614 :ボール:2012/06/14(木) 21:49:25

夢幻会員達の憂鬱 戦後世界の光と影


「・・・・・どうするよ?」「・・・・・どうしよう?」第二次大戦の勝者であり列強首位の座に一躍躍り出た大日本帝国、
その中枢ともいえる夢幻会の一派が料亭を貸切会合を開く、その情報を入手した各国の諜報員と
その動きを察知した日本諜報員との暗闘が人知れず行われる中、その会合では参加者全員が沈鬱な表情で席に着いていた。

「いかん、いかんぞ。此の侭では我等が悲願は到底達成できん」
「状況が悪すぎる。当初の予定のままで決行すれば失敗どころか我等の立場すら危うくしかねん」
「しかし問題と成るのは根幹部分、それも複数だぞ!?現状にあわせ改変なぞしたら邪神モッ○ス並みに元と似ても似つかぬものになるのは明白ではないか!?」
「やめろ、俺はあれを予約購入したんだ、思い出させるんじゃない」複数人がため息をつく。

そんな彼らはSF愛好者連盟国産派銀英伝会に所属する人達であった。
海軍に構成員を多数持つ夢幻会の有力派閥であるヤマト派と同様、彼らも愛する銀英伝憂鬱世界版を世に出すべく戦前から活動していたのだが
「史実との違い」という壁に彼らも苦戦、というか玉砕しかけていた。

「思いっきりドイツ風の帝国、アメリカとしか思えず止めに主役が中国系の同盟、戦争による漁夫の利で経済を支配し秘密結社が裏にいるという
それなんて日本?なフェザーン・・・だめだ、この状況でこんな本日本で出版何ぞ出来んぞ」
「帝国をドイツ風から日本風に置き換えるとラインハルトが足利尊氏なんぞ比較にならん逆賊になってしまう・・・」
「同盟もだ。民主主義への信用が地に落ちている以上ヤン達に共感する読者がまず居まい。アメリカや中国でなら売れるかもしれんが・・・」
「そんなところで売れてもうれしくないし、そもそも今あそこで小説が売れるわけ無いだろ・・・常識的に考えて・・・」
「なんという逆風・・・本当に有難う御座いました・・・」「ロングと張学良の馬鹿のせいでご覧の有様だよ、チクショウ!」

元のままで出しては爆死処か自分達まで誘爆しかねず、問題点を改善すれば原形を留めないという末期的な状況に自棄酒を煽る面々。
しかしそんな彼らとは逆に祝杯を挙げる夢幻会員達も存在した。

「ふ。いよいよ我等の時代が来たな」「ええ。しかし彼らも哀れですな。時代の流れに翻弄されている・・・」
「笑いながらいっても説得力はありませんぞ?まぁ我等にとって笑いが止まらないのも事実ですが」
「左様。我等はただ一点だけを修正すればよい。彼らを愛情をもって遇し、祝福の元に旅立たせれば良いのです」
「いま時代は我等に吹いている。この好機逃しては成らん!!」彼らの名は
「「「ラフィール殿下の為に!帝国に勝利を!」」」SF愛好者連盟国産派帝国紋章会といった。

770 :ボール:2012/06/16(土) 22:12:03

夢幻会員達の憂鬱 戦後世界の光と影 その続き

今こそ好機、とSF愛好者連盟国産派帝国紋章会は夢の第一歩、出版に向け行動を開始した。
長年の宿願今こそと彼らは精力的に活動、陸海軍の精鋭から執筆・挿絵作者を選抜、夢幻会の伝を辿り大手出版社からの
出版と宣伝、遂には「特撮映画の父」と呼ばれる近衛公からの推薦文をゲットと暴走寸前まで行っていた。
むろん作品の完成度も上げるべく時には殴り合いにまで発展するほどの情熱を注ぎ主人公のジントを北欧系に、
四ヶ国連合は過去・現在敵対している各国風に、中立となる某連邦は最近関係が改善してきた某国風にと原作の設定を憂鬱世界の状況に合わせた物に変更していたのである。

そしてここまで止めて置けば良かったのだが夢の実現に向け舞い上がった精神と精力的活動による連日の徹夜が彼らを暴走させた。
より受け入れやすくする為、宇宙探索の為優秀な遺伝子を元に誕生したという設定のアーヴ、その遺伝子に密かに保存されていた過去の偉人達、即ち某元帥や某大臣、某航空会社社長の遺伝子が使われた事にしてしまったのである。

かくして鳴り物入りで出版された憂鬱世界版は当初の予想すら超える大ヒットとなり、銀英伝会を初めとした不遇に喘ぐ会派の嫉妬と妬みを受けながら帝国紋章会は歓喜の祝杯を挙げ、
評判を聞いて手に取った海軍元帥は噴出し「こんな未来世界は嫌すぎる・・・」と頭を抱える結果となった。

そして数年後作品の読者を中心に「偉人達の遺伝子を保存しよう」という運動が起きた時夢幻会幹部数人が虚ろな笑い声をあげる事なるのだった。

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最終更新:2012年08月20日 18:22