852 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/14(火) 20:39:45
――――犯人を捜す時は、まず事件が起きて一番得をする奴から疑え
――――推理の定石
Utsu Wars Episord Ⅲ
~反乱軍の始動~
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
原作における『ヤヴィンの戦い』の3年前(BBY3)、原作より2年も早く共和国再興同盟、俗に言う反乱同盟軍が産声を上げていた。
同盟創立時の中心人物はモン・モスマ元老院議員、ジャン・ドドンナ将軍を始めとする、ほぼ原作通りのメンバーである。
彼らを原作よりも早い邂逅へと導いたのは、なんと銀河裏社会の首領、無く子も黙るジャバ・ザ・ハットであった。
ジャバは銀河に散らばる不満分子に対して、それとなく同志の存在の情報を流して彼らが一箇所に集まるよう仕向けたのである。
同じ志を持つ者達が集まれば、しかもそこにカリスマあふれるリーダーがいればどうなるか。それは火を見るより明らかだった。
反乱同盟軍は全銀河に向けて銀河帝国の悪行とそれに対する抵抗、銀河皇帝パルパティーンの打倒を訴える。
この檄文を受けて様々な勢力がこれに合流したが、その中でも同盟にとって最大の収穫はモン・カラマリの参入であった。
奴隷の身分から解放されたギアル・アクバーは、モン・モスマと共に粘り強くカラマリを説得し、これを味方に付けた。
カラマリアンは2人の強い熱意に動かされ、MC80スター・クルーザーをも提供したのである。
しかしエイリアン蔑視の風潮が強かった銀河帝国内において、これがどんな意味を持つ事か知る者は、
アウター・リムに本拠地を置く"デス・スター組"を除いてはごく僅かしかいなかった……
853 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/14(火) 20:40:20
アウター・リム、辺境の惑星タトゥイーン。
《この度、同志達が合流するきっかけを作って下さった事には深く感謝しております。
つきましてはこれからも、情報面や物資面において様々な融通をお願いしたいのですが……》
<ええ、勿論貴方達は私の大事な大事な"お客様"ですからねえ……そうですね、
ある程度"配慮"はさせて頂きましょうか。ただし、私どもも危険を侵している事に違いは無い。
その辺りのリスクを考えれば、"対価"はこの位が妥当だと思いますが?>
秘密の通信チャンネルで、ホログラムを通して2人が会話をしていた。
ホログラムに映し出されているのは反乱同盟軍のジャン・ドドンナ将軍だ。
そして、まるで相手をからかうような口調で話しているのは、誰あろうジャバ・ザ・ハットだった。
ドドンナは同盟軍の情報、物資について、彼の率いるやくざ者のグループを通して確保する事を考えていた。
悪評が山盛りのハット族を頼るなど常識的には狂気の沙汰だったが、他に有力な支援者が見当たらなかった事、
またジャバが同盟軍主要メンバーを引き合わせ、しかもその会合の情報を帝国にリークしなかった事で、
ジャバは他のハット族――すなわち悪人――とは異質な存在であり信頼にも足るだろうと考えたのだ。
《それは十分承知していますが……しかしですね、せめて中古のGR-75中型輸送船だけでももう少し安くなりませんか?
相場価格の1.58倍というのは流石に支払う余裕が無いのですよ。他にも用意しなくてはならない物品は沢山ありまして……》
<以前"極秘ルート"でTIEファイター、それも3機、しかも1機たったの20,000クレジットで融通した事をお忘れですか?
どこかでお得な買い物をしたら、どこかで揺り戻しが来るものですよ。そうそう、支払いはグリッタースティムでも構いません>
だが、ジャバ・ザ・ハットは確かに他のハット族に比べれば誠実だったが、しかしジャバは冷徹極まりない、しかも有能な商人だった。
結局今回の商談――宇宙船からブラスターまで様々な品物の取引――は一部しかまとまらず、残りは次の機会へと持ち越しになる。
(まあ次の機会はまたすぐにやって来るでしょう。何、焦る事は無い……
ルーカス神補正が生きていて反乱軍が勝利するなら新共和国への貢献者として他のハットを出し抜けるし、
反乱軍が敗北するにしても、帝国は決して一枚岩では無いし敗北までにその隙間に根を張れば顧客は確保できる。)
ジャバはドドンナとの通信を終えるとフヘヘヘ、と不敵な笑みを浮かべる。
十数年前に起きたジャバの"豹変"は彼の取り巻きを文字通り驚愕させたが、既に新しいジャバに慣れてしまった彼らは、
(ああ、この笑い声だけは前と少しも変わって無いな)と華麗にスルーするのであった。
854 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/14(火) 20:40:57
同じくアウター・リム、恐怖の宇宙要塞デス・スター。
「結局使い物になりそうなのは3分の1程度だ………俺を満足させたのは10人もいないがね。
だが、久々に面白い仕事をさせてもらった」
濃い緑色の装甲服に身を包んだ男が、カシオ・タッグ将軍にデータパッドを手渡す。
そこにはデス・スターとその艦隊に所属するストーム・トルーパー、その名簿が映し出されていた。
名前と所属部隊の横には"A"から"G"のアルファベット、ないし"五体不満足"、"死亡"などという物騒な文字がある。
「………確かに確認した。では、報酬を持ってこさせよう」
