395 :taka:2012/06/11(月) 09:50:38
はぁ、はぁ、はぁ……。
ヘンシェルは霞む目で目の前に広がる山を見詰めた。
山は苛酷で残忍だった。挑む人間を嘲笑うかの如く、彼の必死の挑戦を赤子の手を捻るが如くねじ伏せた。
必死に手を伸ばす。まだだ、まだ、こんな入り口で終われない。終わる訳にはいかない。
「もういい、諦めるんだヘンシェル」
ガーデルマンの声が聞こえる。
彼もまた、山に屈し倒れた勇者だった。
「諦めろ。俺達では荷が重すぎたんだよ」
ぐうう、とヘンシェルは唸る。無念の呻きだ。
山はそんな彼らを見下ろし嘲笑っている。
まるで、伝説のスタンレーの魔女の如く、無力な人間を嘲笑していた。
「だ、駄目だ。もう、限界……もう進めません、駄目です」
ガーデルマンの声により、ヘンシェルの心は折れた。
彼は手にした武器を取り落とし、力尽きたように突っ伏した。
「何を二人とも休んでるんだ。さっさと終わらせてしまえ」
何でもないような、良く知る声が聞こえヘンシェルは思わず顔を上げる。
自分の前に広がる黄色い山。そしてガーデルマンの前に広がる緑色の山。
その向こう側の山脈。真っ赤な山脈。
それを、彼の相棒、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルが征服していた。
悠々と、淡々と、粛々と、ひたすらに合間合間に牛乳を喉に流し込みながら。
そして、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルは。
「ふぅ、完食したぞ。それにしても甘ったるいパスタ料理だ」
甘口苺スパゲティを完食した。
登山が趣味でもある東部戦線の破壊王は、見事極東の果てにあるという山脈を登頂、征服して見せたのだった。
途中でダウンした相棒二人のパスタ(甘口メロンスパ、甘口バナナスパ)を勿体ないからとモリモリ食べ始めるルーデル。
日本にまで来ていろんな意味で大暴れな彼を、入り口に飾られているドゥーチェの写真が生暖かく見守っていた―――。
おはり
(ちなみにtakaは甘口メロンスパゲティに挑戦、1割程度で遭難しました)
最終更新:2012年06月11日 21:23