607 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:09:38
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
『20世紀の最も重要な人物』として世界の人々に記憶され、
母国である日本においては東郷平八郎をも凌ぐ偉人、現人神に次ぐ軍神として称えられた男がいた。
しかし、軍神といえど彼が1人の人間である事に違いは無かった。
健康上の理由から俗世を逃げ出……いや、退き、新しく建てた終の棲家へ移った彼は、
後継者達が問題なく国を運営している事を確認すると安堵していた。
(ああ、これでようやく俺の仕事も終わるのか。
それにしてもまさか辻の奴が俺より早く逝くなんて思わなかったよ。
そうでなかったらここに逃げ込む事もできなかっただろうが……)
今や日本家庭の必需品とも言われるカラーテレビには、
最先端技術を追求する日本の技術者達、成長著しい福建やベトナム、
そして大戦以来関係の冷え込んでいた欧州との『雪解け』が映し出されている。
(これから先、よほどの事が無い限りこの国は安泰だろうな。俺達老人の出番も無いだろう。
巡洋艦和泉で目覚めてからウン十年、苦労し続けた甲斐があったという物だ。)
筆舌に尽くしがたい安堵を覚える、軍神と呼ばれた男。
彼の脳裏には、これまでの苦難がまるで走馬灯のように駆け巡っていた。
(もうあの時のように、辻や海軍の連中と精神を削り合う戦いをしたり、
教科書の中でしか見た事の無いような人間達と面と向かって話をしたり、そんな事も無くなるのか。
そう思うと少し寂しいものがあるな……)
(おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?)
608 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:11:34
突然、男の脳裏に誰かの声が響き渡る。
(だ、誰だ!?)
(そんなに"あの頃"が懐かしいなら、もう一度繰り返そうじゃないか)
(いい事考えた、お前別な世界へ行ってみろ)
別の男達の声もする。どれも、いつかどこかで聞いたような声だ。
(憑依しよう、な!)
(い、一体お前らは何なんだぁぁっ!!)
声にならない叫びを最後に、彼は意識を失った。
Utsu Wars Episord Ⅰ
~ミスティック・ドリーム~
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
皇帝パルパティーンを頂点とし、銀河の支配者としての勢力を確固たるものとしていた『銀河帝国』。
帝国の恐怖の象徴の1つであった暗黒卿ダース・ヴェイダーは、瞑想室の中でフォースの乱れを感じていた。
彼の関心は、何年か前から断続的に感じる、どこか遠い所からの『魂の流入』に向けられていた。
何か嫌な予感がした彼はその流れを追おうとしたのだが、流入してきた魂は非常に老獪なのだろう、
彼が『それ』を掴もうとすると『それ』はスルリと彼の手をすり抜けてしまい、中々捉えられなかったのだ。
その内に魂は痕跡も残さず気配を全く消してしまったのだが、
それから数年が経った最近になって、また『それ』が蠢動を始めているのがヴェイダーには分かった。
何かが起ころうとしている。いや、既に何かが起きている。彼はそんな気がしていた。
609 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:12:20
ヴェイダー卿と彼の艦隊が急速に力を増してきた反乱勢力の討伐に追われている頃。
完成して間もない超兵器、銀河帝国の支配の象徴『デス・スター』、その中にある幹部専用の会議室では、
いかにも悪役然とした者達が集まり数多くの文書を広げて話し合っていた。
「デス・スターの防衛リングと放熱ダクトの緊急閉鎖機構追加は"史実"『ヤビンの戦い』には十分間に合うし、
その機能はレメリスク技師も保障しています。これで我々の死亡フラグが絶たれると良いのですが……」
「そこはルーカス神……いや主人公補正の慈悲に期待するしか無いだろう。それより問題は暗黒卿達だ。
今の所は何とか誤魔化せているが、"陛下"がこちらの『心境の変化』について疑問を持っているのはまず間違いない」
焦燥を隠しきれないカシオ・タッグ将軍――デス・スターの機能の維持管理を監督している――を、
高い地位とそれに見合うだけの能力を兼ね備えた数少ないグランド・モフ、ウィルハフ・ターキンが窘める。
その脇では、帝国軍に多いたたき上げの提督であるコナン・アントニオ・モッティが頭を抱えていた。
(畜生、どうしてこうなった……!確かに嶋田繁太郎もかなりのマイナーキャラで悪役だが、
だからってここでまで超絶マイナーキャラ、しかも悪役を割り当てられる筋合いは無いぞ!
何の活躍も無くあっさり死亡したキャラとか何の罰ゲームだ!嶋田の方がまだ好条件だろ!)
「何をぶつぶつ言っているんですか、"嶋田"さん?
