288 :earth:2012/06/10(日) 15:18:53
大西洋大津波と
アメリカ風邪の情報が中々手に入らないことにヤキモキする米国政府。
強硬路線をとろうとしても、出入り口が洞窟の中であるので、特殊部隊を投入することも出来ない。このため彼らに出来るのは
半世紀前の軍事大国相手に機嫌を取ることだけだった。
腹立たしいことこの上ないが、そうかといって感情のままに動くほど彼らは愚かではなかった。
「何としても情報を手に入れるのだ!」
米国民の声もあって、米大統領は国務省にそう厳命した。
国務省の担当者は馬鹿なことをしてくれた日本政府に怨嗟の声を挙げつつも、帝国と交渉することになった。
そして接触初期に大失態をやらかした日本政府も必死に帝国側と交渉した。米国と環大西洋諸国からの冷たい視線は、それほどまでに厳しかったのだ。
勿論、彼らが必死だからと言って帝国側が譲歩してやる必要もないのだが、日本以外の場所でゲートが開いた場合を考慮して、徐々にであるが譲歩を
行うようになった。
「ラ・パルマ島は殆ど崩壊している上、未だに近寄れない。さらに噴火から時間も経っている。さすがに何も発見できないだろう」
「いや、リスクは少ないほうがいい。ことは帝国の存亡に関わる」
「……被災した東部の現地調査くらいは許しても良いのでは?」
そんな声が
夢幻会でも挙がり、幾つかの条件と引き換えに帝国側は調査団の受け入れを告げた。
勿論、日本政府は高らかにその成果を公表し自身の実績と喧伝した。
「我々の誠意ある説得が、帝国を動かしたのです!」
鼻高々に主張する政府。そしてマスコミは、その鼻高々な政府に対して調査団に同行させることを強く要求した。
ゲートやその向こう側の大日本帝国、ドイツ第三帝国関係のTV番組の視聴率は絶好調であった。このためさらなる視聴率確保のために
現地の生の映像を欲していたのだ。
だが帝国政府は日本のマスコミについてはシャットダウンすることを通告した。
「大人数で来られると、予期せぬ混乱が発生する可能性がある。被災国であるアメリカ合衆国、イギリスの報道陣を中心に受け入れる」
それが彼らの公式見解だったのだが、実際には下手に日本のマスコミを呼ぶと偏向報道される危険があると判断されたためだ。
欧米のメディアが偏向しないとは言わないのだが、元の世界の自国のマスコミのほうがもっと信頼できない……その考えがこの判断の根底にあった。
日本政府はこれに対して不満を述べたのだが、当然、帝国側は無視した。
こうして日本のマスコミは一切シャットダウンされた上で、調査団は旧アメリカ合衆国東部地域に向かい、そこで地獄と化した並行世界のアメリカ
の現状を目の当たりにすることになる。
最終更新:2012年06月10日 15:28