726 :taka:2012/07/06(金) 14:16:26

ドイツ第三帝国総統、アドルフ・ヒトラー。
世界を三分する勢力の1つである欧州枢軸を担う男は今、

「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

叫び声をあげ、プルプルと震える右腕を必死に押さえていた。

「し、静まれ、鎮まるんだ我が右腕よ!!」

夢幻会の者達が見たら「遂にアルツハイマー発症か」と思っただろう。
だが、左手では右腕である。しかも、どうにも様子がおかしい。
やがて抵抗虚しくヒトラーの右手は机の上に置いてあるスケッチに乗り、握られた色鉛筆が猛スピードで動いていく。
そして力尽きたヒトラーが目にしたものは……ぎっちりと都市計画が書き込まれスケッチブックだった……。

「まぁ、そういう訳で決して君の負担に関して配慮を欠かした訳ではないのだ」
「わざわざそんな言い訳をする為に寝ていた私を起こしたんですか?」
「い、いや、悪いのは私ではなくこの作意と夢想に疼く右手の責任でな……」

VIP用の広々とした病室のベットに寝ているシュペーアが恨みがましい目でヒトラーを見やる。
やがて耐えきれなくなったのか、ヒトラーは個人副官が抱えている赤い電話機に手を伸ばし。

「私だボルマン、シュペーアに釈明したのだが夢幻会の妨害が入った」
「回線が繋がってない電話に話しかけて逃避しないでください総統」


その頃、欧州視察団の団長が決定した。
その男の名前は、富永恭次。
何故この時期に、参謀総長争奪の渦中に日本から出立するのか。
男は不敵な、今から最強のライバルに挑む豪傑のような笑みを浮かべて仲間に言った。
欧州には強敵と書いて友と呼ぶ相手がいる。そう確信したからだと。
夢幻会きっての邪気眼の使い手は、欧州へと赴く。自分と互角に戦える好敵手を求めて。


そして、その頃のイタリアでは。

「ち、違うんだママン、俺はこの両腕が作り出すナポリタンを嫌々ながら食べているんだ。
くっ、ぬぅぅ、ま、また両腕が疼く。止めろ両腕に宿りし日本の悪意よ、俺を堕落の道に誘うなぁー!!」

ナポリタン中毒のあの人も良い具合に患っていた。

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最終更新:2012年07月07日 08:32