831 :ひゅうが:2012/07/08(日) 03:52:17

※ earth閣下が新作を投稿された嬉しさのあまり続きを考えていたらこんなのができてた。な…なにを(ry
とりあえず悪乗りしたネタです。



 銀欝伝ネタ――クロス悪乗りver 「彼らは来た」


――宇宙暦796年10月1日 銀河系ペルセウス腕結節部 中央バルジ「グレートウォール」宙域「連合艦隊」

宇宙が白い。
ラインハルト・フォン・ローエングラムは溢れる星を胸いっぱいに吸い込むような気分になりながら微笑した。
この銀河帝国「統合軍」所属の機動要塞「フリードリヒ4世」の司令室は宇宙戦艦のそれと同様の全天モニターで構成されているため彼がかつて星をかけていた白い戦艦の乗り心地とほとんど変わるところはなかった。

何しろこの巨大戦艦ときたら、全長50キロを越える球体構造の後部にこれまた巨大な縮退エンジンを搭載したような怪物だ。
日本帝国が誇る三菱造機が作り上げた高性能縮退機関を贅沢にも6基(炉心は12基!)も連結したエンジンは快調に動作しており、速度はかつての高速戦艦に匹敵するかもしれない。

彼は上機嫌といってよかった。

「ご機嫌ですね。閣下。」

「そう見えるか?アンスバッハ艦長。」

「ええ。たいそう。」

ふむ。と若き司令官は思った。

「なら、この光景が理由だろうな。卿も思うだろう。『ごっつい』光景だと。」

確かに。と黒髪の男は苦笑した。
この旗艦を筆頭に、ラインハルトが率いる主力部隊は機動要塞25隻という結構な数だ。
うち10隻はここ数年で相次いで就役した新造艦だし、残りもかつては要塞だった経歴を持つ。
軍艦としては微妙という評価を受けがちではあるが、その分防御構造はいわゆる「完全防御」。諸外国のそれに引けを取るようなものではない。

それに、とラインハルトは思った。
建造途上で強奪され、同胞相撃つという悲惨な事態に至ったとはいえ実戦経験はあの日本人たちよりよほど自分たちの方が多い。
「銀河帝国臨時議会政府」と名付けられた中央官僚たちと辺境「革命軍」の寄りあい所帯に実務派かつ開明派な中小貴族や本当の意味での大貴族たちを加えたものとはいえ、10年ほど前までは同じ艦首をならべてイゼルローン回廊の彼方を見つめ続けてきたかつての「帝国軍」はその真価を発揮し得るはずだ。
だからこそ、徹底して実戦畑の提督といわれる自分がこの「陽動」の任を引き受けることになったのであるしそれを「政府」も分かっている。


「閣下。」

機動要塞を取り巻く大艦隊、それも総数60万隻に達する汎用戦闘艦――半数以上は銀河系内郭国家連合諸国からの無償貸与艦である――に思いを巡らせてようとしていた彼のもとに、参謀長が報告文に見える「ペーパー」を持ってきた。
この作戦に間に合わせるために義体化した人々の一人として実は立体映像であるそれを渡す仕草は堂に入っている。

「前衛艦隊の『ブラウンシュバイク』より報告。敵影見ゆ。数は52億ほど。グレートウォールを抜けてこちらへ向かいつつあります。」

「予定通りだな。」

ラインハルトは腕を組んで、そして解いた。

「ヤン提督らは敷設を終えていたな?」

くどいようだが。と彼は問う。

832 :ひゅうが:2012/07/08(日) 03:53:00

「はい。予定通り3度同文の連絡が入っています。ハロ外延部における相転移スレイブジェネレーターの敷設は完了。予定通り中央総軍に合流すると。」

「よし。」

彼は指揮席に自身用の高密度光ファイバーケーブルを置くと立ちあがった。

「銀河中心殴りこみ艦隊に至急電。『天岩戸(あまのいわと)開く』。敵は我々の陽動に引っ掛かったぞ!!宇宙怪獣どもに目にもの見せてやれ!!」


――宇宙暦794年初頭…緊張状態にあった銀河でひとつの実験が行われた。
銀河帝国に対する反乱勢力が没落しつつあるフェザーン商人たちと謀って企てた新技術の実用化実験。
その名を「超重力爆弾」というそれの起爆実験は無残な失敗に終わった。
辺境宇宙に巨大な重力特異点を出現させた彼らは、その後焦って反乱をおこし銀河帝国を内乱状態に陥れた…はずだった。
しかし、彼らは気付いていなかった。銀河中心核近辺に眠る「かつての超文明の遺産」たちが胎動をはじめ、「銀河存続の脅威」への大攻勢を企てていたことを。
同年末、内乱への介入を検討し始めていた銀河系内郭国家連合は開拓中であったペルセウス腕辺境部で奇妙な「宇宙生物」に接触する。
同時期、内乱がこう着状態に陥っていた銀河帝国辺境部にも「それ」は現れていた。

そして…ワーストコンタクトを経て「それ」は人類に襲いかかったのである。

宇宙怪獣。そう名付けられた「奴ら」は何もかもが桁違いだった。
まず数が数万から最大で億を越える。しかも全長1キロを越えて生身で超光速航法を行えるような「生物」だ。
防衛線を構築した内郭の諸国家はともかくとして銀河帝国辺境部やフェザーンなどの混乱の中にある星系は宇宙怪獣により星を超新星化させられ次々にその大地を失っていった。

ここに至り、人類は休戦を選択。
事実上の列強諸国筆頭となる日本帝国からの無尽蔵ともいえる援助や戦力をもってある「緊急避難的な計画」を実行に移す…
総兵力400万隻以上の汎用戦闘艦と40隻に達する巨大な移動要塞(戦艦や航母だけで)群は、自由惑星同盟と銀河帝国が保有する戦力の大半と自国の3分の1の兵力を投入した囮と呼応し銀河中心核「いて座A星」への殴り込みを敢行する。

携えるは超大型大質量ダンパーたる巨大惑星とそれを取り巻く巨大空間破砕装置群。
波動関数収束・確率変動技術という禁忌すら投入してまで作り上げられた「破砕装置(バスターマシン)」を用い、銀河中心核ごと宇宙怪獣たちを蒸発させる。
そしてその作戦は今まさに佳境を迎えようとしていたのであった。



「人類の興廃、この一戦にあり!各員の奮励努力を期待する!!」

奇しくも同時刻、数千光年離れた銀河中心部において黒髪の総司令官が発していたのと同じ言葉をラインハルトは発した。


ネタ――「銀欝世界にトップ世界の宇宙怪獣がやってきたようです」 つづかない(笑)

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最終更新:2012年07月22日 15:36