686 :第三帝国:2012/08/07(火) 22:47:44
【星界×銀鬱】外伝~「殿下と真ヒロインの過ごし方~爆せリア充、
夢幻会の暗躍」
―――宇宙暦803年 宙京
自由惑星同盟との戦争が終結して1年と少し。
一時期は首都である宙京の近くまで攻め込まれたが今ではその面影は見られない。
今度こそ正真正銘の平和が訪れ、戦闘民族から商業民族へと回帰したアーヴは今日も繁栄を謳歌していた。
そして、そんな中。監禁されたり監禁されたりで忙しい青年は直面している問題について数少ない話し相手に相談を持ちかけた。
「えっと、お久しぶりです」
「ふむ久しいな。姉が言うにはこの間昇進したそうじゃないか?おめでとう」
「はい、ありがとうごまいます。
でも、その。今日はそうした挨拶のために来たのではありません。少し話してもよろしいでしょうか?」
「かまわない、どのみち戦争が終わって暇だからな」
相手が所属していた艦の元上官ゆえに恐縮するジントとは違い、
実の姉と夢幻会の腐女子メンバーの英才教育により、【原作】では『王国には後継者が必要だ(キリッ)』言い。
よりにもよって殿下に手を出そうとした脇役キャラことアトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵・クロワールは、
ハッテンな妄想を繰り広げるただの腐男子らしく、内心で『悩み顔のジントhshs』と萌え上がっていた。
当然のことながらジントはこの事をしらない。
父親が銀河帝国貴族の亡命者で、通常人類の血を受け継いでいるせいか、
姉と揃ってアーヴ寄りでない考えをしているため、彼にとって数少ない話が合う相手としか認識していない。
相手が『イエス・萌え、ノータッチ』主義ゆえに妄想だけで留まっているが、
例え妄想でもジントがこの事実を知ったら色々と人が信じられなくなるだろう。
そして男爵は、ジントの表情から某殿下絡みで美味しい話であると察知し、
長話となって喉が涸れないように冷たい珈琲を用意して、いつでも話を聞ける態勢を整え獲物を待ち構えていた。
「実は・・・デートって何をどうすればいいのでしょうか?」
687 :第三帝国:2012/08/07(火) 22:48:22
「とまあ、『面白そうなネタを手に入れてきた!』とこちらに連絡してきたわけだ」
「はいはい、解散解散」
「リア充乙」
「けっ、これが彼女持ちって奴か」
「ちょ、おまえら!!」
夢幻会の面々はランサー(青いタイツの方の)の姿をした南雲の話を聞いて即座に帰り支度を始めた。
この場に【殿下との仲を2828見守る会】のメンバーがいればノリノリで協力していたが生憎仕事の都合上いない上に。
協力することは不可能で、ここにいるのは殆ど、【ジントしっと団】である。
「えー、唯でさえ無自覚ツンデレ劇場を繰り広げているのに何が悲しくてその仲を進めなければならないのだか」
「名前を呼び合うのは当然だが、彼女の家に泊まり込み、彼女のペットをもらう、
お互いの希望で仕事場が一緒、一緒に休暇を取って彼氏の養父に嫁宣言。ほっといた所で仲は進展するって」
「俺の部下のイェステーシュが『仕事の話をしていたら目の前でいちゃいちゃしだした、死にたい』と言っていたぞ」
「知ってるか・・・あれで今の今までキスの一つすらしてないんだぜ」
「なにそれ、怖い」
「いや、ヘルメット同士をぶつけたのがあるだろ」
「それはおかしい」
「貴様ら・・・」
南雲を余所に好き勝手に言い合う夢幻会の面々に青筋を立てる。
流石は、マスターとコミュケ障なランサー又は幸運E。自分の話を人は聞いてくれないようである。
「やれやれ、いい加減人の話ぐらい真面目に聞いたらどうですか?」
ギロリ、とキャスターこと辻政子が馬鹿騒ぎをしている面々を睨みつける。
姿こそ黒レンがモデルだが、その視線は正に銀河を震えさせる金の魔女に相応しく、幾人かが反射的に息子を押さえるほど迫力があった。
もっとも、ドM信者兼ロリコン野郎の共の『ぅゎょぅι゛ょっょぃ連盟』のメンバーは賢者のごとく静まり、
