146 :①:2012/08/31(金) 23:20:56
一発ネタの①です。
またしょうもない駄文を書いてしまったので、よかったら読んでやってくらはい。

提督たちの憂鬱 ネタSS ~鉄路の思いは銀河の果てへ~

1

(何で俺がこんなところにおらにゃならんのだ!)

日本国有鉄道技術部課長、島秀雄は来賓席でいらだっていた。
ここは東京市城東区砂町にある汽車製造会社東京支店。
その工場の一角で新しい車両の落成式が行われていたのである。
彼はその車両の主任設計者だった。
彼はそのことに腹を立てていた。

彼は命じられるまで忙しい身であった。
国鉄は戦争が終わった後、次々と計画を発表、動き出していた。
まずは動力近代化―国鉄の主要幹線を電化、非電化区間もディーゼル化して輸送力増強と
無煙化を進める計画。車両の近代化・軽量化し、主要高速列車は電車・ディーゼル車に置き換えする。
そして東京と下関を結ぶ弾丸列車―新幹線計画である。

それらの計画を島が中心となり国鉄が発足する前の運輸省で連日連夜議論されている最中だった。
日夜その実現に頭がとろけそうなほど秀雄はがんばっていた。

ところがある日、秀雄は初代国鉄総裁に予定されている人物に呼ばれ、こう言われたのである。

「島くん、この車両の設計してくれないか?」

「なんでしょう…」

秀雄は計画書を受け取ったあと一読すると、椅子から転げ落ちそうになった。

「そ、そ、総裁!な、なんで、今頃こんな車両を!?」

「そりゃあんた、戦争がもうすぐ終わるんで貨物用の機関車が一杯余るからだよ」

「あの機関車は戦争の間持てば良いという機関車だったはずです!それに動力近代化計画は動き出しています!何で今更こんなものを!」

「そりゃあんた、男のロマン…、いや少年の夢かな?」

「そんなくだらないことのためにこの機関車を作るんですか!?私は反対です!」

「まあまあ、そういわずに…」

 よくよく考えればこの総裁、動力近代化には反対しなかったが、運輸省若手時代から客車列車に変に固執する奴だった。
高速列車計画に客車列車も考慮するようにねじ込んできたのはこいつだった。

 島はこの計画に対し頭から湯気を出して反対した。
 が、総裁も譲らない。

「君が作らないって言うなら、新幹線計画から外れてもらおうかなぁ~?」

理不尽にも人事権をちらつかせた総裁に、秀雄は折れた。


それでも納得できない為、最後は運輸大臣のところまで直談判に行ったが、

「うーん、別にいいんじゃない?機関車の一台や二台。少年の夢は大切だし…」

と、大臣室に飾られたマネキン人形の、新しい航空会社の女性用制服の吟味に忙しかった運輸大臣は
聞く耳を持ってくれなかった。

(こいつら、つるんでやがる…)

147 :①:2012/08/31(金) 23:21:27
2
諦めた島は設計室に帰ると課員を集めて、新幹線車両設計の一時中止と新型機関車の設計を命じた。
指令を下しながら島は思った

(くそ!この機関車に俺たちの、いや、今まで日本が培って来た技術の全てをつぎ込んでやる!
それでも限界が、いや、電車には勝てないんだと思い知らせてやる!)

秀雄と設計課員は全てをこの機関車にそそぎこんだ、まるで恨みを晴らすように―

―目の前では総裁とこの工場の社長、すなわち島秀雄の父である島安二郎が、一緒にクス玉を割ろうとしていた。

(まあ、オヤジにはいい思い出かも知れん。たぶんこの工場で作る最後の蒸気機関車だからな…)

 明治・大正と日本の蒸気機関車を造り続けた父、島安二郎が送り出すにはふさわしい蒸気機関車を設計できたというのも
ある意味総裁には感謝すべきかも、と秀雄が思った時、クス玉が割れた。

 紙ふぶきが舞う中、工場の扉が開かれる。

 扉が開かれると同時に、ヘッドライトが輝き、汽笛を一声させ轟音のようなドラフト音を響かせて中から機関車が出てきた。

 少し丸みがつけたボイラー、パシフィック配列の2mを越える動輪、そして3シリンダー。

 そのほか数々の新機軸を装備した日本の最後の幹線用蒸気機関車、その最終号機が姿を現したのだ。

 最終の記念なのか、日本の蒸気機関車が身にまとう黒ではなく、軍艦色のような少し青みがかった塗装だった。

「流線型のカバー、つけたかったですね…」

「ああ。だがすぐにこの蒸気機関車はすぐに幹線から追いやられる。まるで平家や蝦夷のように西や北にな…」

島や課員にはわかっていた。たぶん世界の鉄道の中でも牽引力や拘束力で5指にはいるであろうこの機関車には、
もはや先がないのだ。そんな時に流線型のカバーをつけていたのでは生き残れない。C53やC55でわかっていた。
だから高速性を発揮するカバーをつけなかった。総裁もそれは反対はしなかった。

故に、日本の蒸気機関車史の最後を飾るであろうこの機関車は、伝統的な日本の蒸気機関車の姿で生まれてきたのだ。

目の前を轟音をとどろかせてその蒸気機関車は走り抜けていく。

C6250

この機関車の前には鉄路が続いている。しかしその鉄路を長くは走れまい。

そう島が思っていた時、うしろから声が上がった。

「このままアンドロメダまで走れ!」

後ろで総裁が無邪気に叫んでいた。


蛇足

式典は終わった。
島は東京に戻ろうと工場内を歩いていく。
側線に東京行きの客車がまっていた
「あれか、新しい<富士>用の客車は」
「ええ、固定編成客車の概念を試した試作品ですね」
「クロスシートに、特別二等、食堂車に一等寝台に展望車か…」
「風呂までついてるから豪勢なもんですよ。早速総裁が乗ってC6250に引かせて東京に戻るそうです」
「そのおかげで俺たちも戻れるが、しかし趣味が悪い色だな、まるでウ○コのようだ。あの色、総裁が選んだんだろ?」
「それにあの行灯、確か戻る列車の番号は999ですが、赤と黄色って…総裁も趣味が悪いですね、ホント」

参考動画:マイクロエース銀河鉄道999TV版
ttp://nicoviewer.net/sm6083624

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年09月01日 18:48