分が使っている湯船の異常に気付いた嶋田が腰を上げかける。
だが、異変は嶋田が浴槽を出るのを待ってはくれなかった。

「ぶ―――――――――ぶはっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

突然水柱が噴き上がる。否、何者かが浴そうから勢い良く立ち上がったのだ。
異変に気付いたSP達が浴室に入り嶋田を庇う。嶋田は訳が解らず唖然とするのみ。

そして、立ち上がったそれは……。

「ぶはっ……なんなんだここは……また、平たい顔族の浴槽に出たのか!?」

浴室内に響き渡るラテン語。
転生前の嶋田が良く知る、全裸な古代ローマ人だった。

「げぇー!! ルシウス!!!」

ジャーン、ジャーン!!


その後、嶋田とルシウスが憂鬱世界と古代ローマの風呂をコラボレーションしたかどうかは定かではない……。
ただ1つ確かなのは、風呂の中ですら嶋田には安息の時が無いという事だろう。

おはり

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最終更新:2012年06月07日 23:57