76 :ぽち:2012/07/26(木) 01:17:52
西暦2199年、地球は謎の異星人国家・ガミラス帝国の侵略を受けていた。
ガミラスは冥王星に前線基地を建設し、西暦2192年より、地球に対して遊星爆弾による無差別攻撃を加えていた。
海は蒸発し地球は赤茶けた姿に変貌し、放射能汚染で地上の生物は死滅する。
人類は地下都市を建設し、地球防衛軍を結成して抵抗を続けていたが、科学力の差の前になす術もなく、地下にも放射能汚染が進行し、人類の絶滅まであと一年と迫っていた。
最後の地球防衛艦隊も壊滅し人類生存の希望は完全に潰えたかに見えた時、外宇宙から飛来した一隻の宇宙船が火星に不時着、通信カプセルが回収される。
その中には、宇宙の彼方イスカンダル星から「放射能除去装置 コスモクリーナーDを受け取りに来るように」
とのメッセージと、航海に必要な波動エンジンの設計図が納められていた。
九州・坊ノ岬沖に、250年も前の世界大戦の末に沈んだ戦艦「大和」も、干上がった海底にその姿を晒していたが、実は、選ばれた人類と生物を地球から脱出させる宇宙移民船へと極秘裏に改造中だった。
地球防衛軍は、この「大和」に、波動エンジンを搭載し、コスモクリーナーの受領のための宇宙戦艦「ヤマト」に改造した。
14万8千光年の彼方、大マゼラン星雲のイスカンダル星に向け、1年以内に地球に帰還しなければ人類滅亡という状況下、宇宙戦艦ヤマトは人類最後の希望を託されて往復29万6千光年の旅に発つ。
しかし地球も、ただヤマトの帰還をぼんやりと待っているだけではなかった。
日本を中心に波動エンジンを装備した内惑星戦闘型宇宙艦を建造し、国力の立て直しを図っていたのだ。
「まるで何が起きるのか全て知っていたかのように」沖田艦長に前もって渡されていた指示書に書かれていた補修ポイントにより太陽系内での戦闘は
冥王星基地のみで済まされ、時間のロスは最小限に抑えられていた。
そしてそれは、いくつかの前線基地に存在するガミラス兵力が野放しになっていることを意味していた。
地球が生命の住めない地となる事に備え、月ないし火星にコロニーを建設するとともに
ガミラス残党を殲滅すること、それが地球防衛軍の仕事であった。
だがしかし、やはりガミラスの兵力は強大であり残党とはいえ侮れぬ相手であった。
そして太陽系内最大のガミラス基地は、木星の浮遊大陸に存在していた。
浮遊大陸の(便宜上)西の端に建設されたガミラス基地に対し、地球軍は東の端に基地を建設し戦火を交えていた。
木星の資源採掘プラントとするべく大陸の破壊はご法度とされた地球防衛軍。
やはり浮遊している以上不安定なのは否めず、強大な火力を用いる事が躊躇われるガミラス軍。
木星の戦いは膠着状態に陥っていた。
77 :ぽち:2012/07/26(木) 01:19:59
ここは浮遊大陸北部。
「くそっ!」
織斑一夏は苦戦していた。
不意をつく事に成功した最初の一撃で二機の敵機を撃墜したことに油断してしまったのだろう
後上方からの襲撃で右エンジンに直撃を受け、出力が上がらないのだ。
三機もの敵機に背後を取られ、片肺でいまだ生きてるのはたいしたものであるが、そう長くは持たないだろう。
天才、加藤三郎に可愛がられ、その弟四郎と競い合った天才パイロットもここまでなのか・・・・・・・
「死なねぇ!死んでたまるか!」
左右どころか前後すら判らない状態だった自分を拾い、あまつさえ息子と呼んでくれた義父、そしてそんな自分に微笑みかけてくれたあの人たち。
彼らに恩を返さなければならない。
まだ死ねない そして・・・・・・・もう顔も忘れかけてしまった姉・・・・・・
「死ぬものかぁ!」
敵機のレーザー弾が風防をかすり、亀裂を入れる。
そして、背後からの殺気が確実に自分を捉えたことが感じられる。
「これが理力ってやつかな」なにやら暢気な感想を持ってしまう一夏。
