909 :Monolith兵:2012/07/25(水) 00:05:17
ネタSS「とある小隊長の憂鬱」
1938年、大日本帝国はフィンランド支援のために冬戦争の真っ只中であった。
そんな中で、帝国陸軍は前線の火消し役として東西南北を駆けずり回る忙しい日々を起こっていた。その中にある一小隊があった。
「見ろよ露助の数を。」
古参兵が指さした先には、激しい砲撃を受けながらも前進してくる、数を数えるのも馬鹿らしく思える程のソ連軍兵士が見えた。幸いにもソ連軍は洗車を伴っているものの殆どが砲撃で潰されており、なんとか防衛戦を維持することはできるのではないかと思われた。
「奴らは練度は低いが数が多い。油断するなよ。」
小隊長はそう言って部下を引き締めた。元も、皆この戦場で何回も実戦をくぐり抜けてきた者たちばかりだ。小隊長はそれほど心配はしていなかった。
いや、むしろ敵軍兵士の方が心配なくらいであった。
「………。」
ズドンという音と共に一人の大男が陣地の防壁に銃をおいて構えた。体長2mを超えるこの大男はまさに一騎当千の持ち主であることを知っている小隊の兵たちは頼もしそうに彼を見ていた。
ただひとり小隊長だけが引きつった顔をしている。
(冬戦争に参加するなんて仮想戦記か!と思っていたが、本当に火葬戦記の
登場人物に出会えるとは…。)
小隊長は転生者であり、生前はかなりの仮想戦記を読み漁っていた。そのため、目の前でM2”重”機関銃を2本の腕で構える大男がいることに心から驚いていた。
(原作的に考えて味方でよかったけど、実際にこいつの戦いを見たら引くわな。)
小隊長としては大男の能力の全てがソビエトに向くのは喜ばしいことだった。なんせ相手は原作で戦車砲に撃たれても戦艦の主砲を撃たれてもしぶとく生き残り、戦艦を生身で撃沈したまさにチートその者であったからだ。
現実に大男の上官となりその戦いぶりを見てきた小隊長としては、いつか本当にこの世界でも戦艦を生身で撃沈しそうな気がしてならなかった。
実際、この大男は普通の小銃や軽機関銃ではごつい指がトリガーガードに入らず、特別にM2重機関銃を歩兵装備としていたのだ。また、敵戦車が攻撃をかいくぐり至近距離にやってきた時など、大男が全力のタックルで敵戦車を横転させ皆を救ったことさえあった。その後、彼の二つ名は”戦車転がし”となり、あまりの出鱈目さに戦果認定が遅れることとなった。
小隊長が目をつぶって物思いにふけっていると、先任軍曹が声をかけてきた。どうやら敵が射程内に入ってきたようだ。フィンランド軍や帝国陸軍の砲兵が攻撃を続けているが、先頭集団はもう機関銃の射程内に入っている。
「よし!撃て!」
大男の構えるM2が火を噴くのを皮切りに、小隊の兵士が持つ獲物が次々と火を噴いた。こうして、この小隊は再び戦火の中をかいくぐることになる。
そして、大男ーイリヤ・ジェルジンスキーーの伝説がまた生み出されることになるのであった。
おわり
最終更新:2012年07月25日 22:15