しばらくすると『ふぅ・・・』と息を吐き、実にいい笑顔を浮かべた。このロリコンどもめ。
(なお、仕事の都合上嶋田は今日この場にいないため、良識的ストッパーは存在していない。)
「【原作】を思い出して見てください。彼らがこうしてデートをしたことがありますか?」
「・・・そういえば、なかったような」
「よく一緒にいたが、殆ど監禁されたり拉致されたり、軟禁されたりがメインだったな」
「まさか、これが初めてのデートだと!!」
どよめきが広がる。
「今さら思い出しましたか。
そうです、色々段階を飛ばしているがこれが彼らにとって初めてのデートとなります。
そんな彼らに嫉妬するよりも、紳士としてこれを応援すべきではないでしょうか?」
辺りは静まり今一度、一同は紳士としての心構えを思い出す。
初な2人を静かにそして遠くからニヤニヤ見守る、そんな当たり前の行為を。
「それだけじゃありません、
未完のままついにあの世界から去ってしまった我らは見たかったはずです。
2人がこうして穏やかな日々を過ごすことを。そして、もっと知りたかったはずです、2人の行く末を。」
小説版しか見てない人、アニメだけの人、漫画のみ、あるいは複数のメディアで見た人と、
【原作】の知り方はバラバラであったが、この場にいる全員は【完結した原作】を見ることもなく死んでしまった者たちだ。
そしてもはや、【原作】の内容が2度の転生とア―ヴとして長い月日を生きたため、
虫食いを受けたノートのごとく穴だらけであったが、徐々に修復され、記された内容を思い出す。
「3年後、共にいることを選んだこと」
「共に戦い、絆を再確認したこと」
「収容惑星で縮まる2人の関係」
「家族の食卓で主人公が選んだ道」
ある話しには笑い、ある話には手に汗を握り、またある話にはその選択に泣き。
自分たちは彼らが繰り広げる物語に夢中になり、彼らの幸福を祈った。
そして、色々と状況は違うが。
今まさに彼らの幸福が実現されようとしている――――。
「どうやら、皆さんも私と同じ考えのようですね」
全員の視線が辻に集中する。
視線には尊敬と崇拝が混じったものであり。
彼女の次の言葉を待ち望む。
688 :第三帝国:2012/08/07(火) 22:50:01
「二たび肉体は滅び、その魂は二度世界を超えた紳士たち。
過去と未来の時空を超えて、なお、我らと志を等しく共有する永遠の同志たちよ」
ここにいる人間は転生という非科学的現象に巻き込まれた同胞だけでなく、至高の萌えを追求した同志たちでもある。
ロリコンがいた。絶対領域信者がいた。ツインテール萌えがいた。お嬢様学校をより多く作る事を望んだ人物がいた。
そこに集う人物の数だけ趣味思考は違ったが、誰もが掛け値なしの紳士であった。
「紳士とはッ――――誰よりも鮮烈に生き、人々の幸福を願う存在!」
「「「「然り!然り!然り!」」」」
立ち上がった辻が声高らかに謳い上げる。
それに答えて居並ぶ紳士たちが「然り」と答える。
「全てのオタクの羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、紳士。ゆえに――――」
今いるメンバーの中で最も背が低い幼女の姿であったが、圧倒的な自信と誇りを込めて宣言した。
「紳士は孤高であらず。ならば我ら紳士たちは殿下を応援し、遠くから見守ろうではありませんか!!!」
「「「「然り!然り!然りぃいいいい!!!」」」」
かくして、初な彼らを応援する『ドキドキデート大作戦』が開幕した。
だが、この後話を聞き付けた【殿下との仲を2828見守る会】【真ヒロインprpr隊】が参加しただけで留まらず。
挙句『若鳥の行く末を見守るのだ(キリッ)』と言い上皇会議のメンバーが参加したりとデートが始まる前からカオスな状態へと突入した。
「で、何処でデートする予定で?」
「・・・殿下の強い熱意で秋葉原か乙女ロードのどちらかになるらしい」
「え゛?」
「殿下の趣味を考えてください、一応家同士の付き合いがあるから現在進行形で助言していますが・・・」
「・・・ジントまじ、ガンバレ」
最終更新:2012年08月19日 18:37