514 :2号:2012/09/19(水) 13:45:01

193●年某月某日


「では、以上の方針で行動、時機を見て提案すると言う事で」
「「「「異議なし」」」」
「では、会合を終わります」


議長役のような位置にいる男の声に眉をしかめたり、諦めた様なため息をつきながら男達が賛成の意を示す。
ここはどこかの会議室のような一室。
会合が終わって男達が資料を持って部屋から出て行くのを見送り、
ドアが閉まるのを確認してから議長役の男はため息を一つつき・・・嘲笑を浮かべる。


「さて、日本にふさわしくない隣人には、利益をもたらす形でご退場願おうか。頼んだよ、村中さん」




半島問題の最終的解決案




日米戦前から日本国内の複数の雑誌社などが『アジアの国々について』と言う各国特集記事を書くようになった。
その国の歴史、文化、風習を日本国民に周知する事を目的に共同企画されたものである。
どの国も良い面も悪い面もありながら魅力的であり、対比で日本の良さと悪さがわかりやすいと好評な企画である。
しかし、その中でも隣国でありながら大変不評な国が一つある。


大韓帝国

『病身舞』や『トンスル』『補身湯』『水に落ちた犬は棒で叩け』という各朝鮮文化に含まれる意図や意味。
自分の間違いを指摘されても認めようとせず『息を吐くように嘘を吐く』
罵詈雑言のバリエーションが日本語の倍以上あるなど、詳細な説明付きで雑誌に載った。

朝鮮民族の特徴が良くも悪くも正しく伝えられた事により、日本人の間では人気の下がっている国である。
いわく「知れば知るほど嫌いになる」国。


そのただでさえ落ちていた評判は戦中の裏切り行為の画策、
発覚後の醜い責任の擦り付け合いで地に落ち、
「日本が保護する価値があるのか」「保護国の分際でなめたマネしやがって」など過激な論調が蔓延しつつあった。

「本土の防壁として敵対的な勢力に渡さないため併合すべきだ」
「いや併合して奴等の面倒を見てやるなんてごめんだ」
と国民の間でも議論が活発化している時にとある事件が発生する。

515 :2号:2012/09/19(水) 13:45:43


『議員達の反乱』


夢幻会の存在が公の物になった議員達の弾劾である。
議員達のいろいろな思惑はさておき、この弾劾は戦後の夢幻会の政治環境の激変をもたらしていた。

歴史の、日本の陰に隠れていた秘密結社が日のあたる場所に出てきた鮮烈な会見(*1)の結果、
よりよい日本のための提案と言う形で、
政府に夢幻会宛の書類が国内の政治研究会から、それこそ山のように送られてくるようになっていたのだ。

それらは玉石混合であるが、その中には転生者臭のする提案もあり、新たな転生者が見つかる切欠にもなっていた。


194●年某月某日


「信玄会?武田信玄の研究会ですか?」
「違いますよ嶋田さん。幻を信じる会と書いて『信幻会』です」
「『信幻会』・・・ね。近衛さん、その『信幻会』がどうかしたんですか?」
「村中が関わっていた痕跡があるんですよ」
「!?」


会見後、近衛のもとにも多数の提案書や陳情書が送られてきていた。
その中には懇意にしている首相時代、
講演に行った大学の政治サークルからの提案書があったのだ。
その提案書が近衛の日本人が生きていけるだけのテリトリーの確保をしたい、
という願いにかなうため読み進めていたのだが提案者の欄に『信幻会』という名称があった事に首をかしげた。


「政治研究会というだけで『信幻会』なんて名前ではなかった、内容から他の大学と連合しているフシがある、
 名前に引っ掛かったのと学生運動かと気になって阿部さんに調べてもらった結果・・・」
「村中がからんでいたと?」
「内容も夢幻会の方針に絡む情報が前提になっている部分があったからね。たぶん彼から流れたんだろう、ほら」


題名は「半島問題の最終的解決案」というものであり、
謀略による朝鮮人を半島から日本の手を汚さず排除する為の計画書であった。

516 :2号:2012/09/19(水) 13:46:16



それは朝鮮民族の特徴を詳細に並べてなぜ排除しなければならないかを説明する所から始まり、
その排除の過程でいかに帝国に最大限の利益をもたらすかを1ページ漫画やグラフを多用した解説書(*4)である。

