813 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/13(月) 22:05:43
AT-AT。全地形用装甲歩行兵器。
宇宙における銀河帝国の恐怖の象徴がスター・デストロイヤーならば、地上におけるそれはAT-ATだった。
しかし、AT-ATとて無敵の存在だった訳ではない。
ホスの戦いでは、その長い四本足をワイヤーで絡め取るという単純な戦法で破壊され、
この兵器も『凄い防御力、凄い攻撃力、酷い機動力』という帝国軍大型兵器のジンクスに縛られている事を顕にしたのだ。
しかし…
Utsu Wars Episord 2.5
~前世の残滓~
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
「これは凄い…これが地上軍用の新兵器ですか!」
宇宙要塞デス・スター内部の広大な兵器格納庫で、マクシミリアン・ヴィアーズは感動に震えていた。
彼の目の前にあるそれは、ある時は凄まじい速度で突進したかと思えば速度を落とさず瞬時に180°旋回、前進を続け、
100メートルを跳躍したかと思えば今度は格納庫の壁に垂直にへばりついて壁が地面であるかのように動いていた。
この新兵器はエアースピーダーのような機動力のある航空機を主敵として開発されたもので、
メイン武装は4連装の対空ブラスターというごくシンプルなものだった。しかしこの兵器の真価はそれだけでなく、
100km/hに達する最高速度、塹壕や段差を飛び越える跳躍力、壁や天井も移動できるエイリアンばりの汎用性だった。
有能な地上軍指揮官であるヴィアーズはこれらの特徴を見せられて、これは地上戦の戦術を根本から変えるなと確信していた。
そしてこれの開発を推し進めた上官であるターキンの評価を新たにし、彼なら安心して仕えられると思ってターキンの顔を見た。
しかし、心なしか彼の顔はげんなりしているようにも見えた。
「閣下、どこかお加減でも?」
814 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/13(月) 22:06:31
「いや…なんでもない。それより君はこれを見てどう思うかね?役立つと思うか?」
ターキンはヴィアーズに声を掛けられると、すぐさは表情を正して尋ねる。
「はい。この兵器――AT-AAT――、役立つどころの話では無いと思います。
あくまで私見ですが、これを対空用としてだけ運用するのは余りにも勿体ありません。
勿論このままでも、AT-ATのような重兵器の死角のカバーには大いに効果を発揮するでしょうが、
この兵器の真価はこの機動性、そして何より偏向シールドによる高い防御力と、
歩行、そしてリパルサーリフトという二種類の行動手段を備えた事による冗長性にあると思います。」
ヴィアーズはターキンの質問に対して、まるで立て板に水の如く見解を述べた。
「……良く分かった。ついでに石頭連中が君の事を疎んじる理由も分かったよ。
やはり私の目に間違いは無かったな。君は優秀な戦術家だ。AT-AATの初期ロットは、
全て君の指揮下に置こう。実際に運用して、問題点など洗い出してもらいたい……では私はこれで失礼する。」
「はっ!光栄であります!」
格納庫を後にするターキンに、ヴィアーズが敬礼する。
しかしやはり、ヴィアーズの目には、ターキンの背中がどこか煤けているように見えてならなかった。
だがその理由までは、いかに有能な戦術家であるマクシミリアン・ヴィアーズにも分からなかった。
815 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/13(月) 22:07:12
ヴィアーズは知らなかったが、このAT-AATという兵器はヴィアーズが予想するまでも無く、
元からAT-ATの『接近戦に弱い』という弱点を知っていた"
夢幻会"がそれを補うために開発させたものだった。
その開発は非憑依者が中心でなされたのだが、その姿は皮肉にも多くの憑依者が知っていた┌(┌^o^)┐に酷似していたのだ。
憑依者は言わば、故郷…いや"前世"、"前々世"の文物を永遠に失った漂流者である。
そして、彼らの憑依先の多くは、それを取り戻そうとする動きを許さない環境・状況下にあった。
そんな中、期せずして"前々世"の残滓を目にした事、そしてそれがよりにもよって┌(┌^o^)┐であった事が、
冷静沈着で知られるターキンに憑依した魂でさえも激しく揺り動かしていたのである。
