94 :ヒナヒナ:2012/07/18(水) 19:39:51

最近支援ssが少なくて悲しいので自分で書くことにしました。
いつも通り会話文に乏しいssです。
とあるコピペを読んで、憂鬱日本だと尚更深刻だろうと思って書きました。


○日本への恐怖


二回目の世界対戦が終わって幾年。現在、この世界では環太平洋日本勢力圏対、枢軸陣営ドイツ帝国勢力圏といった対立構造が成り立っていた。その間にソ連が脱落したり、中国大陸がリアル三国志状態に突入したり、北アメリカ大陸が暗黒大陸化したりと、さまざまところで明暗が分かれる事となった。しかし、新たな領地の取り込みや、戦時経済からの立て直し、政争などの現実的な問題が噴出し、宗主国たる日本とドイツが互いに矛を収めたことで、とりあえず世界は平和になっていた。

さて、この世界で日本とドイツは、敵対する中小国からそれぞれ恐怖の対象であったわけであるが、日本人が怖がられる理由は大まかに2種類あった。

一つは敵対する恐怖。
これは単純だ。つまり現在太平洋にその勢力圏を広げた日本の戦力は脅威である。正面切って戦争をして国家崩壊に追い込まれた中国とアメリカ合衆国、日本を舐めて掛かり、核兵器の実験場となったメキシコが証明している。
また、実戦力もさることながら、政府民間を含めた経済的な攻撃力も有するのだ。各国上層部しか知らないことだが、ソ連のスターリン体制崩壊については、独ソ戦や、末期の世界規模での共産主義排斥運動と同じくらいに、日ソ貿易などによる経済的攻撃により財政がメタメタにされていた事が原因だとする意見がある(※1)。また、経済的制裁については、やや過剰気味に空気を読む日本人的気質から、何か国際問題が起こると民間で自主的に不買運動が成立することがあり、逆に日本政府が自国民に自粛を求める事態もあった。ある意味、周辺中小国にとっては軍事制裁よりも怖い反応だった。

まあ、これは日本への恐怖と言うよりは大国が普遍的に持つ性質であり、強者への恐怖・不満というところであった。

二つ目は自国文化への侵略である。
これがいわゆる「同化される恐怖」と表現されるものだ。日本になにか新しい文化が投入されるとき、今ある文化と矛盾がないように、ゆっくり吸収し同一化する。まず此処が分からない。普通は拒否反応か諸手を挙げて歓迎されるかどちらかなのだ。
次に、日本文化が外国に投入されるとき、はじめ拒否反応を起こされることが多いが、いつのまにか評価をひっくり返して、ゆっくりとその国の文化の中に溶け込んでいく。「いつか自分たちが日本の文化に染まってしまうのではないか」という恐怖を他国(主に欧州)の人間に植え付けた。

「同化される恐怖」を世界が意識しだしたのは、奇しくも枢軸国家たるイタリアの所為であった。
日本人はパスタという極めてイタリア的な料理を一般家庭単位で習得し(通常、一般市民に対する食文化の改変は障壁が高い)、魚卵や醤油、ケチャップといったものと合わせていろいろと改造を図ったあげく、ついには「ナポリタン」なる別次元の創作料理を作り出し、逆にイタリアに送り返す始末だった。もちろんイタリアではナポリ市を中心に嫌われたが、一部政府高官がこの悪魔の料理に攻略されたという噂が囁かれ(※2)、徐々にだがイタリアの地を侵食していった。
この顛末を知った各国の知識人達は困惑した。「イタリア人が若い女とワインと並んで必須としているパスタを侵略するとは!」と。

ちなみにドイツでは、宣伝相が新たな戦略として世界同時公開国策映画の製作に乗り出したり、英仏ではメイドや執事という自国の職業のあり方が、日本から訳のわからない文化侵略(※3)を受けているという報告を受けて慌てたりした。ちなみにフィンランドでは、日本から送られた戦闘機などが通常と違う多分に趣味成分の入ったペインティング(エスコン仕様)であることにやっと気がつき始めたが、マンネルヘイム元帥はため息を付くだけだったと言う(※4)。

95 :ヒナヒナ:2012/07/18(水) 19:40:24

後に判明し、そして最も各国を恐れさせたのが、それが異文化に対する攻撃ではなく、基本的な日本人の性質であったということだ。日本人は意図しないで普通にやっていることであり、なぜか心地よく調整されたその謎の文化は、受け入れになんら苦痛をもたらさず、むしろ心地よいため自然に受け入れてしまうといった具合だった。規制をしたくても、確たる形で入ってくるわけでもなく、極普通の民間人を含むすべての日本人や日本製品に注意を払うことは難しかった。それどころか、侵食された人間に聞いてみると、いつの間にか自らそれを望んで染まっていくというのだ。

目が異様に巨大で平面的なアニメーションキャラクター達や、職業や性格、果ては靴下の種類にまで及ぶ偏執的なフェチズム。それらが自国で持てはやされる未来を想像した各国文化人達は頭を抱えたという。

外国、特に枢軸国家から、「苦痛もなく、むしろ快感の中でスライムにゆっくり消化されていく状態」(※5)と言わしめた恐怖。これを各国では日本的文化侵略と名づけた。


大戦後すぐの時代。次第に明らかになっていく夢幻会の概要と、その中にあって秘密組織と目される「MMJ」と呼ばれる巨大組織。文化侵略時に活発に活動していることが観測されたこの組織を、各国は日本の文化侵略中枢とみなし、各国諜報機関とMMJ(及び、その他趣味文化部組織)との静かな戦いがあったことについては、また別の話。





※1:日ソ貿易について、当時のドイツ帝国高官の資料より、「銃火を交えている敵国のことではあるが、哀れさを催すほどの悪辣振りであった」とドイツ総統が発言したという記録が残っている。

※2:関連を噂されたイタリア王国の重臣は一切のかかわりを認めなかったが、彼の死後発見された手稿や、官邸の食材管理を行っていた調理人の証言により、この噂が事実であったことはほぼ共通の見解となっている。

※3:当時の資料で、「エマという名のメイドを日本人に引き抜かれた」、「暗器をメイドや執事に隠し持たせるのが流行っている」、「ロンドンに多量のメイドが給仕するカフェが出来た」などという記述がある。

※4:冬戦争時に日本人が持ち込んだ「ミニスカサンタ」などが登場する漫画形式の兵器解説書がフィンランドの兵器博物館に所蔵されているが、何故か日本側ではそういった兵器付属品記述や記録が一切抹消されている。

※5:当時大日本帝国のコミックマーケットにてこの表現についての風刺画が描かれた書物が出版されている。大日本帝国国会図書館所蔵の閲覧制限図書『ドS☆撫子タンの枢軸いぢめ・スライム地獄編』参照


(了)

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最終更新:2012年07月18日 21:31