その内容はまず半島の権益をソ連と資源とのバーターで売り渡し、ソ連の半島干渉の口実を作る所から始まり、
外交権を返す事と引き換えに4つの島(巨済島、済州島、干山島、鬱陵島)の割譲を要求し、保護国状態を解除。
ソ連に手を出された大韓帝国の面倒を見てやる理由をなくす。
その後大韓帝国が真の独立、と日本国内で盛大に宣伝し在日朝鮮人を自発的に、または不法滞在者として帰還させる。

それだけならまだ可愛いものであるが、後半になるにつれて黒くなっていく。

ソ連とは住民を根こそぎシベリアへ移住させ半島には朝鮮人を一人も住まわせない事を条件に、
理由をつけての大韓帝国併合を容認するという密約を交わす。

そしてソ連の崩壊後、東側の国家承認の代償として朝鮮人の居なくなった半島を貰い受ける、と言う提案である。


「・・・黒すぎだろ、これ素人が考えたのか?近衛さんか辻さんじゃないのか?」
「まあ悪辣なのは認めるよ。
 だがソ連現政権は不凍港獲得という成果をあげて民衆を慰撫し、安い労働力が大量に手に入る。
 日本は厄介な隣人に煩わされる事が無くなり、地震に強く本土に近い工業用地を得られるのは悪くない。
 半島の最狭部あたりに防壁を築けば満州よりも防衛が簡単だからね。
 両者に得がある謀略はいいものだよ?」
「大韓帝国だけ損じゃないですか。まあいいです。それで村中は?」
「外部顧問のように情報を流しながら組織化していたらしいがな。今は接触していないようだ。
『信幻会』というのも彼が名付けたらしい。大方、夢幻会の下部組織にでもしようとしたんじゃないかな?」
「ほんっとにこの能力を別の所に生かしてくれれば・・・」



ちなみに近衛はこの提案を手直しして会合に提出、
敵にしても味方にしても厄介な大韓帝国を隣に置き続けるか、
明確な敵であるソ連を置くほうがマシかで喧々諤々の議論を巻き起こす事になるのだが、それはまた別のお話。



おわり

517 :2号:2012/09/19(水) 13:46:54

あとがき

支援SSに投稿しようかと迷いましたが、IFの話でもありますのでこちらに。
会見の様子の部分はearthさまの外伝とは差異があることをご了承ください。


※1 

夢幻会の説明会として、『会合』構成員による記者会見。
その組織の設立経緯から目的、これまでに組織として行ってきた事、
そして鮮烈と言われるゆえんの日米戦が日本の敗北で終わる可能性が高かった事(*2)、
嶋田が敗戦後、すべての責任を負って処刑される事を自覚、覚悟した上で宰相に就任した事(*3)は、
理想の政治家にして軍人というものを日本国民に魅せつけた。


※2

「第一次大戦直後から日米で戦争になった場合、われわれは日本の敗北で終わると想定していました。
 納得できない?では簡単な講義をしましょう」

嶋田の口から出た日本の敗北を認めるような言葉に外国の記者はともかく、国内の記者からは怒声が上がった。
当時の戦勝気分に浮かれていた日本国民の反発なども予想し、
津波前の外交環境や国力対照表などを用意して論理的に日本の最終的な敗北を説明して国民に衝撃を与えた。


※3

「私は『最悪の独裁者』として、
『平和を乱した罪』とでもでっちあげた罪状で、『A級戦犯』だといわれて裁判にかけられただろう。
 黄色いサルにはお似合いだろう、とね。だが陛下とこの国、臣民のため・・・」

皮肉げな笑みを浮かべて、そう言いはなった後の真摯な表情で帝国への忠誠、
天皇家への忠義の滅私奉公だった事を語った姿は人々の感動を呼び、
敵対国だったドイツの総統ヒトラーにも「あれが主君に殉じるという武士道か」と言わせ賞賛させた。


※4

嶋田はこれを見た瞬間、汚染がここまで、と脱力した。

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最終更新:2012年09月22日 15:49