- 718. 名無し三流 2011/12/29(木) 12:03:14
- 連投すまない、パットン将軍には生きていて欲しかったんだ。
なお、このお話に名前の出て来る野口中尉とマクミラン大尉はモブキャラみたいなものです。
史実に該当人物はおりませんのでご了承下さい。
- 719. 名無し三流 2011/12/29(木) 12:03:47
- 日米戦争は、歴史上においてはまるで嵐のような急展開であった。
不幸な自然災害というのが世界的な公式見解であるが、「今神風」とも呼ばれる大西洋大津波に始まり、
瞬きする間に北京政府軍と在中米軍が壊滅、米アジア艦隊、太平洋艦隊も間もなくその後を追う。
そしてハワイが陥落するに至ると、日本のメディアは正に狂喜乱舞の状態だった。
そんな中、日ノ出新報の三面にある記事が掲載された。
「ジョージ・パットン将軍 満州より遂に生還す」
提督たちの憂鬱 支援SS 〜ジョージ・パットンの生還〜
――――九州は鹿児島の捕虜収容所の一室。
そこでは1人の男が、窓の外を眺めながら神妙な顔をしていた。
(我が敵軍はまるで大スキピオの如き手強い相手だった……
いや、それだけではない。兵器・兵員の質も全く隔絶していた。
イタリアなぞに下されたエチオピアを笑えんな、これは)
満州での戦いで惨敗を喫し、本陣を制圧され暫く消息不明となっていたパットン将軍は、
数少ない米軍残存兵と合流すると、満州の荒地の中を恐るべきタフさで、実に1年近くも生き延びていたのだ。
彼ら残存軍は、日本軍を相手にして史実ベトコンにも匹敵するゲリラ戦を展開していた。
それでも食料・弾薬の欠乏などはいかんともし難く、荒野の中から出てきて投降したのだ。
パットンが物思いに耽っていると、部屋の戸を開く音が聞こえた。
- 720. 名無し三流 2011/12/29(木) 12:04:30
- 何冊かの本が入った紙袋を手に入ってきたのは日本人の士官と通訳者だ。
「野口中尉です。将軍、頼まれた本は調達しておきましたよ。」
士官はそう言うと、机の上へ袋の中から取り出した本を広げた。
本の表題は『古代戦史?・白村江の戦い』『伝記・織田信長』『図解・関ヶ原の合戦』
等等……主に日本の歴史、それも戦史を中心にしたラインナップである。
これらの本の中から『伝記・織田信長』を手にして中身を眺めると、パットンは満足げに頷いた。
「うむ、図を見るだけでも中々面白そうだな。それで、これはどのような内容なのだ?」
「この本はかつて日本が統一国家でなかった時代、
革新的な戦術を武器にして活躍した人物、織田信長の伝記です。」
通訳が野口中尉にその質問を伝えると、中尉は予測済みだとばかりに答える。
「革新的な戦術?」
パットンは興味深そうに尋ねた。
「例えばですね……このページをご覧下さい。これは『長篠の戦い』と言いまして、
この戦いは今から300年以上前にあったのですが、ここで信長は野戦築城や鉄砲隊の集中運用など、
当時の日本では目新しかった戦術を導入しています。あと、面白い話としてはこちらの図があります。
この時、信長の敵軍だった武田方は精強な騎兵を頼みに、翼包囲を狙った陣形を取ったのですが……
両翼の部隊が突破する前に中央が崩れてしまったのも織田の勝因の1つとされています。」
翼包囲という言葉を聞いて、パットンはすぐにある戦いの名前を思い出す。
「ほほう、武田方とやらはハンニバルのように上手くはやれなかったのだな」
「『カンネーの戦い』ですね。あの戦いは、
カルタゴ軍がまるで奇跡のような大勝利を収めた聞いています」
「正にその通りだ。中尉はあちらの歴史もよく勉強しているようだな。
私はあの時、縦深を深くするため重装歩兵を弓なりに湾曲させ数に勝るローマ軍を撃破すべく……」
パットンはもう我慢できないとばかりに熱く語りだした。
中尉は瞬時に(しまった、地雷踏んだ)と思ったがもう遅い。通訳も困惑している様子だ。
その後、面会時間が終わるまで2人はパットンの前世語りに付き合わされる羽目になった……
- 721. 名無し三流(これで投下終了) 2011/12/29(木) 12:05:05
- 最初、パットンが生き残っていたという報せを受けた夢幻会は驚愕した。
パットンは確かに敢闘精神があり、機甲戦に精通した優秀な将軍である。しかし、
そんな彼が機甲戦とは全く性質の違うゲリラ戦をしていたというのは異常事態だった。
彼率いる残存軍らが捕虜となった後に聞き出した証言によれば、
パットンは撤退の中で不思議な第6感を発揮して日本軍の追撃を逃れていたという。
これは本人のみならず彼に従っていた兵も同じ事を話しており、また兵によれば、
彼は初めての土地でも感覚的に野宿に適した所を見つけるなどできたという。
さらに夢幻会を驚かせたのは、彼を除いては最高階級だったジョン・マクミランという大尉だ。
マクミラン大尉は史実では無名の存在で夢幻会も完全にノーマークだったのだが、
いざ敗走という状況になると、単騎のイタリア兵の如きタフさと的確な状況判断を見せ、
さらに一連のゲリラ戦では下の兵卒を見事にまとめ彼らの生存に一役買っていたのだ。
正規軍としての継戦能力が失われてもなおゲリラ戦を続けた理由を問われて、
パットンは「あまりに電撃的な敗北であり、それを受け入れ、分析する時間が必要だった」と答えている。
実際にパットンは敗走の最中も決して筆記用具を手放す事は無く、
ゲリラ戦を展開していた時は日本軍の対ゲリラ戦術について事細かに書き記していた。
こうして史実とは違う道を辿った歴史の結果、彼は機甲軍団に精通しているだけでなく、
ゲリラ戦とその対策にも優れた知見を示すようになっていたのである。
パットン確保とその後の情報を受けての臨時会合で、東条は
「史実の横井さんや小野田さんの役回りが彼に巡ってきたという事でしょうか。
マクミランは分かりませんが、神か何かが遣わした補正用キャラですかね……」
と感慨深く発言したという……
〜 f i n 〜
最終更新:2011年12月31日 17:06