332 :①:2012/06/10(日) 20:51:21

知らない人は非常につまらない話ですが、野球ネタを一つ、
支援SS上では割を食ってる球団が一つあるような気がしたので
じくちたる思いを持ってる人もいるだろうと。
ただし、あくまでもネタです。

提督たちの憂鬱 ネタSS ~閑院宮篤仁の憂鬱~



閑院宮篤仁帝國陸軍中将は憂鬱である

「こんな搦め手で、まさか連中が動いてるとは私も考えていなかったなぁ…」


前世で野球ヲタだった篤仁は、前世のプロ野球界の悪い点、すなわちマスコミによる巨人偏重、巨人と阪神の人気偏り、それに伴う戦力不均衡、そして苦渋の辛酸を味わいつくしたパリーグ。

これらの絶望的な構造となっていたプロ野球界を、憂鬱世界ではその構造を引きずらないように、一部史実のJリーグのやり方やプロ野球の悪い点を参考に手を打って来た。

 そのおかげで職業野球は戦力均衡、人気均衡とバランスよく育ってきていた。

 課題は将来来るだろう球団数拡張によるリーグの再編、そして連盟による新球団の財政問題と戦力補強の問題であった。

 しかしここに来て篤仁は不安になっていた。巨人の問題である。

 史実なら1940年代の職業野球は巨人とタイガースで優勝を分け合うような形であった。
 しかし憂鬱世界では、徴兵猶予といち早く導入したドラフトと7年選手制度を準備し、新球団拡張による拡張ドラフト、そしてアメリカ敗戦による外国人選手に対する連盟管理下の入札制度で徹底した戦力均衡化を予定している。

それゆえ、二球団はなかなか優勝できない状況になっていた。

 それでも史実のダイナマイト打線保持に成功し、プラス景浦や円熟味を増している若林忠志に擁するタイガースがここ最近はめっぽう強かった。
 さらに阪神電鉄がオーナーのせいか、阪急や南海も積極的な戦力増強に邁進しており、どちらかというと優勝争いは西高東低の嫌いがあった。

 割を食ったのは巨人である。

 第一次黄金期のメンバーであるスタルヒンをセネタースに獲られ、白石を広島に獲られた巨人は優勝争いにいつも加わっているが、なかなか優勝できなくなっていた。

 まあ史実の巨人が史実のアメリカのように戦力豊富で常に勝っていたのだから、この世でアメリカが負けたように巨人も負ける運命にあったとはいえる。

 しかし篤仁は、自分も含めた野球ファンの球団熱を忘れていた。

「ファンは頭で理解していても感情は収めることは出来ないか…。あまりに入れ込むと、ひいきの引き倒しで、本来依拠すべき連盟、ひいては野球界を破壊するというのに…」

篤仁の目の前には一つのレポートがあった

大阪商工会議所が作成した、ある巨人ファン団体による陰謀。

「<惨惨会>によるタイガースを中心とする関西球団衰退計画」


栄光ある東京巨人軍の衰退に我慢ならなくなった、夢幻会野球ヲタ巨人ファンによる陰謀。

それは来るべきリーグ再編を機に、タイガース・ブレーブス・ホークスの有力選手獲得分配、そして関西球団パリーグ化計画。

それまでに読売新聞運動部が他社新聞報道を「選手自由獲得」へと密かにサポート。巨人ファン関東財界人は関西球団を追い詰めるべく、関西財閥に対するアタックと陰謀…

そしてレポート共に篤仁は傍らの新聞を取り上げて顔をしかめる。

「今回のことは作戦開始の狼煙か…しかし、嫌がらせというか、たったこれだけのことの為にここまで戦争前から準備するか?普通」


新聞は大阪朝日新聞。

普段なら一面は戦争の記事ばかりだが、今日は別の記事である。大見出しで

「大阪タイガース連続優勝!!宙舞う松木監督!」

と書かれている。

しかし、篤仁の目はその記事に向いていない。遥か下の隅に書かれたベタ記事だった。

それは

「タイガースファン、サンダース大佐像道頓堀に投げ込みに対し、ファン同士で乱闘」


優勝に興奮したファンが、5年前に三菱商事と提携して日本に進出したケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース像を投げ入れたのだ。必死で止めたファンも大勢いたので乱闘にまでなっていた。が、由来を知らないこの世のファンは、大阪人のノリで投げ入れてしまったのだろう。

「前を知っているトラキチならそんなことをするはずがない…しかし起きたということは…大阪人のノリを利用して扇動した…」

そう、これは巨人ファンからの宣戦布告。

「呪いの為に5年か…<トラファンは生活、巨人ファンは趣味>と前は言われていたが…<趣味>に人生を賭ける人間ほど恐ろしいものはないな…」

そうして篤仁はレポートの表題を見る

「<惨惨会>か…巨人愛も因業が深い……」


篤仁は深い溜息をついた。

閑院宮篤仁帝國陸軍中将は今、憂鬱である。

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最終更新:2012年06月10日 21:05