しかし、背後からの殺気が彼を貫こうとする瞬間
「うりゃあああああああ!」
突如正面から一機のブラックタイガーがパルスレーザーを乱射しながら突っ込んできたのだ。
その強襲にひるんだガミラス戦闘機は一機が撃墜されてしまう。
「チャンス!」
これを好機と一夏は即座に反転、一撃で敵機を撃墜する。
生き延びた一機はそのまま離脱。
「サンキュー北沢、助かった・・・・・・・・北沢!」
見ると、助けに来てくれた同僚の機体はすれ違いざまに交わされた敵機の攻撃がコクピットを直撃していたのだ。
「北沢ぁ!」
「お・・・・・・織斑・・・・・・・無事か・・・・」
「無事か、じゃねえよ!お前が無事じゃないじゃないか!」
「とりあえず・・・・・・お前の救援が目的だったからな・・・・・・」
「何でだよ!お前士官学校の頃から俺を目の敵にしてたじゃないか!なのになんで俺を助けようとしたんだ!」
「・・・・・・たしかに俺はお前が嫌いだよ・・・・・でも同期の仲間だからな・・・・・・」
「北沢ぁ・・・・」
「今だから言うけど・・・・・俺はお前が嫌いだった・・・・・・立派な親父・・・・しかも帰れないとはいえ故郷には姉ちゃんがいるそうじゃないか・・・・・
俺には何もなかった・・・・・・・遊星爆弾で故郷も家族も・・・・・姉貴も何もかも失っちまった
全てを持ってるお前が・・・・・・羨ましかったんだ」
「馬鹿野郎!俺たちは同期の仲間だろう!そして同じ部隊で戦ったじゃないか!
同じ釜の飯を食い、同じ武器を抱えて戦い、同じネタでかいた俺たちは立派な家族じゃないか!」
「家族・・・・・そうかぁ・・・・俺ぁ一番欲しかった物を・・・・・・最初から持ってたのか・・・・・・」
「北沢!顔を上げろ!機首を基地に向けるんだ!」
「もう駄目だよ・・・・・織斑ぁ・・・・・・家族に死なれるって堪えるんだ・・・・・・お前は生き延びろ・・・・・家族を泣かすなよ・・・・・」
その機は黒煙を吐き、やがて地表へと墜落していった。
小さな、本当に小さな爆発だけが彼の最後の証だった。
「北沢・・・・・・俺は死なないよ。 必ず生き延びて故郷の皆と笑い合ってみせる・・・・お前の分も必ず」
FIN
78 :ぽち:2012/07/26(木) 01:20:48
「『FIN』じゃないですよ相原さん!なんですかこの映像は!」
「いやぁ木星の資源採掘最前線となった基地に記録が残ってたんで思わずCGやら編集やら色々やったら随分良いもの出来ちゃってね
勿体無いから一夏にも見せようとわざわざ持ってきたんだ 感謝してくれて良いよ?」
「アンタなぁ・・・・・・」
「素晴らしいっ!!」
「おわっ」「ラウラ?」
「同じ部隊でともに戦ったものは家族も同然・・・・・・・アイハラどの、それはそちらの世界だけの話ではないのだろう?」
「と、当然だよ」
唐突に通信機を取り出すラウラ。
「副長、素晴らしい話を聞いたぞ、共に戦った部隊とは・・・・・
「あのぉ」
「えーっと、たしかセシリアさん・・・・だったね」
「この映像、一夏さんが格好良過ぎですわ。売っていただけませんこと?」
「セシリア、さすがにそれは「いいよ、お値段は・・・・・・こんなもんで」「まあ、とってもお得ですわね」
「何考えてんだ!ぱっと見軍機というほどではないにしろ無条件で公開していいもんじゃないレベルの情報満載されてるじゃないか!
(落ち着け一夏)
(落ち着いてられるか)
(これは閣下の指示なんだよ)
(義父さんの?)
(ある程度の情報を公開することで過度の警戒と敵意を防ぐのが本来の目的なんだ。
どうせこの映像で入手できる情報なんて無意味だしさ)
(だったら俺の映像でなくても良いだろ?)
(そのほうが面白いから、だってさ)
「あんたって人は!あっちで嫁さんとイチャついてりゃいいんだよ上司の娘誑かしやがってこの新婚野郎!
最終更新:2012年08月02日 18:40