256 :第三帝国:2012/07/31(火) 22:38:34
【星界の紋章×銀鬱の変則的クロス本編】 現状確認、あるいは対立要因~自由惑星同盟視点
宇宙歴801年 ××月××日
経済産業省 課内通信B-22
機密事項令則A2-C1
A2-C3 に基づき閲覧すべし
閲覧区分:部長級以下はこれを禁ずる
関係部門と最高評議会のみこれを許す
宛て:最高評議会関係者各位
発 :経済産業省事務次官
主題:経済と将来の進展に関する報告
経済産業省は最高評議会より要請があった銀河帝国崩壊後の経済ならびに銀河系内郭国家連合に関する調査を完了した。
より詳細な資料を配布する前に調査した結果の概略をここに記す。
現在、我が自由惑星同盟は同盟国内、フェザーン、ならびにと銀河系内郭国家連合交易することで経済を成立させている。
希少金属から食料にいたるまで自給だけでは帝国との戦争は行えず、彼らと交易を重ねることで今日までやってこれた。
が、将来に関する見解については彼らとの関係を今一度考慮しなくてはならない。
特に貿易赤字は年々記録を更新し各種技術については、
内惑星国家群に独占されつつあり、国内産業はそれら抜きでは成り立たなくなりつつある。
これは、長引いた帝国との戦争の影響で軍事方面への投資が偏重し、民間への開発が置き去りにされたことが原因である。
銀河帝国と接触以来、我が自由惑星同盟は軍事による公共投資によって経済を成立させてきた。
人と金を常に食いつぶす軍事だが、軍事産業を成長させることによって民間へ資金が流れる仕組みを作った。
しかし、将来戦争終結という要因によりその産業は頭打ちになることは免れないと我々は考えている。
そうなれば、動員解除をした市民と合わさり深刻な失業問題が発生することは明確である。
(中略)
活路があるとすれば民間部門への大規模公共投資または緊縮財政だが、
初めの案はすでに発行した国債の額を考慮するとインフレ率について考えねばならない事態が発生するだろうし、
緊縮財政は経済を硬直させ、失業率を拡大させる結果をもたらすこととなる。
常に戦火に塗れた自由惑星同盟と違い、極めて平穏だったため民間経済が正常に活動している。
派遣された艦隊の費用も彼らの経済規模からすれば、微々たる影響を与えず寧ろ建造によって経済活動をさらに活発させている。
(中略)
彼らと友好的な交易で得られるものについては巨額の貿易赤字である。
各種技術に資源を我らは頼みとしているためこの関係を逆転させるのは不可能である。
さらに辺境惑星では自由惑星同盟よりも彼らとの交易で得られる利益に常に注目している。
長期的視野に立つと、我々が迎えるであろう経済の問題は極めて重大であると判断せざるを得ない。
巨額の軍事財政に巨額の貿易赤字という双子の赤字に経済は締め付けれている。
大規模公共投資、緊縮財政は最終的な解決手段にはならない。
例え解決したとしても、自由惑星同盟の経済力は内惑星国家連合との経済競争という点で不利に陥る。
どちらにせよ、すでに彼らに自由惑星同盟の経済が浸食されている事態がさらに進展するだけであろう。
こうした状況は現在の体制、と銀河系内郭国家連合の友好関係が続く限り解決される見込みはないと断言できる。
以上を踏まえ、我々が進むべき道は将来起こるであろう悲劇を回避するために一時的な悲劇を享有すべき段階だと考察する。
経済産業省事務次官:×××・××××
257 :第三帝国:2012/07/31(火) 22:39:32
「さて、みな経済産業省が提出した資料は見てもらったと思う」
ぶ厚いコンクリートで囲まれた一室。
自由惑星同盟最高評議会が行われていた場所でロイヤル・サンフォード議長が静かな声で言った。
「先に同盟と銀河系内郭国家連合、フェザーン、新銀河帝国等の勢力との比較だ」
立体映像を起動させレーザーポインターで写されたグラフに当てる。
一方は巨大で残り者はそれと比べ劣っている。
「彼らの経済規模は人口の多さと相まって極めて巨大だ。
その気になれば、我々と違い彼らが必要とするものは全て自前で賄えてしまう」
続けて宇宙地図を示し銀河系内郭国家連合と通じる唯一つの回廊を指す。
「唯一つ彼らと繋がっていこの回廊は、多数の要塞で防御されており。
かつてこれを見たブルース・アッシュビーが艦隊決戦主義から要塞派へと転じ、イゼルローン要塞建造を進めたのは有名な話だ。
そのさいに日本が技術支援をしたこともまた有名で、今日に至るまで帝国軍に出血を強いると共に彼らの盾となったと言える
我々が50年あまりに渡って軍事費を消耗させている傍らに彼らは同盟経済、いや銀河系全土に浸透していった。」
「議長、その。貴方の話を聞くとまるで長耳が、
いや、すまない。これから宇宙がの銀河系内郭国家連合の物に成りつつあると言いたげではないか?」
まだ始まったばかりだが、帝国に革命が訪れその後【帝国の実働戦力たる共和議会軍】
が侵攻してきた際も影が薄かった議長の多弁ぶりに疑問を覚えた一人が恐る恐る尋ねる。
「時間という概念を人間の10年、20年先で考えると分裂した銀河帝国といいこの自由惑星同盟はまさに絶頂期だろう。」
先ほどまでずっと話して喉が渇いたせいか机に置いてある水を一口飲む。
「が、これをアーヴ的に50年、100年の単位で見ますと彼らの物となると私は思う。
我々が広げすぎた領土の対処に疲弊する一方で、彼らは辺境だった地域を開拓し確実に力を蓄えている。
既に我々よりも遥かに巨大な覇権国家として成熟した規模を持ち、銀河の警官となる日はそう遠くないと自分は考える。」
「だが軍事的差では艦隊数で単純に20:14の開きがあるのでは?」
名もなき地域社会開発委員長が指摘する。
その馬鹿げた質問に国防委員長と財務委員長、人的資源委員長は馬鹿にするように鼻で嗤う。
そんなお花畑に現実を叩きこむようにヨブ・トリューニヒトが口を挟んだ。
「それはあくまでも動員解除が我々よりも先にしたため出された数値だ。
お忘れですか?戦術も戦略も通用しない100万隻単位の艦隊をついこの間繰り出してきたことを?
革命軍が最後に立てこもったガイエスブルク要塞を包囲し、力技で粉砕してことを?」
会合は一気に重苦しいものへと変化した。
思い起こされるのは、革命政権へと変わった帝国が、
同盟と銀河系内郭国家連合に宣戦布告をした瞬間に、長年の援助から打って変わって本格的に自由惑星同盟と轡を並べた日だ。
一艦隊約一万五千程度であることは帝国、同盟と変わらぬ編成であったがその規模はけた外れであった。
百個艦隊約百万隻、と人類が未だ目にしたことのない規模で彼らは門から現れた。
複数の軍集団艦隊という馬鹿げた規模にあのヤン・ウェンリー、ラインハルトは同じタイミングで字匙を投げた程だ。
戦術も戦略もすべて力技で粉砕し、最後に立てこもったガイエスブルク要塞に対しては軍集団艦隊によるミサイルの波状攻撃により。
表面から徐々に削られ、最後には塵も残さずこの宇宙から消滅させてしまった。
最終更新:2012年08月19日 18:17