黒いオーラはここではシス卿の注意を引くだけですよ、今はとにかく"モッティ提督"を演じないと。
それに"辻"さんと離れ離れなだけ幸運じゃないですか。今頃モス・アイズリーは地獄でしょうがね」
「その通りだ。それに"
夢幻会"の置かれている状況自体は"前"に比べれば良い方ではないか。
確かに担当キャラこそアレだが、銀河帝国が圧倒的な力を持っている時期である事には間違いない。
まずは来るべき"エピソードⅣ"を生き延びる事だ。そのためにはより仕事に励まねば」
ターキンとタッグがモッティ提督の思考を現世に引き戻すと、彼らは次の議題に移った。
内容は現在の主力兵器であるスター・デストロイヤーやTIEファイター、
さらにAT-ATなど将来の主力が持つ弱点とその改善策についてだった。
610 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:13:15
もしヴェイダーや何も知らない者達が『彼ら』の会話を聞いていたら驚愕した事だろう。
彼らは現行兵器のみならず、実戦配備されていない開発中の兵器まで知り尽くしていたのだから。
いや、それだけではない。彼らはユージャン・ヴォングのような既知銀河系外の存在まで知っていた。
そう、あのパルパティーンでさえ存在を知らないこの『夢幻会』という秘密結社こそ、
はるかかなたの銀河系から流入してきた魂が乗り移った者達……『憑依者』の集団だったのだ。
そして彼らは既に1回、似たような状況を体験していた"ベテラン"憑依者だったのである。
「ヒーロー補正は非常に強い。また抵抗感がある者もいるかもしれないが、
"帝国"は"ヤヴィンの戦い"に勝利する、ないしはこの戦い自体を発生させない。これが我々の第一目標だ。
この世界での命は"前世"よりさらに軽い。そして周囲は敵だらけだ。生半可な覚悟では生き残る事はできない」
会議の席で、ターキンが力強く宣言し、皆が頷く。彼に憑依しているのは、
前世では伏見宮博恭王と呼ばれ、さらに"前々世"をも持つ魂だ。この2つの人生を併せれば、
彼は100年以上の人生を送っている事になるだろう。
またタッグ、モッティに憑依する魂も彼と同様だった。
2人の"旧名"はそれぞれ"南雲忠一"、そして"嶋田繁太郎"である。
「ルークはこの時点ではまだ農夫の養子です。またケノービも表向きは世捨て人。
タトゥイーン組はそれとなく監視する以外は干渉しない方が良いでしょう。藪蛇になる可能性もあります。
第一級フラグイベントであるタンティヴⅣの拿捕が起きた場合は辻s――ジャバ・ザ・ハットが対処します。
また、ヤヴィンⅣ、オルデランについても、イレギュラー発生まで夢幻会としては不干渉を貫きます。」
「原作知識は夢幻会随一」と自負するタッグ将軍がその後の会議の結果決まった方針を纏める。
さらに、モッティ提督がジェダイ、シスに対抗するための切り札である生物『イサラミリ』
(フォースの力を無力化する空間を作り出す事ができる)確保と分析の新興状況を報告した。
611 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:13:48
「陛下には『対ジェダイ兵器開発のため』と説明して、配下の艦隊に惑星マーカーの開拓を進めさせています。
現在33匹が確保され、その生態サイクルについての研究は順調です。研究施設はデス・スター内にも設置が完了しており、
そして新型スター・デストロイヤーにして我々の旗艦となる、『ミスティック・ドリーム』にも、
イサラミリの研究所と繁殖施設が設置される予定となっています。」
"夢幻会"は自分達の生き残りのための計画を着々と進行させていた。
まずはデス・スターの指揮権の掌握。これはターキンをはじめ"原作"での司令官が殆ど憑依者であったため難なく成功した。
次に"夢幻会"を守るための"軍隊"の形成も、当時上層部から疎まれていたマクシミリアン・ヴィアーズの引き抜きに成功し、
さらに憑依者デミトリアス・ザーリン(旧名"倉崎重蔵")主導による新型スター・デストロイヤー計画の立案によって、
その一番艦『ミスティック・ドリーム』のデス・スター防衛艦隊配属が約束されるなど順調に進んでいた。
「デス・スター外周の防衛用リングに、放熱ダクトの緊急閉鎖システム。
それにエグゼキューター級とも渡り合える性能の『ミスティック・ドリーム』が完成すれば、
ヤヴィン戦どころか死の小艦隊とも戦えるだろう。だがまずは我々の存在を秘匿する事だ。
これらの派手な動きも、銀河帝国の名を借りるからこそ為す事のできるものだからな……」
"前々世"、"前世"という共通の過去を持ち、
さらに"前世"における粛清や戦争によってさらに固まった結束が、様々な権謀術数によって、
彼らとその組織………そう、"夢幻会"の存在を皇帝や暗黒卿の目からも隠し通していたのだ。
そして、この世界に"死ぬ筈の者"として放り込まれた彼らの目的はただ1つ。
――――――生き延びる
~to be continued~
612 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/12(日) 21:14:49
今回の投下はこれで終了です。
幸運にも続きが出来た場合は、投下場所を中編以上の
ネタの書き込みスレに移します。
なお、現在決まっているキャストは以下の通り。
殆ど知らない人が殆どだと思うので、適宜『スターウォーズの鉄人』で検索願います。
コナン・アントニオ・モッティ⇒嶋田繁太郎(我らが主人公、神崎博之)
ジャバ・ザ・ハット⇒辻政信(大蔵省の魔王、夢幻会最"黒"の経済官僚)
ウィルハフ・ターキン⇒伏見宮博恭王(海軍そして夢幻会の重鎮)
カシオ・タッグ⇒南雲忠一(元海保、縁の下の力持ち)
ケンダル・オゼル⇒東条英機(2ちゃん大好き、陸軍の顔)
ファーマス・ピエット⇒牟田口廉也(インパール?何それおいしいの?)
デミトリアス・ザーリン⇒倉崎重蔵(倉崎重工トップ。変態機ばんざぁい)
オリジナルのスター・デストロイヤー『ミスティック・ドリーム』級のスペックなど知りたい方は、
言ってくだされば幸運にも続きが出来た場合に紹介スペースを設けれるといいなと願っています。
最終更新:2012年08月19日 19:06