999 :New ◆QTlJyklQpI:2012/06/22(金) 02:10:34
あの人が憑依者になったら・・・・・・
ネタSS ~ローレライは唄わない、というか唄いたくない~
戦後の8月の日、一隻の伊号潜水艦が呉を出港した。
最早呂号の登場で退役を待つばかりの存在であるが、後部に新型の救助用潜水艇を載せ、
外洋での潜水艦事故の救助の演習を行うこととなっていた。
だがその艦内の空気は暗い・・・暗いというかヌルイと言った方がいい。
そんな艦内で演習で使う予定の新型の潜水服を調整しながら折笠征人は冷や汗を
びっしょり掻きながらこの空気の元凶たる人物をチラっとみると
「くっ!後3ページ・・・・3ページだけなんだ!」
「・・・・・・・・・」
すぐに視線を戻していた。
あり得ない。あの浅倉大佐が、あの東京に原爆を落とそうとしていた浅倉大佐が、
人目を憚らずに軍服にインクを付けて目の下に隈を作りながら同人誌製作に励んでいるとは!
艦長の絹見真一は虚ろな目でその光景を見ていて、フリッツ・S(シンヤ)・浅倉は「あんなのが養父と思われたくない」
と自室に引きこもっていた。
””なんでこうなった!!!””
艦内にいる前世の記憶がある面々はそう心の中で叫んでいた。
死んだ後、何故か昔の少年時代に戻っていた折笠はまるで違う日本の世相に驚愕していた。
前よりは豊かであったがそれでも居心地が悪いことに変わりなかった貧村を抜け出し、
そして海軍に入った時には何故か知ったかのように素潜りの適性を買われ、潜水救難に関する部署に配置された。
そんな時に伊507の艦長だった絹見真一と”再会”できたのは僥倖だった。彼も”前世”持ちで史実より遥かに
理解されている潜水艦戦術の先駆者と祭り上げられてあちこち引っ張りだこになってると苦笑しながら言っていた。
そして、艦長とこの任務に就く前に前世持ちのフリッツとパウラらにも会えた・・・・浅倉大佐の養子として。
日系ということで日本に来れたらしいが祖母が死に、孤児院行きになる所で浅倉と遭遇、
何故か気に入られて養子にされたと言われた時は茫然とするしかなかった。
そして何かこの浅倉が前に紹介されてる通り、色々とおかしな人であった。
艦長は一回見た事があるらしいが「全くの別人」らしい。
任務中はは備え付けの座席で組んだ手で口元を隠しながら「あぁ、間違いない」「そのための海軍です」「大丈夫だ、問題ない」
などブツブツ発言するその姿はまさに変人であった。
「前は南方戦線での経験でああなったのか・・・・・」
「それでもあそこまで変な奴ではないと思うが」
艦長もフリッツもこの大佐の豹変?ぶりに頭を捻ったが結論が出ないようだ。
そして何より問題なのがパウラと一緒になるにはあの変人を”お父さん”と呼ばないといけない事だ。
「おお、良し!後2ページだ!やればできる!出来る!デキル!」
…うん、無理だ(前世的にも、現在的にも)。
折笠征人は人生の転換点を迎えていたがどのような決断を下すのかはまだ誰も知らない。
最終更新:2012年06月24日 17:01