42 :名無しさん:2012/07/04(水) 00:30:05

ゲートネタ
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「史実と憂鬱~」

 「……しじ、向こうの日本とこちらの人間が対立している?コミケで?」

 史実日本と言い掛けて、言い直した嶋田が呆気に取られた表情をした。
 サブカルチャーがおおいに人気を得ているこちらの世界と向こうの日本。
 双方が割りと和気藹々と共同作業に勤しめた数少ない作業がコミケというのが一部の人間に激しい頭痛を起こさせたが、そこで酷い睨みあいが発生しているという話に驚いたのだ。

 「正確には睨みあいではありません」

 「そうか」

 「こちらが圧倒的に圧しております」

 「もっと悪いじゃないか」

 まあ、原因は単純で。
 あちらの日本は基本、オタク連中。
 こちらの日本の面々はれっきとした歴戦の軍人も混じっている一行、というか一般人の向こうの世界の人間はまだまだ厳しく制限されているので、実質軍人ばかりと言っていい。
 そりゃあ、オタク集団と軍隊では人数では前者が多少勝っていようが、勝ち目なんてあるはずがない。

 「何故そんな事になった?」

 「はあ、それが……」

 話を聞けば、ある意味納得。
 要は史実日本の軍オタ達が史実の日本帝国の将軍達をけなしたらしい。
 嶋田繁太郎、東条英機、辻正信、牟田口蓮也などなど……。
 辻は官僚だが、他は憂鬱日本において或いはトップとして最悪時は生贄となる覚悟で舵取りをし、対米戦争を導いた嶋田をはじめ、最前線で活動し、勝利をもたらしてきた面々ばかりだ。
 史実では火力が足りずガダルカナルで壊滅した一木大佐の部隊も当人が「弾幕はパワー」を提唱し(もっとも、この言葉も英語が使いづらくなった昨今では「弾幕は力」に言い換えねばならず、当人は嘆いていたが)、徹底した火力戦闘で敵を蹴散らし続けてきた歴戦の勇者である。
 当然ながら、彼らの下で戦い続け、敬意を払っている軍人も多い。
 牟田口の中の人などは余程史実の自分の(未来の)評価が嫌だったのだろう、積極的に最前線に出て、全体指揮を執る為に司令部にいても兵士と同じ食事をし、家族を大切にして芸者遊びもしなかった。

 「後世に至るまであんな評価をされるぐらいなら、今、大変な思いをした方がマシ」

 というのが当人の言い分なのは夢幻会の上層部は知っていたが、現場で共に苦労し続けた兵士達からすればそんな将軍をボロクソにけなされて、腹を立てないはずがない。

 「……あちらはあちら、こっちはこっちで宥めるしかない、か……」

 深い溜息をついた嶋田だった。
 こうした話は今後も至る所で噴出し、ネットなどでは激論が交わされ続けると共に、憂鬱世界の将官達の優秀さに史実日本のネットでは『兵士は一流、将官と政治家はド三流だからこっちは負けた』『あっちは兵士も将官も政治家も全て一流だった上に運まで味方した羨ましい』『まて、一部除けば政治家は向こうも三流だ』『政治家だけは変わらんのな、矢張り民主主義は衆愚政治なのか』といった会話が飛び交う事になる……。

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最終更新:2012年07月07日 08:08