タッグ将軍が部下に命じ、カートで大量のクレジット紙幣を停泊している宇宙船に運び込ませる。
男はその途中でカートを止め、その金額を自分の手で確認すると、後は何も言わずに宇宙船に乗り込んだ。
宇宙船――スレーヴⅠと呼ばれている――がデス・スターを後にすると、タッグは深いため息をついた。
(やれやれ、場所と教官を考えれば、死人がこれだけで済んで良かったと見るべきなのか……
まぁ"前世"であれだけの事をしてて何を今更、って言われるかもしれないが)
BBY4からBBY3までの一年間、デス・スターに配備された兵力の一部は、
ホス星系の第6惑星において銀河随一の賞金稼ぎボバ・フェットによる厳しい訓練を受けていた。
酷寒の星として知られ、原作においては反乱同盟軍の基地もあったこの惑星でのトレーニングは、
死者が出る事でさえ珍しく無い程の過酷極まりないものであったが、キャンプにおいてトルーパーの肉体、
そして精神は極限まで鍛えられ、また銃火器の取り扱いについても熟達していた。
ここでの訓練を見事に耐え抜いた者達は皆腰や首からワンパの毛皮や角を誇らしげに提げており、
そのため他の兵士からは敬意を込めて『モンスター・ハンター』と呼ばれるようになった。
855 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/14(火) 20:41:37
「ホスに用意した設備も併せると、およそ100万クレジットもの大金をつぎ込んだが……その甲斐はあったな。
ボバの評価基準からすれば、"B"ランク以上のトルーパーは往年の501大隊と同等の戦闘能力があるだろう」
特別会議室でタッグ将軍からの報告を受け取ったターキンは満足そうだった。
彼は"前世"の頃からストーム・トルーパーの能力に不満を持っていたのだ。
補正や環境もあるのだろうが、ターキンは主役勢の引き立て役に甘んじないだけの力をトルーパーに求めていた。
それに彼らは来るべき戦い――敵が誰かは分からないが――の主力となる。主力育成に手を抜く訳にはいかない。
報告に目を通したターキンは、タッグに反乱軍の動向を尋ねた。
「反乱軍は今のところ、各セクターで秘密基地の建設に適した惑星を物色して回っています。
まだ組織だった軍事行動には至っていませんが、いずれここにも何らかのアクションを起こすかと」
「設計図が盗まれるなどの実害が出ない分には過度の干渉はしなくてもいい。
彼らが色々と動き回ってくれれば、パルパティーンの注目は嫌でもそちらへ移るから我々への嫌疑も薄れる。
何しろモン・モスマは皇帝の自尊心を大きく傷つけた。本人にしてみれば八つ裂きにしたい気分だろうな」
「しかし、これだけの超兵器がありながら反乱軍への攻撃が手緩かったら逆に皇帝の機嫌を損ねるのでは?
どこぞのガマ星雲から派遣されてきた蛙の小隊じゃないんですから……無能判定=粛清は銀河帝国軍の第一公式ですよ。
それに、反乱軍が動き出した事で帝国軍内の動揺を防ぐための締め付けが起きる可能性も排除できません」
ターキンの発言に、脇にいたモッティ提督が異論を挟む。
実際ジャバが反乱同盟軍の原作より早い結成を手引きしたのは、
シス卿の注意をそちらに集める事で"
夢幻会"が存在を勘ぐられるのを防ぐための策だった。
反乱軍の指導者モン・モスマが発した皇帝を痛烈に批判するメッセージは彼の怒りをカートン単位で買い、
パルパティーンはすぐさま反乱軍の討伐令を全銀河のモフ達へ向けて発したのである。
856 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/14(火) 20:42:33
「心配は無用だ。少なくともこれまでの兵器開発やデス・スターに関する提言によって、
我々の派閥は変わっていると思われこそすれ無能だと思う者はどこにもいない。
あのダース・ヴェイダーさえ夢幻会の肝煎りであるミスティック・ドリーム級を高く評価しているのだからな。
それにデス・スターと艦隊、その兵士はこれまでの訓練によって最高水準の作戦遂行能力を確保している。
"その時"が来るまで我々も表向きは皇帝の"駒"だし、皇帝とて有用な駒をみすみす切り捨てる真似はするまい」
「そうですか……しかしどこかで、そう"前世"のように、しっぺ返しを喰らわないと良いのですが」
「モッティ提督、心配はいりません。貴方の配下が確保してくれたイサラミリ、
そしてモー研究所脅威のメカニズムで"デス・スター軍"の対フォース能力は着実に高まっています。いずれは完璧になるでしょう。
ダース・ヴェイダーやパルパティーン皇帝がデス・スターに来ようとしないのもその証明ですよ」
"前世"での経験から油断はできないという主張を崩さないモッティに対し、
カシオ・タッグがターキン側に付いて反論する。そんな中、会議室へ1人の士官が報告を持ってきた。
「閣下、探査ドロイドより重要な報告が入りました。忌々しい反乱軍が少なくとも3つの惑星において、
中型宇宙船の発着場や宇宙戦闘機のハンガーを建設中との事です。詳しくはこれを」
士官が渡したデータ・パッドには、ダントゥイーン以下アウター・リムにある3つの惑星で、
反乱軍の秘密基地の建設が進みつつあるという明らかな証拠が示されていた。探査ドロイドのお手柄である。
「……"やる"気ですか?」
そうそうたるメンバーを前にして、士官がそそくさと会議室を後にしたのを確認すると、タッグがターキンに訪ねる。
しかし、ターキンはデータ・パッドを手にしたまま、口を硬くへの字に曲げ、沈黙を続けていた………
~to be continued~
最終更新:2012年08月19日 19:20