933 :第三帝国:2012/08/17(金) 22:58:04
外伝~「殿下と真ヒロインの過ごし方~爆せリア充、
夢幻会の暗躍Ⅱ」
―――宇宙暦803年 宙京
首都宙京は恒星『天照』を中心に無数の大型宇宙船にコロニー、
人工惑星が漂い、かつての東京を模した24区画に分れて構成されている。
惑星に居住拠点を置かなかった理由は種族として地に足をついていた者から宇宙空間種族へと対応したため、重力井戸に囚われる事を嫌ったためである。
だが、それでも地表にいたころの名残は残っている。
地下鉄がさながらダンジョンのごとく入り組んだ新宿は地下鉄代わりの連絡便の駅が入り組んでおり。
秋葉原は人々の姿形が変わろうとも今も昔もオタクの一大聖地であり、港区には年に2回聖戦が行われる。
そしてそんな中ジントは、かつての東京駅を模した赤レンガ造りの宙京駅で落ち着かないように辺りを見渡していた。
魔界ダンジョン新宿とまでは言わないが十分入り組んでおり、普段あまり利用しないジントは簡単に迷ってしまい、待ち合わせの時間から10分ほどずれてしまった。
それにしても、休日にも関わらず人が込み合っている光景を見ると、
ついこの間、ここから眼と鼻の先に存在するお台場要塞群が砲火を開かざるを得ないほど追いつめられたとはとても思えない。
この間連絡を取ったクー・ドゥリンが公共サービスの低下を嘆いていたのとは真逆に、この国が繁栄を謳歌しつつあることをジントは実感した。
「ジ、ジントか。ちょうどよかったな。たまたま私も遅れてしまったからな」
そこまで考えていた時、
後ろから狙ったかのようにわざとらしい声にジントは我に返り。振り返った。
「ど、どうだ?姉宮様と辻姉さまの助言でいつもとは違う物を着て見たのだが」
「ラフィール・・・」
普段の凛々しい佇まいとは逆に顔を赤らめ、モジモジとするラフィール。
その姿にジントは一瞬息が止まり、何この可愛い生き物は?これがニッポンの【萌え】なのか!!?
などと大分汚染された思考が動いたが、見慣れた白地に金ボタンの軍服でないことに気づき彼女の衣装に注目する。
肩の部分が大きく開いた茶色の長袖シャツの上からフリルが付いた服を重ねていた。
髪はいつものようにストレートに垂らしていたが、普段ジントが見かける彼女の私服では、
長衣を除けば、白地に紋章の蜂を入れた和服か白のブラウスに首元には青いリボンをきっちり締め、
青いロングスカートに黒タイツ着用等と、隙のない衣装であったが、今日は大胆にミニスカートを着用し普段見ることが敵わない生足が外気に曝されている。
ラフィールはやはり慣れていないせいか、先ほどからスカートを何度も手にしている。
さらに、サンダルを履いているせいか足全体の露出度が高く、ジントは普段とのギャップからいやようなく意識してしまった。
(なお、映像的にラフィールの現在の衣装を説明すると中の人繋がりでホロウにおけるセイバーデート姿と言ったら分りやすいだろう)
「そなた・・・私をいやらしい眼で見ているな」
視線を感じたラフィールはミニスカートを恥ずかしそうに押さえつつ呟いた。
「そ、そんなことないよラフィール。
何時もより綺麗だから驚いただけさ、すごく似合ってるよ僕の可愛い殿下」
「馬鹿」
ジントの言葉にラフィール顔を横にそむけたが良く見るとまんざらでないようで、少々にやけていた。
もっとも、実の所言った本人自身もにやけており、2人して初で甘酸っぱい空間を作っていた。
そしてジントはラフィールに『でーと』について事細かく説明し、
最終的に腐り神とオタクの聖地、乙女ロードや秋葉原でなく宙京名所巡りへと変更させ、
