13 :earth:2012/06/22(金) 21:39:26

「欧州、いや世界の命運はこの一戦に掛かっている。諸君の健闘を期待する」

 欧州統合宇宙艦隊司令長官の言葉と共に欧州諸国の宇宙基地から、衛星軌道のステーションから次々に航宙艦が出撃していく。
 彼らの目的地は旧アメリカ合衆国領にして、現在、日本帝国が支配する『アラスカ』だった。
 欧州連合にとって最後の宇宙艦隊の出撃を、多くの政府関係者が見送っていた。

「『デモンベイン』作戦始まりましたな」
「彼らには辛い戦いになるだろう。あの日本帝国が築き上げた鉄壁の防衛線を越えて、アラスカ要塞に乗り込まなければならないのだから」
「ですが、あの要塞の地下に建設されたあの『悪魔の兵器』を破壊しなければ、我々の、いえ世界の明日はありません」
「判っている……『魔を断つ剣』の担い手達よ、どうか頼む」

 彼らが目指すアラスカ。そこには驚異的技術力と生産力で、今や世界の3分の2を支配するに至った強大な帝国『大日本帝国』の
力の象徴『気象制御兵器』が置かれた。
 世界の気象を自身の思うがままに制御できる日本帝国に、多くの国は屈服を余儀なくされ、欧州連合もまた崩壊の危機にあった。
 故に彼らは残された戦力全てをつぎ込み、アラスカ攻略を決断したのだ。
 宇宙艦隊のアラスカ攻撃を援護するために、世界各地で欧州連合軍の残存戦力は陽動作戦を展開している。これに敗れるようなことが
あれば欧州連合は、日本帝国に対して慈悲を請うしか道は無くなる。
 それは白人世界の終焉を意味するものであった。
 彼らにとって絶対に許されない戦いが始まる。  

「日本帝国宇宙艦隊より入電、『速やかに降伏せよ』。返信はどうしますか?」

 圧倒的な日本帝国宇宙軍艦隊からの入電に、欧州艦隊司令官は不敵な笑いを浮かべて通信士に言い放つ。

「『馬鹿め』だ」

 始まる戦い。
 奮戦しながらも、次々に打ち沈められていく欧州宇宙艦隊。だがそれでも彼らは最後の力を振り絞り、降下部隊を送り出す。

「欧州の明日を頼む!」
「あの黄色い猿共に、人間の力を見せてやってくれ!」 

 幾多の犠牲を出しつつ、欧州連合軍はアラスカの大地に降下していく。だがその様子をアラスカ基地の司令部で見ていた基地司令官の
帝国海軍某大将はニヤリと黒い笑みを浮かべる。

「愚かな白豚共が……神に等しい帝国の力、思い知るが良い」

 吹き荒れる人工嵐、人工雷。人工の要害を突破した降下部隊を、日本帝国の秘密兵器部隊が迎え撃つ。

14 :earth:2012/06/22(金) 21:39:56

 そんな世界征服を企む日本軍と正義の欧州連合軍の戦いの様子をスクリーンで見ていた夢幻会の面々は苦笑した。

「……酷い言われようですね」
「いえいえ、面白いと思いますよ」 
「ふむ。彼らの特撮技術もここまできたか」

 嶋田は乾いた笑みを浮かべ、辻は拍手をし、近衛は感心したかのように頷く。
 彼らが見ていたのは欧州で人気を博した小説を原作にして撮影された特撮映画だった。

「アラスカの気象兵器……どこの要塞シリーズの敵だよ」
「この世界のI○M神、もとい日本の『神』はよりにもよって撫子ですか……いや確かに陛下は出せないか?」
「あの作者、実はこの世界の欧州に転生したんじゃないだろうな」

 他の出席者も苦笑いしつつも、低い評価はしなかった。

「それにしてもルーデルを筆頭にしたチート軍人の末裔達って……そんなのと戦うなんて断固としてお断りだな」
「「「うむ」」」

 世界最強に上り詰めた彼らだったが、やはり史実で伝説となった人間達と好き好んで戦いたいとは思っていなかった。

「それにしても『魔を断つ剣』か……案外、的を得た言葉だな」

 1億人以上の人間を抹殺した衝号作戦を実施した人間の一人である嶋田は、苦笑を浮かべつつ上映会を後にした。

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最終更新:2012年06月24日 17:09