ターキンと鉄の絆で結ばれていたカシオ・タッグ、アントニオ・モッティも、
この新兵器を見た時は「何の冗談だ、これは!?」と心の中で叫んでいた。
そしてヴェイダー卿までもが、フォースの慟哭を感じ取っていたのだ(原因までは掴めなかった)。
さらに皮肉な事には、ヴィアーズがAT-AATの兵員輸送型、火力支援型の開発を希望してきた事を皮切りに、
ヴィアーズ以外の指揮官にもAT-AATの評判が急速に広がり出し、製造企業であるクワット・ドライブ・ヤード社までが、
この兵器に注目が集まっている事を知ると自社の主力商品としてプッシュし始めたのだ。
KDY社はAT-AATから偏向シールドや武装、壁貼り付き能力をオミットし、
最高速度などのスペックを抑えた廉価版を独自に開発すると『ランド・トランスポーター』として売り出した。
これも大当たりし、ケッセルのような流刑地、そして帝国の敵である反乱軍でも使用される事になる。
これが一部の憑依者には、前々世で対立する2陣営に使われたDC-3を彷彿とさせていた。
軍事用から民間用まで発展し、銀河のヒット商品となったAT-AATと一連の
シリーズ。
何も知らない者達はこれを奇抜ながらも使い勝手の良いメカとして好意的に見ていたが、
憑依者達はこれを見る度に彼らが後にした世界の事を思いナーバスになるのだった……
~to be continued~
816 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/13(月) 22:08:14
★★★おまけ:登場メカニック解説★★★
★AT-AAT(All Terrain Anti Air Transport=全地形用対空歩行兵器)
4連装対空ブラスター砲塔を搭載した4足歩行兵器。10名程度の兵員も輸送可能。
AT-ATやAT-STに比べ全高が非常に低いが、その分安定性を確保している。
また、予備の移動手段としてリパルサーリフトも搭載して冗長性を持たせてもいる。
防御面では偏向シールドを搭載、航空攻撃に対して高い抵抗力がある。
見た目はちょうど⇒┌(┌^o^)┐のような感じで、ゴ○ブリのようにシャカシャカと動き回る。
平地での最高速度は100km/hに達し、その気になれば百数十メートルの跳躍も可能。
さらには足の裏に鉤爪と電磁石を備えており垂直に近い壁面さえ第二の床となるのだ。見た目の不気味さと相まって、
これが高速で迫ってくるのを見た兵士はよほど精神を鍛えていないかぎり恐怖で我を失うだろう。
その機動性の代償として、駆動系の磨耗はATシリーズの中でも最も激しく、
また製造コストの多くを機内の安定を保つための高性能サスペンションに割かねばならなかった。
それでもグランドモフ・ターキンはこの兵器にAT-ATの近接防御という重要な役割を見出し、
AT-AATの量産を推し進めたのである。
結果的にAT-AATは大成功を収め、またその高速とシールドを活かした兵員輸送車、
対空ブラスターの代わりにターボレーザーを搭載した火力支援車両などの派生型も多く生産された。
そして主な護衛対象であったAT-ATをも凌ぐ大ヒット兵器となる。
★KDY ランド・トランスポーター
AT-AATの製造を請け負っていたクワット・ドライブ・ヤード(KDY)社が、
AT-AATの持つ素養に気付き民生用としてこれを再設計したもの。
主な変更点は武装、シールド発生器、壁貼り付き能力のオミットと、
最高速、装甲厚、旋回能力を始めとする各種能力の低下である。
リパルサーリフトしかないランドスピーダーと違って、
足があったために安定性に優れ、軍用より薄いとはいえ装甲の施されたランド・トランスポーターは、
銀河中の顧客にその奇異な姿が与える抵抗よりも多くの好印象をもたらし、特に環境の厳しい惑星で引く手数多だった。
反乱同盟軍も裏ルートを中心にこれを入手し、追加装甲と武装を施して装甲車のように運用。
またT-47エアスピーダーのように環境対応型を作り、スノー・ウォーカー、サンド・ウォーカーなどと名づけた。
これがAT-AATの事実上の親戚である事を考えると、敵味方両軍で使われた数少ない車両であると言える。
反乱軍によって運用された改造ランド・トランスポーターの中には、
本来なら宇宙船に搭載されるような(地上兵器にとっては)大型のターボ・レーザー砲を搭載したものもあり、
このタイプは一部の帝国軍将官によって『エレファント』という渾名を付けられたという。
最終更新:2012年08月19日 19:15