数々のアドバイスにセッティングをしてくれた辻と言う名の少女(見た目)に感謝した。
だがまさか、そんないちゃいちゃ空間を監視している集団がいるなどこの時は気づいていなかった。
935 :第三帝国:2012/08/17(金) 22:59:10
「おのれ・・・おのれえええええええ!!!」
「あの、父上・・・もう少し静かにしたらどうでしょうか?」
夢幻会主導『ドキドキデート大作戦』の為に用意されたコンテナトラックに偽装した通信車で、
2人の会話を盗聴し盗撮していた彼女側の父親が娘が男に取られた事実に血涙を流し、それを息子が諫めていた。
「はあ、見たくないのなら帰ればいいと思いますがアブリアル親王殿下」
「否、あの小僧が間違いを起こさないように監視する義務があの子の親としてある!」
辻の突っこみに対して即座に否定し悔しさに顔を歪ませる父親に、『何とかしてください』と言いたげな息子。
とりあえず息子の意見に対しては華麗にスルーし、アブリアルは泣かないじゃないのかな等と内心で考えた。
「やれやれ、まったく優雅でない。これでも私の血縁者兼子孫かね?」
「そうでしょうか?結構貴方に似ていると思いますけどね、
ロンドン公。いえ、我々の間ではチャーチル卿といったほうがいいかもしれませんね。」
「たしかに、戦争好きなのは間違いなくマールバラの血の影響だろうな。
・・・しかし、まさか私がSF小説の世界へと転生しこのような茶番に参加するとは思わなかったよ」
第二次世界大戦における悲劇の宰相こと、ウィンストン・チャーチル。
否、現在はグレート・ロンドン公爵にして『円卓』をこの世に蘇らせた『彼女』は辻の言葉にニヤリと笑った。
「その割にはそちらの女王陛下と円卓の面々でノリノリじゃありませんか」
疲れ気味に辻は黒ぶち眼鏡を拭きこの場にはいないが、
別の通信車か中継で見ている高貴で暇な連中を思い出しつつロンドン公にあきれた目を向けた。
「ふむ、そちらからは月詠宮内新王殿下に上皇会議からは引退した先代のエンペラー、さらに双頭の鷲の末裔がこの茶番劇に参加しているではないか?」
「む・・・・・」
事実なので反論できないのが痛い。
高貴で暇な連中は何も英国だけででなく万国共通らしく引退した皇族に各国の王族で構成される上皇会議から、
くじで引退した先代が参加し(誰が見に行くか相当もめてくじで決めることになった)
姉宮様こと元大帝とロマノフの末裔は妹分の恋の行方に高い関心を示しており3人とも別の通信車に乗っている。
そしてその他やたらと地位と権威がある方々が集まったせいで、阿部を代表する官僚系夢幻会のメンバーは調整に追われ。
今日この日まで連日連夜の会議と電子媒体の書類に埋もれ、嶋田の苦労を実体験する羽目に陥った。
「野暮ですが、どうやら2人が動き出したようです。
あ、人ごみで離れないように手を繋ぎました。しかも恋人繋ぎです。ギギギギギ・・・これがリア充って奴か・・・・・・」
夢幻会のメンバーで今日の通信担当兼【ジントしっと団】の牟田口が歯ぎしながら報告する。
他の通信車や中継している面々から早くも恋人らしい行動に黄色い歓声が上がり、盛り上がりを見せていた。
「ふむ、茶番劇が始まったようだな」
ロンドン公がやれやれ、と言いたげに椅子に座ると存在感を消していた執事が脇から現れ、
さりげなく甘味(と○や屋のどら焼き)を用意しティーカップに玉露を注ぐと、彼女はどら焼きを一口ほおばり続けて実に優雅な動作で玉露の味を楽しんだ。
「まったく、この私だって忙しいのに」
「それにしてのこの元宰相、実にノリノリである」
結論、どいつもこいつも高貴で暇な連中しかいなかった。
最終更新:2012年08月19日 19:38